トップアイドル物語-最終話-「時をかける?誰が?…え、さすがにそれは」
連続あらすじ小説
「トップアイドル物語」-最終話-
オープニングテーマ
「パラダイス・ウォーカー」伊藤智恵理
♪Just Walkin‘ ステキな
Just Walkin‘ 一日
自分で始められる
朝陽が背中を押すわ
「チエリ・ブラッサム」。
――弘前城公園の桜は、ちょうど今、満開だ。
前から一度訪れて見たかった、弘前の街を、私は歩いていた。
「桜は儚く散るからこそ、愛されるのだ」と人は言う。
「人の夢」もまた――そう、いつだって「一瞬の夢」なのだ。
でも、「一瞬」だからこそ、人はそこに「永遠」を描くこともできる。
何故なら。
「生ける者たち」にとって、「永遠」とは本来、その手につかめぬものだから。
だから、人は「一瞬」の中にこそ、一点集中、描き得ぬはずの「永遠」というものを、「想像力」や「空想力」で見出すのだ。
――「永遠」なんてどこにもないはずなのに、確かに存在するのは、それが「幻」の姿だからだ。
「幻」。
青空に映える桜の色は、さながら、「幻」のようでもあった。
――「繰り返し巡りくる春」は、しかしその全てが「過ぎゆく春」なのであり。
「私……これからどうしたらいいのだろう?」
と、胸中にふと、これまでの人生のうちで、何度も何度も繰り返されてきたその問いが、また浮かぶ。
が、しかし。
桜の色に染まる、夢のような季節の中を歩いていたら――耳を澄ませばそこに、この世界に寄せては返す「音の波」が――空気を微かに震わすかように。
さやけく。
でも。
「目に見えぬその力」は、胸の中にこそ、湧き上がり漲ってくるのがわかって。
それは「言葉」を持っていた。
――そして、私の心の中をまるで風のように通り抜けては、「何か」に「変換」されていく。
立ち止まる。
もう一度、耳を澄ましてみる。
――そんな「かたちのない何か」すら、今、この風に手を伸ばしさえすれば、私自身のこの手の中につかめそうな気がする。
そんな春の日だった。
弘前駅の自由通路を通りかかった時――一台のストリートピアノがそこにあるのを、私はみつけた。
自然と。
私は、それに吸い込まれるように、近づいていく。
――歌いたい。
と、思った。
ただ――ただただ、歌いたい、と、思った。
立ち止まる人の誰もいないピアノの前に一人座り、鍵盤に触れてみる。――誰よりも懐かしい友の指に、触れるみたいだった。
「タイトルも知らない曲」を――でも、私が一番好きなあの曲の前奏を、弾いてみる。
――ねえ、いつまで?
いつまで、私の声は、私の声のまま、この空気を震わすことができる?
そんな私の問いへの答えは、そのまま、空気中から私の耳に返ってくる。
――いつか、それが失われる日までは。
私は頷く。――それなら、怖れることは何もない。
私の声は、きっとこの「時」の中に、いずれ「永遠に」溶けてゆくだろうから。
ブレスをひとつ。
――そして、私の声が、いよいよ空気を震わし始めると。
あ。
――世界が震える気がした。
「見えない波」が、そこに見える気がした。
まるで「あの日」のようだ。
響き渡りはじめた自分の声に、耳を澄ます。心を澄ます。
「自分ではないような自分の力」が、ことみの声から、腹の底から、全身から、湧き上がってくるのを感じる。
音楽の神様がいるならば、私の声を、どうか届けて欲しい。
――もっと、遠くへ。
もっと、もっと。もっと遠くまで。
「いつか」、本当に届く気がした。
「永遠の三分間」が、今、終わった。
「あの……。」
気づくと、学校帰りなのか、制服姿の少女が一人、私の歌を聴いてくれていた。
――その胸に、スマートフォンを握り締めている。
「スミマセン、勝手に今の歌、録ってしまったんですけど。
大丈夫ですか?」
もちろん!
聴いてくださってありがとう!とってもうれしいです!
と、私は答える。
「本当に、もし、よろしければなんですけど。
……今の曲、もう一回歌ってもらえませんか?
実は、曲の途中から録ったもので、曲の始めから撮り直したくて。」
人見知りなのか、少女があまりにもおずおずと言うものだから――まるで遠い日の自分の姿を見ているようで、私もつい、笑顔になってしまう。
「よろしくお願いします!
こちらこそ、もしよろしければですが、動画で拡散していただいても!」
……なんてことまで言ってしまう。
更には。
「あ、よかったら、お嬢さん?
あなたの好きな曲を教えてくださいませんか。」
「好きな曲、ですか?……何でもいいんですか?」
「ええ、知らない曲でも、私、一度聴けば、だいたい歌えちゃうんで。
あなたが聴きたい曲を、是非、私に歌わせてもらえませんか?」
インターネットに上がっていた、誰かの「永遠」を、少女のスマートフォンで聴かせてもらいながら。
私は、私の中に、「永遠」をまた一つ携えていく。――「永遠」がまた一つ増えていく。
そして――それを「私の歌」という永遠にまた「変換」してみる。
すると――私の心もまた、この世界と共震しているのがわかった。
「私……これからどうしたらいいのだろう?」
その答えは――生まれた時から、もう既に私の中にあったのかもしれない。
「この子は、歌うために生まれてきたような子だね。」
―完ー
――うむ。
と、いうわけで。
こんにちは。
トキザワコトモリです。
今、トキザワコトミ氏がお書きになった『トップ・アイドル物語ー最終段階ー』を、私も読み終えたところなのですが。
皆様、どう思われました?
――まあ、既にご存知の方もいらっしゃると思いますが、私トキザワコトモリもまた、異様なる「80年代アイドル信者」じゃないですか。
その視点で読むと、ど~も、ひっかかる部分も多い小説なんですよね。
そもそもさ。
「時澤ことみ」も「トキザワコトミ」も、設定としては一応、人並外れた歌唱力とか音楽的才能とか、あることになってはいるけれども。
でも、別に、「アイドル」つまり「崇拝の対象にすべき偶像」って、そういうの、必ずしもなくてもいいものでしょう?
(ま、そりゃあ、そういうのは、あるには越したことないだろうけどさ。)
(とはいえ、)
一番必要なのは「時代とシンクロする」その「運」というのか、「引きの強さ」というのか。
その「あまりにも強い磁力」こそが、「偶像力」即ち「アイドル力」というものなんじゃないのかな?
「理屈」じゃないんだよな。
「説明」しきれない、というか。
「実力」とかなんとかでまた必ずしも測れるものでもないしさ。
――でも、そこが何より面白いところでさ。
「トップアイドル物語」には、「大映ドラマ風」にも「ー最終段階ー」にも、それが描かれていないような気がするんだよなあ。
ならば。
ワタクシ、「トキザワコトモリ」が、今から描いてみせてしんぜようではないか。
――え?
この物語を今更「書き直し」はしませんよ?
(だって、ここまで読んできて、皆様、さすがにもうお腹いっぱいでしょ?笑)
ワタクシめがここでひとつ「体現」してさしあげてもよろしくてよ?って、そういう話です。
いや、これまでトキザワコトモリ自身も、「妄想だけでアイドルデビューを目指し、妄想だけでトップアイドルにまで昇り詰める」をコンセプトに、こんな「挑戦」を試みてはいたんです。
※目を通さなくて大丈夫です!……我ながら、割れるように頭がおかしい内容です!!(くれぐれもご注意を!笑)
しかし、その結果は……。
ならば。
――「私自身」が「リアルに」動き出さないと、意味がないのではないか。
(やめろ!!!)
今日は、1983年6月2日。
――「時澤ことみ」が、六本木の路上で初めて、「深沼溺彦」と出会う日。
いや、今夜の「ザ・ベストテン」、どうしても見たかったんだけどなあ。
――いよいよ主演映画がこの夏に封切られる予定の、要注目の原田知世氏が、「時をかける少女」という曲で、「今週のスポットライト」のコーナーに出るらしいのだが。
絶対見たい。
うーむ、本来なら、「私の運命上」――つまり「アイドルオタクとして生きていく私の、その運命をここで決定づけるために」どう考えても見なければならない、見逃してはいけないシーンなのだけれど。
――それと引き換えにするしかないのか。
あああああ、ビデオデッキ、欲しいなあ!
(テレビ番組を録画して残して後でも何度でも見られるなんて、なんて素晴らしい世界でしょう!)
でもビデオデッキ、高くて買えない!!……石丸電気でもさくらやでも見てみたけど、とてもじゃないがビンボー人には手が出せる値段では(まだ)ない!
それなら、仕方ないではないか。
――今夜の「ザ・ベストテン」はあきらめて、ここはひとつ、行ってみるか?
いざ、六本木へ。
ことみが「ひったくり犯」をつかまえられないなら。
私がその「ひったくり犯」をつかまえて、替わりに深沼溺彦に出会い――もちろん「アイドルとしての才能」をそこで見出され。
そして見事、「トップアイドル物語-現実篇ー」を。
「こっちの世界」で?
私「トキザワコトモリ」が完成させるしかない……ということ?
――そういうことなの?!
(どういうことなの?!?!)
「乞うご期待ッ!
ここからは、『リアルタイム世界』で、『まったく新しいタイプのトップアイドル誕生物語』を、とくとご覧あれッ?」
と、振り向いて叫び、80年代のアパートの部屋を飛び出し、一路東京へと向かう、「トキザワコトモリ」の姿がそこにあった。
(……たとえ降り止まぬ土砂降りの雨の中であろうとも。)
妄想と現実との区別がいよいよつかなくなる、その日まで。
――時をかけるコトモリは、過去も未来も星座も越えるから、気をつけて!
今度こそ本当に
ー完ー
?
エンディングテーマ
「時をかける少女」原田知世
・
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〈大予言〉
20〇〇年
この物語が「何かの間違い」で
ドラマ化されてしまう。
偶々それを目にしてしまった
「いつかの」あなた。
(「いつかの」――
それは「未来の」かもしれないし
「過去の」かもしれない。)
そうなると、当然。
次の『時澤ことみ』は。
今、偶々ここを読んでしまっている
「あなた」
……しか、もういないですよね?
※「断る権利」は認められていません。
・
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・
誰もが憧れる
「アイドル」というものが
この世に存在する限り。
この物語に
ー完ー
……は、ございません!
あしからず!!
Q, 「アイドル」とは?
A, 即ち「永遠」です!
各話のテーマソングを集めた
「『トップアイドル物語』オリジナル・サウンドトラック」
も、Spotifyのプレイリストで作ってみました。
あまりにも無茶苦茶だった物語の「お口直し」に、
よろしければどうぞ!!
