まさか、脱衣所で泣くことになるなんて。――長男が歌ってくれた夜
まさか、脱衣所で泣くことになるとは。
完全に油断しきっていた母の涙腺は、いとも簡単に崩壊した。
それは、ある日の夜。
お風呂上がりの長男の髪を、脱衣所で乾かしてあげている時だった。
「最近、保育園で何の歌歌ってるの?」
何の気なしに聞いてみた。
もうすぐ節分だし、鬼のパンツとかかな、なんてぼんやり思っていたら、
「うたってあげる!」
保育園のことは、あまり家で詳しく話さない長男。
歌ってくれるなんて、めずらしい。
そう思って、ドライヤーを一旦止める。
「まかせーてねっ なんでもできるから♪」
長男の口から出たのは、鬼のパンツではなく、聞いたことのない歌だった。
そのまま、長男は歌い続ける。
成長した姿を見てね、もうなんだってできるよ。
そんな前向きなメッセージが込められた、とても素敵な歌。
「ちいさい子たちと あそぶからー♪」
そのフレーズを聞いた瞬間が、私の我慢の限界だった。
いつの間にこの子は、
自分より小さい子と遊んであげるくらい「大きい子」になったんだろう。
大きくなったね。
優しくなったね。
気づけば、涙がぽろぽろこぼれていた。
すると長男は、少し照れたように歌いながら、私の手をそっと握る。
そのはにかんだ笑顔が、赤ちゃんの頃の顔に重なる。
抱き寄せた長男の背中は、いつもよりあたたかかった。
落ち着いてから聞くと、
年長さんに歌ってあげるために練習している
「まかせてねマーチ」という歌らしい。
まさか、何でもないど平日の脱衣所で、
こんなにも素敵な歌を聞くことになるなんて。
「すごく素敵な歌だね。ママ、涙出ちゃったよ」
そう言うと、長男は少し誇らしそうに言った。
「先生も、この歌をみんなが歌うの聞くと泣けちゃうって言ってたー!」
……ですよね。
また聞きたいな、と思う反面、
絶対に泣く自信があるので、
しっかり心の準備をしてから、また「歌って」とお願いしに行こう。
※この記事に出てくる「まかせてねマーチ」は、
年長さんが年少さんに向けて歌うことの多い歌だそうです。
気になった方は、こちらから聴けます。
