ちょっとワガママな人の方が、メガネを合わせやすい
ちゃぶ台をひっくり返すみたいに、お店のテーブルをひっくり返したくなることがある。
でも目の前にいるお客さんは、「これで大丈夫です」と言っている。
その「大丈夫です」が本当の意味の「大丈夫です」なのか、僕はそうは思えなくてひっくり返したくなるのだ。
メガネ屋に来るお客さんの中には、思ったことをすぐにハッキリと言う人がいる。
「これ見えにくい!」
「しんどい!」
「フラフラする!」
「難しい!」
「見えるけど、なんか合わない」
こういう人、僕は個人的にめちゃくちゃ対応しやすい。
ワガママなお客だからって必ずしも対応が難しいんじゃなくて、そうやって意見を言ってくれるお客さんの方がいい。
「見えにくい」も「しんどい」も「難しい」も、それなら他の度数を考えることができる。
それはその人にとって正解ではないということだから、「なるほど」と思って違う度数を試す答え合わせができるのだ。
これ、決して具体的に言ってもらわなくてもいい。
「モヤモヤする」
「ワッとする」
「なんか…なんか違う」
「ぐわーーーってくる感じ」
「ビシビシしてると言うか…」
これ、実際に僕がお客さんから言われたセリフである。
「ぐわーーーってくる」と言われても、ぐわーーーって何だ、ぐわーーーって。何かに追いかけられてるのか。そのメガネで何か見えちゃいけないものが見えてるのか。
でもこのくらい抽象的でもいいのだ。何か感じていることを伝えようとするけれど具体的な言葉に変換できないから、「ぐわーーーっ」になるのだろう。
しかしその「ぐわーーーっ」でも言ってもらえたら、「ぐわーーーっ」の正体を一緒に探すことができる。
だから何でもいいから思ったことは言ってもらいたい。
それよりも合わせにくいのは、
「あ、まぁ…大丈夫です」みたいに言う人。
あ、まぁ…大丈夫です。
あ、まぁ…大丈夫です。
あ、まぁ…大丈夫です。
絶対大丈夫じゃないですよね。何か思ってますよね。何か感じてますよね。不満がありますよね。
そのときに言ってもらえたらその場で直せるんで、そのときに言ってもらえませんか。
なんでメガネが出来上がった後に言うんですか。
こんなときに僕はテーブルをひっくり返したくなるのだ。
メガネの度数を合わせていると、目の前の数字や理論で「これが合ってるはず」と一応は自信を持って試してもらっている。
けれど内心では半分くらい、「何か間違っているかもしれない」という疑いも自分に向けている。
計算が違うかもしれない。
何か見落としているかもしれない。
思っている反応じゃないかもしれない。
自分を疑いながらやっているから、
「あ、まぁ…大丈夫です」がものすごくモヤモヤするのだ。
違うなら違うって、言って欲しい。
夜も眠れない。明日のためにも眠るけど。
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路上にチップもらう用のシルクハットを置いてパントマイムするの、実はやってみたかったんです