Photo by
k_jack_norio
詩作|破けた日
しゃがんだ。
音がした。
したような気がした。
なんだろうと思った。
股の間を覗いた。
見慣れないものがあった。
まばらに垂れ下がった糸があった。
それが幾本も視界の限界あたりに見えた。
あっと思った。
もうそれだけで十分だった。
確かめることも必要なかった。
しゃがんだ。
音がした。
股の間を覗いた。
糸が見えた。
すべてが結びついた。
ゆっくりと立ちあがった。
急ぐ必要などどこにもなかった。
よっこいしょと立ちあがった。
よっこらしょでも構わなかった。
でもよっこいしょと立ち上がった。
左の手を腰の後ろ側にまわした。
右の手でもよかった。
たまたま左の手だった。
その手を垂れ下がって見えた糸のある方へと下ろしていった。
手に触れたのはないはずの裂け目だった。
あるはずの布地はそこにはなかった。
あるはずのものがなく、ないはずのものがある。
ズボンが破れるということはそういうことだった。
そうである以上のことはない。
そうであるというだけのこと。
なにもかもは人生の一場面。
生きることの一場面。
さて。
どうやって帰ろうか。
