50年目の七夕3 雪降る中での出会い 高速バス
■エピソード3 雪降る中での出会い 高速バス
東北新幹線の窓から流れる風景をぼんやり見ていた。遠くに見える磐梯山も雪が積もって真っ白だ。
今日の出張はきつい。往復10時間の日帰り出張だ。
行き先は福島県の西会津だ。近いようようで遠い福島の山間の町。東京から東北新幹線と磐越西線を乗り継いで5時間以上かる。今朝6時に家を出て、西会津町の野沢駅に着いたのは11時30分だった。
会津若松駅を過ぎてからは雪が降り続いていたが、野沢駅で降りると雪は止んでいた。
それでも銀世界が広がる。ここは日本でも屈指の豪雪地域だ。
「さて、何処で飯を食うか」
ここでは新橋みたいに選択肢はない。俺は駅前から歩くことにした。目指すは国道沿いの道の駅だ。道は除雪されてはいる。それでも久しぶりの雪道、ブーツは履いているが、滑らないように慎重に歩いた。
道の駅のレストランで、かき揚げラーメンという、醤油ラーメンにかき揚げが乗った不思議なラーメンを食べる。孤独のグルメとはほど遠い味で、油で胸が焼ける。
食後、打ち合わせまで時間があるので、地元の物産を吟味しながら店内を歩いている時だった。
目眩かと思ったら、ガタガタと揺れ出した。地震だ。道の駅全体に緊張が走る。(2011年前)
ここは福島でも山の中だ、大丈夫だろう。色んな思いが頭を巡る。
展示商品が落ちるほどの揺れではないが、体感的にはかなりの揺れが1分ほど続いた。
壁掛けテレビは、ローカル局に切り替わり、緊急速報が流れている。緊張のおももちで話す女子アナ。俺はテレビを見つめた。
(なかなか、可愛い子だ)男はこんな時でも馬鹿だった。
今の所被害も無いようだが、まだ情報が来てないだけの話かもしれない。取りあえず、打ち合わせの時間も迫り、俺は役場に向かった。
打ち合わせは1時間程度で終わったが、役場の方の情報だと雪と地震で磐越西線が止まっているそうだ。それでも高速バスは動いていると教えてもらい。俺はバス停に向かった。
バス停に着くと、3時間に1本しかないバスが丁度来た。
高速バスには地元のお婆さんが3人乗っているだけだった。地元のお婆さん達は途中で降り、俺一人を乗せてバスは高速道路に入った。どんよりと暗い空からはいつの間にか、また雪が降り出していた。
高速道路は雪で真っ白だった。スキーバスに一人で乗っている気分だ。
外の雪を見ているうちに、心地よいバスの揺れの中で、俺は眠ってしまった。
しばらくして目が覚めると、何故かバスは止まっていた。(到着?)ちょっとあたふたしたが、どうも渋滞らしい。もう既に外は真っ暗だった。
「運転手さん、渋滞ですか」俺は運転手に聞いた。
「事故か、故障車だね」
「そうですか」
止まっているバスから俺は何気なく、渋滞する車の列を見ていた。すると2台前の白いセダンの助手席のドアが開くと人が降り立った。
「全く、高速道路で危ないな」運転手が言う。
ジーパンに茶色のブーツと白いダウンコート、フードを被っているその人物は若い女のようだ。その女は小走りでバスに近づいてきた。そしてバスの運転席側のドアを叩いた。運転手はドアを開けた。
「すみません、トイレを使わせてください」と女は言う。人の良さそうな運転手はちょっと考えていたようだが、若い女の頼みだ。
「いいよ、この渋滞だもなぁ」と答えていた。
バスに乗り込んだ女はフードを下げ、白いダウンコートを脱いだ。ジーパンの上は赤いセータだった。そしてその赤いセータの上の顔は見覚えがあった。
相手も俺に気づいたようだ。
「あれ、どうして、何で此処にあなたがいるの?」とヨウコは俺に近づくと何時もの魅力的なアーモンドアイを見開いて言った。
「それは、俺の台詞だよ。お前さぁ、結構若作りだな」その言葉を無視してヨウコは言う。
「ちょっとまってね。積もる話は後で、取りあえずトイレは何処?」
俺は後方を指さした。ヨウコは小走りでトイレに向かった。
「また仕事ねぇ、へーっ」隣に座ったヨウコが言う。
「へーって、なんだよ」
結局、ヨウコがトイレに入っている間に、バスは動きだし、ヨウコは連れに携帯で電話して、このまま会津若松駅までバスに乗り続けることにした。
「寒いとトイレが近くなっちゃうでしょう」と言うことだ。
「そう言えば、大島以来だなぁ、ところで今はどこで仕事しているの」と俺が訊く。
「新潟で冬の渡り鳥を撮るネィチャー系の写真家の手伝い、ちょっと前まで一緒だったけど、今はここ。不思議な縁だよね」
「トイレの神様だな」俺が言うとヨウコは大口を開けてケラケラと笑った。そして唐突に真顔に戻り、顔を近づけてきた。
「それ面白くない」そう言うと俺の胸に顔を寄せてきた。
甘い香りに汗の臭いがほんのり混じっていた。
俺の反応に気づいたのか、顔あげてヨウコは言った。
「ゴメンね、屋外活動続きで、お風呂もシャワーも浴びてないの」
「昨日一晩中取材で、眠いの」そう言うと、魅力的なアーモンドアイを閉じ、そのまま俺の胸に寄りかかって寝てしまった。
前を見るとバスのライトの中で雪が白く舞っていた。
バックミラーに見える運転手の目が笑っていた。
「郡山まであと1時間以上かかります」と運転手は言う。
俺はヨウコを起こす。
「ん」
「少し話していいかい」
頷くヨウコだった。
「あの大島で、途中でいなくなっただろう。どうした」
「あの大型ヨットに乗せて貰ったの、女性がいたでしょう、知り合いだった」
「そんな事だと思った」ヨウコは何時も自由だった。
「それと星が綺麗だったので、我慢出来なかった」
「そうだろうね、もう寝ていいよ」
「うん」
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「今度は夢と冒険の世界が欲しい」
「そうね、では世界一星が瞬く場所へ」
50年目の七夕 番外
