続けること 新しく始めること
仕事をしていると、ふと
「新しいことを始めるより、今やっていることを続けるほうが難しいのではないか」
と思うことがあります。
新しいことを始めるときには、期待があります。
「こんなことができたらいいな」
「こういう形にしてみたい」
「もっと良くできるかもしれない」
考えている時間は楽しいし、新しいことには自然とエネルギーも湧いてきます。
でも仕事は、新しいことだけをやっていればいいわけではありません。
むしろ本当に大切なのは、今まで積み重ねてきたものをきちんと継続しながら、その上に新しいものを作っていくことなのだと思います。
今ある仕事は、止まらない
私の場合、日々の訪問歯科の仕事があります。
患者様がいて、ご家族がいて、施設の方々やケアマネジャーさん、多職種の方々との連携があります。
一度関わったら、それで終わりではありません。
口腔内の状態を確認して、必要なケアを続け、変化があれば対応する。
そしてまた次につなげていく。
派手ではないけれど、この「続ける」という積み重ねが、訪問歯科ではとても大切だと感じています。
信頼も同じです。
一度何かをしたから生まれるものではなく、小さなやり取りを何度も重ねることで、少しずつ作られていくものだと思います。
その中で、新しいことも始めたい
一方で、現場にいるからこそ、
「もっとこんなことができないだろうか」
と思うことも増えてきました。
その一つが、私が今取り組もうとしている嚥下調整食です。
訪問の現場では、「食べる」ということについて考える機会がたくさんあります。
安全に食べられることはもちろん大切です。
でも私は、それだけではなく、
「美味しそう」
「食べてみたい」
「今日はこれが食べられるんだ」
そんな気持ちまで含めて、食事なのではないかと思っています。
嚥下機能が低下しても、食べる楽しみまで失ってほしくない。
そんな思いから、見た目にも楽しめて、その方の状態に合わせて安全に食べられる嚥下調整食を、いつかきちんと形にしたいと考えています。
新しいことだけに集中できるわけではない
とはいえ、現実はそんなに簡単ではありません。
新しいことを始めたからといって、今までの仕事が止まるわけではないからです。
患者様への対応もする。
施設との連携もする。
必要な書類も作る。
スタッフと情報共有もする。
そして、その間に新しいことを調べたり、人に会ったり、相談したり、少しずつ準備を進める。
一日は24時間で、体は一つ。
「あれもやりたい、これもやらなければ」
と思うほど、時間の使い方の難しさを感じます。
以前は、新しいことを始めることそのものが「挑戦」だと思っていました。
でも最近は少し違います。
今あるものをきちんと続けながら、新しいものを育てていくこと。
本当の挑戦は、こちらなのかもしれません。
継続は、変わらないことではない
そしてもう一つ、最近感じることがあります。
「継続する」というと、同じことをずっと続けるように聞こえます。
でも仕事における継続は、そうではないと思います。
続けているからこそ、見えてくる課題があります。
続けているからこそ、
「ここを変えたほうがいい」
「もっとこうしたほうがいい」
ということにも気づきます。
つまり、
継続するためには、変わり続けることも必要なのだと思います。
今までやってきたことを大切にする。
でも、「今までこうだったから」という理由だけで同じ場所に留まらない。
現場で感じた小さな違和感や気づきを、新しい取り組みにつなげていく。
その繰り返しが、仕事を少しずつ成長させていくのだと思います。
大きく進まなくても、止めない
もちろん、毎日すべてが思い通りに進むわけではありません。
目の前の仕事だけで一日が終わる日もあります。
新しく始めたいことに、ほとんど手をつけられない日もあります。
そんなときは、
「全然進んでいないな」
と思ってしまいます。
でも、一週間、一か月という単位で振り返ってみると、意外と前に進んでいる。
一人に相談した。
一つ調べた。
新しい出会いがあった。
考えていたことを文章にした。
小さなことでも、それは確実に次につながっています。
だから今は、何でも一気に完成させようとするより、
止めないことを大切にしたい
と思っています。
守るものがあるから、新しいことができる
新しいことを始めると、どうしてもそちらに目が向きます。
でも、新しい挑戦ができるのは、今まで続けてきた仕事があるからです。
現場がある。
患者様との出会いがある。
一緒に働いてくれる人がいる。
支えてくださる方々がいる。
そこで経験したことや感じたことが、次の「やってみたい」を生んでくれる。
私が嚥下調整食について考えるようになったのも、訪問歯科という現場を続けてきたからこそです。
だから、新しいことを始めることと、今あるものを続けることは、別々ではないのだと思います。
今までの積み重ねの先に、新しい挑戦がある。
そして新しい挑戦で得たものが、また今の仕事を少し良くしてくれる。
そんな循環を作れたら、とても素敵だと思っています。
続けながら、少しずつ前へ
仕事をしていると、次々とやるべきことが出てきます。
全部を完璧に、全部を同じスピードで進めることは難しい。
だからこそ、
今あるものを大切にする。
新しいことにも挑戦する。
そして、どちらも止めない。
そのバランスを取りながら、一歩ずつ進んでいく。
きっと数年後に振り返ったとき、
「あのときの小さな一歩が、ここにつながっていたんだ」
と思える日が来るのだと思います。
継続することも、挑戦することも、どちらも簡単ではありません。
でも、
続けているから見える未来があり、
新しく始めるから広がる未来がある。
今あるものを大切にしながら、新しい可能性も育てていく。
そんな仕事の仕方を、これからも続けていきたいと思っています。
