無音エッセイ
私にはちょっとした特技がある。
それは、無音で生活を送ることである。
無音とはどういうことか。
足音はもちろん衣擦れの音、ドアの開閉音、本のページをめくる音等、あらゆる音を立てることがない。
自分自身の境界を意識し、細かく動きをコントロールする。
さらに、材質や形状を理解しどの程度で音が生じるかを把握することで、ほとんど音を生じることなく過ごすことが出来る。
幼い頃に部屋の中で走り回ったりドアを派手に閉めて怒られたり、わからないことは自分で辞書を見て調べなさいと言われ、渋々辞書をペラペラしていた経験によりなせる技である。
もしくは実際のところ音を生じているが、ノイズキャンセリングのように逆位相の音を自ら発しているのかもしれない。人類は進化し続けている。
もし誰かが私の部屋を訪れるとしたらご注意願いたい。
誰もいないのかと覗いてみたら、私が静かに本のページをめくっている姿を見て ビクッ とすることだろう。
逆にあなたがソファでくつろいでいるとき、忍び足で気付かれずに近づき肩を トンッ とすることも出来る。
ただのいたずらである。
生活音と呼ばれる音が一切ない空間。
聞こえてくる音があるとすれば、静かに鳴る心臓の鼓動くらいだろうか。
そんな無音の生活を送っていると、いつも以上に聞こえないような微かな音を聞こうと聴力も鍛えられていると実感する。
気が付くと先ほどからキーン、あるいはシーンという音が聞こえている。これは耳鳴りかもしれない。
いいなと思ったら応援しよう!
日本はまだまだチップの文化に馴染みがありませんよね。私もその一人です。ところでチップおひとついかがでしょうか。