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膝枕外伝 優しい膝枕[RAIN編]

こんにちは。ノアです。コミュ症の私がもう何回も朗読させてもらっています。今井先生と皆さんの協力のお陰です。本当に皆さん、ありがとうございます。

 今回初めて嫉妬についての物語を書こうと思いました。私はあまり嫉妬しない人間なのです。ある意味どんな仕上がりになるのか?実験です。勿論私も人間なので、自分にない才能をもっている人は、いいなあと思うことはありますが、そこで終わってしまうので、嫉妬までいかないのです。

 これは私の考え方ですが嫉妬することは、嫉妬している人に敗北宣言しているのと同じです。それまで頑張ってきた自分を否定することになりませんか?もの凄い頑張ってきた訳ではありませんが、そこそこ頑張ってきた人間なので、頑張ってきた過去の自分が可哀想になります。ある意味ウルトラポジティブ?

 さて非常に前置きが長くなりましたが、今回の膝枕外伝は膝枕ちゃんととある探偵事務所のお話です。はーぁと膝枕ちゃん(名前がない設定で可哀想だったのでとりあえず名前をつけてみました。そのままですが?笑)は深々と溜息をついた。

今の時期は6月。ジトジトした天気が続くので、不快指数が高くなり、溜息の1つでもつきたい気持ちにもなるが、彼女の心はもっと重症だった。何故なら彼女は昨日愛する男性に捨てられた。これが普通の男女の話なら惚れた腫れた、捨てた捨てられたとよくある話なので、たいして面白くもないのですが、これが膝枕だったらどうでしょうか?えーー?何で?枕にそもそも感情なんてないだろうと思う方が正常である。でもひざまくらーさんの間では人間と膝枕の恋愛なんて、日常茶飯事でしょ?と思う方がいると思いますが、今回はその感情を捨てていただいて、一般人の感覚でお読み下さい。(笑)

 何と彼女は膝枕。おまけに捨てられた日は運悪く雨が降っていた。膝枕ちゃんはあまりにも運のない自分を恨めしく思った。とうとうお天道様まで私を見放したのだろうか?

 最初シトシトと降っていた雨がやがてざーざー降りになった。彼女の心の鏡を表しているようだった。昨日捨てられた日は放心状態で何も考えられなかったが、1日経つとふつふつと男への怒りが込み上げてきた。怒りの火山が爆発する寸前。とりあえず彼の元へ帰って、体当たりの1つでも食らわせないと気がすまない。彼女は怒りのパワーだけで動き始めた。自分がオープンレンジぐらい大きなの箱の中にいることさえ忘れて膝をにじらせた。

 箱の中で膝をにじらせているので、足は擦り傷だらけ、打身になっているところも多々ある。それでも彼女は前に進むことを止まなかった。どれくらい歩いたかは分からない。はたから見ると異様な光景なのだが、異様過ぎて誰も声をかけなかったのか?漸く1人の天パの眼鏡の優しそうな男が、

「大丈夫か?」と声をかけてきて、大きな段ボール箱を優しく開けた。箱の中身を見ると女性の下半身だけの膝枕だった。昨日の雨が箱から滲んで、擦り傷から赤い血が滲んでいた。

「た、大変だ?昨日の雨でびしょ濡れだ!怪我もしているね。事務所で応急処置するよ」と彼は言って、自分の服が汚れるのもお構いなしに、お姫様抱っこの要領で彼女を運ぶ。内心彼は彼女が大怪我してなくて良かったと思っていた。人間なら救急車を直ぐ呼ぶが、彼女を流石に救急車に乗せる訳にはいかない。彼が事務所のドアをパタンと開けると、部屋の中から、

「郵便物を取りに行った割には、随分遅かったな。優雨(ゆう)」と低い男の声がした。同時に彼が抱きかかえているモノを見て、「お、お前の抱えている物体は何だ?」もう1人の社員、茶髪の水都(みなと)が驚きの声をあげる。

「そうだ。優雨。お前、事務所に何勝手に持ち込んでるんだよ!とMr.Tの声が少し遠くから聞こえる。彼がこの事務所の社長らしい。こちらもちょっと、いやだいぶ変わった外見である。小さなソファーに小さなメインブラック風の男が座っている。

優雨は彼等の質問に答える前に、タオルと救急箱を取り出して、消毒薬と傷薬を塗った。そして堂々と、「見れば分かるでしょ?2人とも。人命救助最優先でしょ。その後のことは後で考えます!」

「そりゃあー。人間ならそうだろうよ。でもお前が助けたのは人間じゃないモノだぜ。分かってるのか?」Mr.Tが上司らしく、現状を説明した。

「あら、社長さんは人間じゃないのね」と彼女。 「お前だって人間じゃないだろう?お前には言われたくないな。それに膝枕って喋れないんじゃなかったか?

「最近の膝枕は話せるタイプのもあります。ちゃんと膝枕シリーズ読んでます?まだまだ膝枕についての勉強が足りませんね」

膝枕ちゃんの言葉は丁寧で品もある。お嬢様タイプのプログラミングがしてあるのかもしれない。でもちょっと謎の?斜め上から目線である。

「君は状況が分かってない中、優雨に連れられてきたよな?ここは探偵事務所だぜ!依頼を受けるのが俺たちの仕事。依頼がないのなら、君には悪いがお引き取り願いたい」Mr.Tは断り文句を言ったつもりだったが、意外な答えが彼女から返ってきた。

「依頼なら勿論ありますわ。」と。

「えーーー?依頼あるのか?」ほぼ2人の男が同時に驚きの声をあげた?

「で、何の依頼なんだ?」おそらくMr.Tはめちゃくちゃ驚いてると思うが、残念ながらサングラスをしているので、表情はほぼ見えない。そもそも彼自身も小さいので、なかなか表情が分からない。以上のことを考えるとMr.Tは探偵向きと言うことになる。

「探偵さんにやってほしい事があります。ある男を殺してほしいのです。殺す方法は確実に殺していただけるなら、方法は問いません。よろしくお願いします」と膝枕ちゃん。

「あの人を殺してくれるなら、相手がクマであれ、ライオンであれ、ロボットでもこの際、何でもいいわ」

話しているうちに色々思いだしてきたのだろう?彼女の口調がヒートアップしてきた。どうやら怒りの炎が湧いてきてしまったらしい。

「あのな、膝枕ちゃん。もう一度ちゃんと説明する。ここはほのぼの探偵事務所で俺らは探偵なの。探偵は殺しをしない。確実に殺したいなら、殺し屋に頼まないとな」

「いやMr.T、そう言う問題じゃないと思うぜ。そもそも殺し屋に頼むこと事態、間違ってる」冷静に水都が言う。

「でも話しを聞くぐらいならできるよ。誰かに話すと気持ちが楽になることもあるから」と優雨。

「‥なるほどな。そう言うことか。優雨。何か最初からお前の様子が変だったんだよな。今分かったわ。お前、膝枕ちゃんに惚れてるだろう?」笑いながら、Mr.Tは説明した。

「え?そんな馬鹿な?相手は膝枕ですよ!人間じゃないモノに恋をするなんて‥」水都は余りの驚きで途中で言葉を失った。

「最初は筋道たてて話すのは、難しいだろうから。思いついた言葉からゆっくり話してくれ」と社長らしく振る舞うMr.T。

「君の言葉から俺らが話を組み立てるから、大丈夫」

 社員2人も無言で頷く。彼らの様子に安心したのだろうか?彼女は堰をきったように話し始めた。途中思いだして、言葉に詰まることもあったが、彼は決して急かさなかった。彼女が話し終わるまで、彼らは温かく見守っていた。

 この後誰しも予測できない展開になった。彼女の話を聞いた後、1人の男が逆上し始めた。

「何だ?その男は!?僕には君だけだよと言っておきながら、愛する人(膝枕)を自分の都合だけで捨てるなんて!ゴミだな。そいつ!僕がその男のところに行って、ぶっ殺してやる!だから膝枕ちゃん。男の住所を教えてくれ!」

 何と逆上しているのは優雨だ。顔を真っ赤にして彼女よりも怒っている。

「絶対住所は教えちゃダメだ。膝枕ちゃん!探偵事務所の存続の危機になる!」本気で事務所の存続の心配して優雨をとめるMr.Tと水都。そして暫くすると、水都が悲鳴をあげた。

 「く、苦しい。優雨。俺の首を絞めるな!」

 こりゃたまらたいと言った表情で水都が優雨の手を離した。 

「だいたいお前が怒っているのは、男だろ?何で俺がお前に首絞められなきゃいけないんだよ!」

 ごもっともな意見をいう水都。その光景を見た彼女は自然におかしくなって、あははははと笑った。そう言えばここ何日も笑ってなかったと言うよりは、笑う事を忘れていたのだ。

「優雨、お前はこの事務所で1番優しいじゃないか!こんなに逆上して俺の首を絞めるなんて?一体どうしたんだよ?

訝しげな表情で水都が尋ねる。その疑問を代わりにMr.Tが

「案外鈍感だな。水都。つまりそれはそれだけ優雨が膝枕ちゃんに惚れてる証拠だろ?正に恋は盲目なり!」と水都に説明した。そしてその次に膝枕ちゃんにMr.Tは優しく諭すように言う。今日のMr.Tは学校の先生ぽっい。

「これは仕事抜きで聞いてもらいたいんだ。人間って奴は時と場合によって、言葉と頭は間違えるものさ!特に異性の間ではね。絶対じゃないけど人は言葉より、行動を信じることだな。どんなに優しい言葉でも行動が伴ってなければ、だめだ!君には厳しい現実だけど、君を捨てたことが、男の本心だ。これは死んだお袋が俺に言ってたことなんだよ。年を重ねるごとに俺もそれを実感している。優しい言葉が正しいなら、世の中の詐欺師が全員いい人になっちまうだろ!まあー、人間じゃない俺が言うのもなんだけど、さっ」最後にちょっと笑いを入れるMr.T。案外いい奴なのかも知れない。膝枕ちゃんを含め、他の2人も暫く無言だった。そしてその沈黙を破ったのは優雨。襟元を正して、

「僕、これから膝枕ちゃんにプロポーズしてきます!」彼は真顔でMr.Tと水都を見た。その表情は真剣そのものだ」

「まあ、お前がそれでいいのなら」とMr.T。このままでは本当に優雨が男の住所を突き止めて、殺しに行きかねない。それならば結婚させた方がマシと考えたのだ。たださえ、このは不安定な環境で不景気で経営が厳しい。社員が問題を起こしたら、それこそ目もあてられない。水都はこの状況が理解できなくて困惑していたが、それでも同僚の幸せを願い、

「優雨の言動は全くもって理解できない。ただ応援するぐらいなら出来るので頑張ってくれ!」

水都は水都なりの最大限の優しい言葉で、優雨を激励した。確かに優雨を理解できる方はひざまくらーさんの中でも例外かも知れない。

「膝枕ちゃん、君を一目見た時から、なんだかほっとけない気持ちになって気づいたら君のことが好きになってた。純粋に1人の男性を愛すると君の自分を犠牲にしてまで、前に進もうとする勇気。今まで君みたいな女性には逢ったことはない。

You’re the most beautiful woman I've ever met

I love you bottom of my heart 

please marry me」

何と優雨は英語で膝枕ちゃんにプロポーズした。本人は不器用な人間で緊張するタイプなので、何を言ったか本人は覚えていない可能性もある。

「よく言った!優雨。何で突然の英語なのかは謎だが、心を打つプロポーズだ!」

と言って何故か?優雨じゃなくてMr.Tが嬉しくてガッツポーズをした。水都も無言で頷く。後は彼女の返事を待つのみ。

「でも強制は出来ないな。断るのも君の自由だ!」

「おーい、優雨。お前は正直過ぎる。そこまで言わなくてもいいと思うぞ」とMr.T。やれやれとも言った感じだ。

「でも君を必要としている男がいる。それだけは覚えておいてくれ。」

「膝枕以外の私をあなたが必要としているってこと?」

「ああ。そうだよ」当たり前だと言わんばかりに優雨が答える。

「今のところ膝枕以外はできないわ。そんなこと考えもしなかったもの」

「じゃあ、これからゆっくり考えればいい」

一般的に膝枕は膝枕なのだから、それ以外の機能を求める方が間違っているのだ。そう。今回のパターンは例外中の例外なのだ。

「僕は君が側にいてくれるだけで、充分幸せなんだけど、君が他(膝枕機能以外)にできる事を見つけてくれたらもっと嬉しい。それが何なのかは今の僕たちには、まだ分からないけど、一緒にそれを見つけていきたいんだ」

「あなたと一緒に見つける?」突拍子もない優雨の言葉に膝枕ちゃんは驚きを隠せなかった。暗く閉ざされていた彼女の心は、春の日差しに照らされたようにぽかぽかしてきた。それは今まで感じたことない感情だった。

「ドラクエやFFのRPGのように、少しずつ2人でレベルアップして幸せになりたいんだ。だめかな?」

 2人で幸せを探して、作っていこう。何て素敵な言葉なのだろうか。私はそんな風にプログラミングされていないので、今すぐには無理だけど、優雨と私の幸せ(私たちの幸せ)が見つかられるかもしれない。優雨と一緒なら。

「私、あなたと結婚します」きっぱりと力強く、彼女は言った。

「今の私には結婚はどういうものなのか、よく分かりません。恋愛してから結婚するパターンがあるなら、結婚してから、恋愛してもいいですよね?

満面の笑み(少なくとも優雨にはそう見えた)で彼女が答える。

「ああ。勿論だ」

「ただし優雨さん、私があなたを愛せなかったら、あなたを捨てることがあるかも知れません」 

「ああ。その可能性は否定出来ないな。少なくとも僕はそうならないように努力するし、そうならない事を願うよ!」

あっさり言う優雨。

「あ・き・ら・め・る?」これには彼女も驚いたようだ。(作者も驚いてます?笑) 

「うん。僕は君が好きだからね。君の意見を尊重するよ。何故なら愛は相手を自由にすることだから。人は時々勘違いするんだ。束縛と愛をね!束縛はエゴ。一方愛は真逆。愛する人を自由にする事だと僕は思っている」

ここで優雨はコホンと咳払いをする。

「多少理屈ぽっい僕だけど悪い奴じゃないから。今後ともよろしく!」

「はい。こちらこそよろしくですわ」

「という事で僕達、結婚しました」

「ずっーっと出逢いからプロポーズまで一部始終見てたから言わなくても分かるぜ。なあ、水都?とMr.T。

「はい。2人が幸せならMr.が言うように、それだけで充分だと思う。探偵事務所で2人が出会って、数時間後結婚したなんて、前代未聞じゃねーか!事実は小説より奇なりって本当なんだな!

水都がまじまじと優雨とRAIN(膝枕ちゃん)を見つめて言った。

「あ、1つ大事な事言い忘れてた。僕らは数時間前に出逢ったばかりなので、プレゼントを買う暇はなかった。でも君にプレゼントしたいものがあるんだ」

「優雨さん、何も持ってないじゃないですか?どこにプレゼントがあるのですか?」と優雨が答える前に彼女が言った。

「それは名前だよ。な・ま・え 僕達結婚するんだから、名前があった方がいいと思うんだ。」

「ええ?名前?」

困惑する彼女。自分の名前なんか思いもよらなかった。昨日は最悪で地獄。今日は最高で天国。まるでジェットコースターにでも乗っている気分だ。

「雨の日に出逢ったから、RAIN(ライン)でもレインはちょっと呼びづらいので、今から君をレイと呼ぶことにする」

「雨からRAIN。RAINからレイ」

初めて名前をつけられて嬉しくて、繰り返して言葉にするレイ。

「実は名前ってロマンチックなんだよ。万葉の時代は名前には霊魂が宿っていると考えられていて、名前を言いあうだけで、結婚が成り立っていたんだ」

「レイン。レインからレイ。それが私の名前。素敵な名前をありがとう。優雨さん」

ここからお礼を言うレイ。

「良かった。気に入ってくれて。実は僕の名前から一文字取ったんだよ。優雨には雨の文字があるだろ?」

「優雨にしては、なかなかロマンチックじゃないか」と水都。

「かっこつけすぎだぜ!優雨」Mr.Tもふざけて優雨をからかう。

そう。ここはほのぼの探偵事務所。訪れる人の心を癒し、不思議に幸せな気持ちになります。

 数日後優雨と結婚したレイが、

「そう言えばMr.Tの本名って何なのですか?」

と優雨と水都に素朴な疑問を投げかけてきた。優雨と結婚した彼女はほぼ毎日、探偵事務所に出勤している。優雨と少しでも離れてると寂しい気持ちになるそうだ。はい。好きにして下さい。(作者の心の声)

 「知らねーよ。そんな事。考えたこともなかったな。Mr.TはMr.Tだろ!」面倒くさそうに答える水都。

「うん。特にMr.Tの本名を知りたいと思ったことないので、僕も知らないな」いつもの口調で知らないことが当たり前のように優雨が言う。

聞こえないフリをするMr.T。

社長の本名がわからない会社だと知って、この先一抹の不安を感じる彼女。

頑張れ!レイ!

頑張れ!ほのぼの探偵事務所!

 きっと幸せになれるはず‥‥。 

 すっかり雨もあがって、穏やかな午後。いつも通りの優しい時間が流れていく。

 《完》

最後まで拙い文章を読んでいただき、本当にありがとうございました。

冒頭に描いたように今回は、最初は嫉妬や人間の負の感情について書きたいと思ったのですが、感受性が無駄に豊か過ぎるので、本来もっと膝枕ちゃんには過酷な設定をしてました。でも書いてる途中で、私がレイに感情移入してしまい、段々悲しくなってきてしまって書くの断念してしまいました。ごめんなさい。

気がつけばとてもhappy なお話を自然に書いてました。英語のプロポーズも咄嗟に頭に浮かんだものです。

この物語を読んで、少しでも笑っていただけたら、嬉しいです。











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