バスもないでも、見に行きたい....!!!
― チケットなし交通手段なし。それでも私はランタンの光を見に行った ―
ラプンツェルの映画にも出てくる、
無数のランタンが夜空いっぱいに舞うシーン。
あの幻想的な光景が実在するのが、タイ・チェンマイの「コムローイ祭り」。この時期になると航空券は跳ね上がり、バスも電車もすぐ満席。
“たったひとつのお祭り”のために、世界中から人が押し寄せる。
私もその渦の中へ飛び込んだ一人。
■ 今年は“無料会場なし”の特別な年
例年は無料会場があり、チケットがなくてもランタンを購入して空へ放つことができる。
しかし今年は皇族の方の逝去に伴い、規模が大幅に縮小。
無料会場は全面中止。
ランタンをあげたければ、チケット必須。
…もちろん私は持っていない。
それでも「奇跡的に何かあるかも」と思い、
まずは例年の無料会場だった公園へ行ってみた。
結果:ただの公園。
静寂。何もない。
そこから公式会場までは車で40分。
とりあえずバスセンターに行くも、
バスももう出てない。
タクシーも捕まらない。■ 交通手段なし → 交渉でソンテオを捕まえる
「それでも行くしかない」と思った私は、
わらにもすがる気持ちでソンテオ(赤い乗り合いトラック)
を街中で捕まえた。
ソンテオの値段は交渉で決まる。
最初は 2時間会場で待つから7500円 と言われた。
高い…
ここで引き下がったら今日の挑戦は終わる。
私は深呼吸をして、交渉開始。
私「1時間で5000円はどう?」
ソ「いや7000じゃないと、もう帰りたいし」
私「ここで、私たちを乗せなかったら、あなたは帰りに1円もゲットできない。でも私たちを載せたら行きの運賃+3000円ゲットできるじゃん!!」
ソ「いやもう夜遅いし」
私「6000円で手打ち!!」
ソ「わかった、いいよ6000円で」
私「ありがとう兄ちゃん!!!」
そんな押し引きを何度も繰り返し、
ついに「1時間待ち往復6000円で送迎」という条件で成立。
チケットを買うよりは安くなったはず。
この時期ということを考えればこの値段が妥当。
■ 会場に着いたけど、門前払い
会場に着くと、子どもたちが爆竹で遊び、
ろうそくが水に流されていく。お祭りの気配はある。

だが問題がひとつ。
私はチケットを持っていない。
入口には門番が立ち、
「No Enter」と書かれた布がぶら下がっている。

私はそこで、約40分間ただ待った。
周りには同じ“チケットなし組”と思われる人たちがぽつぽつ。
もうここから見るしかないかと
諦めムードが漂いはじめた頃、
突然、門番がその場を離れた。
その瞬間、周囲の人たちが一斉に動き出す。
「今しかない!」
会場に侵入。
■ 広すぎる会場。足元はぬかるみ。
中は想像以上に広大。
雨でぬかるんだ地面の上には、
ランタンの火をつけるためのろうそくが規則正しく並べられている。
湿った空気の匂いと、火のあたたかい光が混ざって、
まるで儀式の会場みたいだった。


■ コムローイ、空へ。

ランタンに火をつけるためにろうそくに火がつけられた。
そしていよいよ、ランタンをあげる時間。
3
2
1合図とともに一斉に火が灯り、
何百、何千というランタンが空へ浮かび上がる。
息を呑むほどきれいだった。
想像の中のランタンは静かだったけれど、
実物は“生きている光”そのもの。
ひとつひとつが、ゆらゆらと自分の意志を持って昇っていく。
空はすぐに金色の粒でいっぱいになり、
視界に広がるすべてが光の川になった。

■ あきらめなかった先に見えた景色
普通なら諦める距離。
普通なら戻る状況。
行く手段なし。
帰る手段もなし。
チケットなし。
それでも自分の足で動いたからこそ、
私はあの光に辿りつけた。
ただ嬉しかった。

■ 帰り道、遠くに見えた小さな光
余韻の中でソンテオの運転手から電話がきた。
「今どこ? もう出口見えた?」
「もうつくよ~~」
拾ってもらい、帰り道を走っていると、
遠くの空に小さな光がぽつぽつ浮かんでいた。
さっき頭上に広がっていた、あのランタンたちだ。
近くで見たあの圧倒的な光も、
遠くから見ると、ほとんど点のように小さい。
でも、その小さな光を自分の目で見られたことが、何よりもうれしかった。
ランタンを自分であげられなくても、
私は十分だった。
満たされていた。
■ 最後に
「無理かも」という条件はいくつもあった。
でもその全部を横に置いて、
行動してみたら
本当に見たい景色にたどり着けた。
あの日のコムローイは一生忘れない。
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