【小説エッセイ】昔書いた小説が見つからない
20代最後の年を、あと数時間で迎える日曜夜。
当然のように予定などない、枯れた女がベッドに横たわっていた。
新卒で入社した会社では、自分でも気付かぬままに、「1人でやれるでしょ感」を出されている。気持ちはまだまだ駆け出しなんだけどな。
しかし時は無常で無情、鏡を覗けば白髪との遭遇率も増え、今まで使っていた化粧品の色合いと顔面との不協和を感じ始めていた。
自分の中身は何も変わっていないのに、外側ばかり変わっていく。社会的立ち位置とか、年齢とか諸々の数字も。
「え、このまま30代突入なんですか?」
思わず大きめの声を出していた。
数年前から薄々気付いていた、このまま1人で死ぬ可能性を。
なんだか私の人生に青春ってあったのかな…
その時思い出した、高校生の時、創作をしていたじゃないか。今ほどSNSも発達してないし、発信なんて思いつきもしなかったあの頃、私は小説を書いていた。結局、受験やらなんやらで完成しなかったあの物語が。
あの時の作品を、完成形にしたい。
それが私の夢描く青春という存在の弔い合戦になるのでないか?と。
部屋を探せば、その時のメモが出てくるはずだ。下手に物を捨てない、昔の私の延長線上にいる今の私なら。
初稿のメモがみつかる、が困った。
それより先まで書き進めた覚えがあるのだが、その途中のメモが見つからない。
どうしよう、昔書いた小説が見つからない。
見つかったとしても、黒歴史かもしれないのに、私は捜索に躍起になっていた。
逃した鯛は大きい、とか言うし。いや逃した魚だったか…?美化しているだけかもしれないが、未練タラタラだ。元カレの誰よりも未練を感じている、気がする。
とにかく、私はあの続きから書きたいんだ。初期設定から、1ページ目から書き直して納得いく導入になるのか?
いや、形式にこだわらず、まずはストーリーを進める方が先か?
いやいや、まずは時系列を決め、大まかストーリーの肉付けからやり直すべきでは?
結局今日も1行も進まない。
ラスト20代の残り時間、あと…
