トイレに行きたいのは彼女だ!
通訳ガイド・キャリア支援・ワークショップデザイン・地域資源を活かしたプログラムやリトリートの話題を行き来して書いています ☺︎
今から約10年前。駆け出しガイドの頃のエピソード。
初めて1人でお客様をご案内した時のことです。しかも京都ではなく東京パートの担当、、。ガイドとしては勿論、英語力も東京にも自信がなく、その日に向けて、何度も何度も下見を重ねました。
道順オッケー、所要時間オッケー、説明内容オッケー、トイレ場所オッケー、休憩場所オッケーなどなど、と自分なりには準備万端で臨みました。
そしてお客様。
トルコからのご年配のご夫婦。
その日は浅草の半日観光。
ホテルから電車で浅草までやってきて談笑も弾み良い雰囲気。
地上に出る前に、
(私)これから少し歩きますが先にトイレ行きますか?
(奥様)いいえ、大丈夫よ
(ご主人)君は、トイレが近いんだからいっておけば?
(奥様)だから、いいって言ってるじゃない、行きましょ!
(ご主人)そうだな、君の言う通りだ。行こう。
と、奥様に押され気味で苦笑するご主人と笑いながら 仲見世通りを歩き始め暫くしたころ
(奥様)やっぱり、トイレにいきたいわ。
(私)もう少し歩いたお寺の入り口にありますから、そこではどうですか?
(奥様)いや、今すぐ行きたいわ!
(ご主人)Eri、彼女がトイレに行きたいそうだ、トイレはどこだい?
(私)わかりました、そこのお店で借りれるかもしれないです、聞いてきますね。
と、脇道の喫茶店で尋ねるもトイレだけの使用はできないとのこと、、。
やばい〜!浅草でトイレに行くなら、構内か本堂前で大丈夫と思っていた私。このタイミングで、どこにトイレがあるかわからない、、
どーしよー、なんか奥さんもイライラし始めて、それを見て旦那さんもはらはら、ヤキモキ・・。
(奥様)Eri ! トイレはどこよ?
(ご主人)Eri ! トイレに行きたいんだよ!
わかってるってー、ちょっと待ってよー、トイレトイレ・・・
スマホで探す?いやそんな時間は無いし、人に聞くにも多すぎて身動きがあまり取れない、、よしちょっと探しに行ってこよう!
そう思い脇道にそれて足早に歩き始めた私に
(奥様・ご主人)Eri ! あなた、どこいくの!!
2人の焦った、不安げな眼差しに追い詰められ
(私)I'm going to the toilet !!
(私、トイレに行ってきます!! ←トイレを探してきます、と言いたかった)
と、口走った私。
(ご主人)NO〜!!! NOT YOU!! SHE wants to go to the toilet. NOT YOU!!
(何言ってるんだ!君じゃないだろ、彼女だよ、トイレに行きたいのは彼女だ〜!!)
キャー、ごめん〜、失言〜、間違えたー、めっちゃ怒ってるしー、どーしよー、っていうかどこやねん、トイレ、トイレ・・・とパニックになった私。
その矢先、目の前にまさかの公衆トイレ発見!!
おー!!!、トイレやん〜!! ありがたや〜、神様、仏様、トイレ様!!!
そして何食わぬ顔で
(私)ここがトイレですよ、奥様♪
(奥様)あら、ここね。行ってくるわ。
(ご主人)良かった、良かった。彼女は本当にトイレが近いからね笑 僕はいつも気にしているんだよ。
ご主人と一緒に心底ほっとした私。
その後、すっきりした奥様と一緒にツアー再開をしたのでした。
▪️教訓▪️
行きたいと思ったら我慢できなくなるトイレは、何よりも重要な下見ポイントの1つと心得るべし
カメラで、てんやわんや
引き続き、トルコのご夫婦との2日目。
その日は美術館や庭園やらを見て回ることを楽しみに優雅な時間をイメージしていました。
当日の朝、ホテルのロビーで待ち合わせ。
再開して早々に
(ご主人)困ったよ、Eri。カメラの充電がなくなりそうなんだ。今回の旅は写真が撮れないと意味が無い。何とかしてくれないか?
(私)電源にさして充電することができると思いますけど無理でしたか?
(ご主人)うーん、よくわからないなぁ。。このカメラは韓国の空港で買ってきたばかりで使い方も良くわからないんだ。(※韓国→日本という旅程)
(私)分かりました。ちょっと良いですか?
カメラを拝見すると、Samsung製。そうやなぁ、韓国で買ったんやもんなぁ。まぁ量販店で予備の充電を買ってくれば良いかな?スマホもGalaxyがある位やし、日本製でない製品も大丈夫やろ。と安易に判断。
(私)じゃあ、新宿を通りますので、そこで量販店に行って買って行きましょう。
(ご主人)オッケー。良かったよ。
と、とりあえず出発進行。
予定通り新宿に到着。
無駄足にならないように先に量販店に電話で場所を確認。
(私)すみません、Samsung製のカメラの充電を買いたいのですが
(店員)はい、確認します。少々お待ち下さい・・、すみません、生憎当店にはSamsung製の商品は取り扱いが無くて、、
(私)わかりました。
そして、別の店舗に電話。
(店員)すみません、、日本では扱っていないんですよ、その製品・・。
(私)え? 日本に、日本にないんですか?・・・・・。
それ、あかんやん、、、。やばい〜。どーしよう。。何も知らないご主人は鼻歌まじりにご機嫌に歩く。
恐る恐るご提案。
(私)すみません、、確認したのですが、日本では、このカメラ用の商品は取り扱いがないそうです。良かったら、私のカメラ使いますか?
(ご主人)えーー!困るよ〜。君のカメラはさすがに借りれないよ。じゃあ彼女のを使うよ。
なんやー、奥さん持ってるんやん。ちょっと早く言ってよ〜。あー、良かった。
と思ったのもつかの間
(ご主人)でも彼女のカメラのメモリは一杯だから、SDカードを新しく買わなきゃ。っていうか買ってきて?
(奥様)あら、買い物いってきてくれるの?じゃあ、ついでにお願いしたいんだけど、この荷物を持ち歩くのが重くて重くて、、ゴロゴロ引っ張るやつ買ってきてくれない?
(ご主人)そうだな、今日一日、荷物を持って歩くのはしんどい。Eri 、彼女が欲しいのはこれだ。
と言って、メモ帳にさらさらっと美しいデッサン(ご主人はデザイナー)。そして私をじっと見つめる2人。。
代替案を出す余裕の無い私は、
(私)わ、わかりました!じゃあ1時間後に、ここの出口で待ち合わせしましょう。楽しんできてください〜♪
と、笑顔で送り出し、新宿の繁華街へ。
電車に乗るには微妙な距離だし時間のロスだと思い、小走りで新宿の中を走り回る・・ミッションは1時間で、SDカードとイメージに近いキャリーケースをゲットし、時間までにタクシーを手配して庭園出口にお迎えにいくこと。
その日は蒸し暑い初夏の7月。2度手間はできないので、確実に品物をゲットする為、数店舗をハシゴし汗だく。ちょっと一服したいなぁ、と思いを抱えつつ、キャリーバックを抱えて急いで待ち合わせ場所まで走りタクシーを呼んでほっと一息。なんとか時間内に間に合いました。
(私)お帰りなさい、お庭どうでした? 頼まれたもの買ってきましたよ〜。
(ご主人)Eri〜 、Good Job〜 !! ありがとう!! 助かったよ。
(奥様)ありがとう!このキャリーがあれば、何時間歩いても楽々だわ♪
いやいや、絶対疲れたって言うでしょ、あなた、と思いながらも無事にお使いミッションコンプリートし2人の笑顔にほっとして、一件落着!あー、良かった。今日も朝から大変やったなぁ、とちょっと達成感も味わいながら、タクシーに乗り込み次の目的地へ向かったのでした。
そして、その車中。
(ご主人)Eri ! 困ったよ!!
えー、何〜? 次は何っすか〜!!
(私)どうしました?
(ご主人)彼女のカメラのデータだけど消えてしまうと困るから念のためPCに保存しておきたいんだ。
(私)新しいSDカードを買ってきたら、それに差し替えれば大丈夫ですよ。古いSDカードを失くさないように大切に持ち帰ってください。
(ご主人)もちろん、わかっているけど、、不安なんだよ。そのSDカードを無くしてしまったら思い出が全て消えてしまう、、
(奥様)えー!それは困るわ! Eri、撮った写真のデータを安全なところに保管してちょうだい。
だから、それは、SDカードさえ失くさなければ大丈夫なんやけどなぁ、、といくら説明しても2人の不安は募るばかり。どうしたもんか。データを保存といってもPCは持ち合わせていないし、、インターネットカフェを利用するのも何か違うしKinko's的な場所にいけばなんとかなるかも!
そこで、ご提案。
(私)では今から六本木の美術館に行くので、お2人が見ている間に私なんとかしますよ。
と、言ったものの・・まだKinko's的なお店の場所も見つけれていないし、迷いながら連れ回す事もできないし私の中でも解決策がふわっとしたままやけど、、と不安を抱えながらタクシーが六本木に到着。
(私)じゃあ、予定通り美術館見てきてださい。素敵な展示ですよ〜♪ 私はその間にPCにデータを保管するサービスを探しておきますので。
(ご主人)わかったよ、じゃあ後でね。
ようやく1人になり、今度は六本木ヒルズの中をダッシュ!今回は制限時間約30分弱。スマホで調べつつオフィスサービスのお店を発見。ネットも使えるしオッケー。よしよしこれで大丈夫、と2人と合流した後、お店に。
(奥様)すっごく素敵な展示だったわ〜(余韻に浸っていてご機嫌)
(ご主人)君が喜んでくれて嬉しいよ。あとはカメラのデータの問題だけだ(さりげなくプレッシャーをかけられる)
(私)ご主人、このPCが利用できるのでどうぞ♪
(ご主人)え?僕がやるの?わからないよ、やり方。
・・・ん? 私がやるの?
一瞬にして走る緊張。大きく深呼吸。まじで〜、私が?やるの?
(私)私ですか〜笑 大丈夫、IT業界で働いていたから得意なんです、こういうの任せてください♪
と、引きつる笑顔でカメラを受けとって、えーっとPCとつなぐケーブル、ケーブル、、あれ、無い。。もちろんご主人は持っていない。あれ?ケーブル無かったらデータ取り込めへんやん?ここまで来て?ピーンチ!じっと2人に見つめられる私。。遂に策がつきたか、、とあきらめかけた瞬間
あ!そうや!
念のため携帯の充電器を持ち歩いていた事を思い出した私。
確かそのケーブルがUSB端子やった気がする、、、そろりと確認すると
BINGO!! (心の中でガッツポーズ)私、ついてるわ〜!
そして何食わぬ顔でカメラとPCを接続しデータをダウンロード。
その後オンラインストレージにアップして、内容も念のため確認してもらい一段落。
(ご主人)おー、Eri ! 本当にありがとう!本当に助かったよ! 君は私の女神だ。
どーもどーも、こちらはヒヤヒヤしました、ほんまに。
この旅で一番褒めて頂き、その後はなんとか無事に一日が終わりました。
というか、そんなにカメラが大事なら、もう少しきちんと準備してほしかったと思いつつお客様の嬉しそうな顔を見ると全てが吹っ飛んだのでした。
▪️教訓▪️
旅にカメラは必須アイテム。カメラアクシデントが起こる可能性に備えるべし。
そして、別れの時
トルコご夫婦との最終日。
時に怒られ、荷物を持たされ、パシらされ、でも沢山笑い、写真を撮りあい、お互いの国の事、家族の事、文化の事、色々話したりして、絆も深まったこの3日間。
いよいよ別れの朝となり、品川駅新幹線のホームまでお見送り。(この後京都・広島の旅程)
(奥様)Eri、本当にありがとう♡ あなたがいてくれて良かったわ。いつでもトルコに遊びに来なさいね。また必ず会いましょう。
そう言って、スカーフをプレゼントしてくれました!早速首に巻いて喜ぶ私に
(奥様)まぁ、似合うわ、いいじゃなーい。
(ご主人)それにしてもEri 、君はこの3日間 GoodJobだった。だけど英語はもうちょっと頑張らなきゃだめだな。良い学校をイギリスに知っているから、そこに留学しなさい!
もうこの時には、上司・部下?親子?みたいな構図になっていた私たち。ご主人から色々アドバイスを頂きながら雑談していると新幹線が到着。
(私)新幹線がきましたよ。さぁ乗りましょう。荷物持って行くの手伝いますね。
岩石のように重いトランクを一緒に持って乗り込み、車両の一番後ろの座席のところに収納。
(奥様)ここに置いておいて大丈夫かしら?心配だわ。荷物専用のスペースは無いの?
(私)残念ながら新幹線には無いんですよ。でもここは大丈夫ですよ。心配でしたら時々トイレにいく時にチェックしてみては。
(奥様)まぁ、日本だからね、大丈夫よね。
(私)じゃあ、席まで一緒に行きましょう!
そう言って、指定席の座席まで一緒に向かい、ハグ&キスでいよいよ感動のお別れ。ほろりと涙も出てきて、おー、これはウルルン滞在記の気分やぁ、、と感傷にひたりかけてた瞬間
あれ?車窓の景色が流れている??
もしかして!もしかして! そうです、出発してしまったのです!
荷物でゴタゴタしているうちに、停車時間の短い新幹線は音も無く(気づかず)発車していたのです!!
お別れね〜、と散々盛り上がった後、なぜか一緒に電車に乗っている気まずい雰囲気・・・。
最後の最後まで私何やってるんだか、、苦笑しながら談笑し、そして数分後、新横浜駅で下車。窓越しにバイバーイと手を降って、これで本当のお見送り。ホームから新幹線が見えなくなるまで見送ったら、なんとも言えない気持ちがこみ上げて思わず涙ボロボロ。。仕事で泣いたん久しぶりやなぁと思いながら達成感と解放感と猛烈な疲労感と、自分の至らなさと、何よりご夫婦行っちゃったなぁと寂しい気持ちに涙が止まらなかったのです。
ともあれ、こうして最後までヒヤヒヤの初ガイドがようやく終わったのでした。
▪️教訓▪️
別れ際まで気を抜かず、そして色々あっても最後は良い思い出になると頑張るべし

