私が残業した一時間半は、この子たちの睡眠時間だった。
「まだ眠い。」その一言が、忘れられない。
昨日は、時短勤務だけど、どうしても対応しなければならない仕事があり、残業した。
一時間半。
たった一時間半。
仕事をしていたらあっという間にすぎてしまった。
でも、その一時間半のしわ寄せは、全部、子どもたちにいった。
保育園へ迎えに行く時間が遅くなる。
閉園ギリギリだった。
家に着くのも遅くなる。
玄関を開けるなり、
「おなかすいたー!」
「ママ、ごはんまだ?」
子どもたちはいつも通りだ。
私は「ごめんね、今すぐ準備するからね。」と言いながら、急いで夕飯を温める。
ようやく食べ終わった頃には、いつもならお風呂に入っている時間だった。
「早くお風呂入ろう。」
「歯磨きするよ。」
「パジャマ着よう。」
「もう寝る時間だよ。」
いつも以上に、「早く」が増える夜。
本当は少し遊びたい。
保育園であったことをゆっくり聞きたい。
絵本も読みたい。
でも、時計だけは待ってくれない。
仕事が一時間半延びても、翌朝は変わらない。
仕事はある。
保育園もある。
目覚まし時計が鳴る時間も同じ。
だから、どこかを削るしかない。
削られるのは、子どもたちの睡眠時間だった。
その日は、いつもより遅く布団に入った。
寝室へ行くと、長男は「まだ眠くない。」と言いながら、話している途中で寝てしまった。
次男も、ごろごろする元気もなく、気づけば静かな寝息を立てていた。
三男は抱っこしたまま、すぐに私の肩にもたれかかった。
みんな、眠かったんだ。
そして翌朝。
「起きるよ。」
声をかけても反応がない。
布団をめくると、
「……まだねむい。」
小さな声が返ってきた。
長男も、次男も、三男も。
いつもより眠そうな顔。
そりゃそうだよね。
昨日、寝るのが遅かったもんね。
私はその一言が、胸に刺さった。
時短勤務だから、仕事は短い。
そう思われることがある。
でも、残業した一時間半は、どこかから取り戻せる時間じゃない。
夕飯を食べないわけにはいかない。
お風呂を入らないわけにもいかない。
朝は保育園も仕事も待ってくれない。
そうなると、最後に残るのは睡眠時間だけだった。
あの日、私は一時間半残業した。
削ったのは、私の時間じゃない。
子どもたちが眠るはずだった、一時間半だった。
そのことが、今でも忘れられない。
