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Jazztronik「Samurai」を語る:『七色』、ライブ、生音の魅力

音楽との出会いが人生の節目になることがある。
私にとってそれは、20年以上前に参加したJazztronikのイベントだった。
フロアを満たす空気がふっと変わり、音の粒が身体の奥に届いてくる――
あの瞬間、“新しい扉が静かに開いた”ような感覚を今でも覚えている。

そこから時が経ち、ライブに足を運ぶようになった。
スタジオ音源で感じた“音の重ね方の巧さ”に加えて、
生演奏の場で初めて理解した“音の引き算の美しさ”。
Jazztronikは、音を足すのも引くのも驚くほど自然で、
その“間”に込められた感情がいつも心を揺らしてくる。
そんな長い年月の中で、気づけば何度も立ち返ってしまう曲がある。
Jazztronik「Samurai」――聴くたびに新しい表情を見せ、
まるで“時間とともに深度が増していく音楽”だ。

Jazztronikという“存在


Jazztronikは、プロデューサー/ピアニストの野崎良太を中心とする音楽プロジェクトだ。

ジャンルとしては“クラブジャズ”と紹介されることが多いけれど、実際に聴くとその枠には到底収まりきらない。
ジャズ、クラシック、ハウス、ラテン、ソウル、エレクトロニカ……
色んな要素が一曲の中で自然に混ざり合っていく。
強引に足し算しているのではなく、流れに逆らわずに音が育っていくような感覚がある。

そして特筆すべきは、“音の積み上げ方”の美しさだ。
ピアノ、ビート、シンセ、ベース、パーカッション……
少しずつレイヤーが増え、いつの間にか曲の景色が大きく変わっている。
これがまた、野崎良太にしかできない職人技やと思う。
ただ、ライブで向き合うと全然違う景色が見えてくる。
足し算だけじゃなく、音を引く勇気がある。
音数を思い切って減らすことで、逆に空気が濃くなる瞬間がある。
その“間”に漂う温度や緊張感が、Jazztronikを唯一無二の存在にしていると思っている。


初めて参加したイベントで“音に飲まれた日”


私が初めてJazztronikのイベントに行ったのは、もう20年以上前だ。
クラブの照明が落ち、最初のビートが鳴った瞬間、空気が少し揺れた。
知らない音が、自分の中の知らないスイッチを押したように感じた。
それまで音楽は“聴くもの”だったけれど、
その日から“体験するもの”に変わった。
あの出来事は、今振り返ると自分にとってひとつの分岐点だったと思う。


ライブに通うようになってから気づいた“引き算の美学”


15年ほど前からは、Jazztronik(野崎良太)のライブの頻度がぐっと増えた(気がする)。
最初はただ“かっこいい音を浴びに行く”だけだったのが、
段々と演奏の中にある“表現の緩急”が見えるようになってきた。

・音をふっと抜いた瞬間の緊張感
・ピアノが一音だけ強く響く身体感覚
・リズム隊のタメ
・静けさが逆に曲の輪郭を際立たせる瞬間

ライブを何度も重ねると、
“音が少ないほうが、むしろ強く心を掴むことがある”
という当たり前の事実に気づく。
Jazztronikは、その瞬間の作り方がとにかく上手い。


「Samurai」が収録されたアルバム『七色』との出会い


「Samurai」との関係も、この流れの中で深まっていった。
この曲が収録されているのは、アルバム『七色』
初めてこのCDを聴いたとき、一番耳をとらえたのはタイトル曲「七色」だった。
メロディラインがすっと心に入ってくるキャッチーさがあって、
「これは長く聴き続けるアルバムになりそうだ」とすぐ感じた。

でも、何度も聴き返しているうちに、
“じわじわ存在感を増してくる曲”があった。
それが 「Samurai」 だった。
派手に主張しないのに、
時間をかけるほど深度が増していく。
まるで、聴くたびに新しい層が見えてくる音楽。
私はこの曲を、
“時間とともに輪郭を変えるタイプの音”
と勝手に呼んでいる。


初回限定盤の特典CDと、4枚の12インチ


『七色』の初回限定盤には、「Samurai」のライブバージョンCDが付いていた。
当時はすぐに完売して、特典だけでも価値がつくほど人気だった。
スタジオ版の整った構成とは違い、
ライブ版はその場でしか出ない呼吸やニュアンスが詰まっている。
このギャップがたまらなかった。
さらに、アナログ好きの宿命として……

12インチの“Samurai”を4枚持っている。
レコードは針と盤が触れ続ける以上、どうしても摩耗する。
高域が落ちたり、ノイズが出たり、音の定位が変わったり。
だから、好きな曲ほど“予備”が必要になってしまう。
人に話すと驚かれるけれど、
自分にとっては自然な判断だった。


時間が経つほどに、この曲の「意味」が変わる


20年以上追いかけてきて思うのは、
音楽って、人生のステージが変わるたびに聴こえ方も変わるということだ。
「Samurai」は、年齢や経験が増えるほど、
曲の奥にある“静けさの強さ”がよく見えるようになってきた。
若い頃はただの高揚。
少し大人になると、積み重ねの美しさ。
さらに時間を重ねると、引き算の勇気。
音楽ってこんなに変わるんやな、と
この曲に教えられた。


最後に


もし、まだ「Samurai」に出会っていないなら、
ぜひアルバム『七色』から聴いてみてほしい。
この曲は、即効性のある刺激ではなく、
時間とともに香りが変わるような音楽だ。
そして願わくば、
あなた自身の音楽人生に“新しい色”をそっと落としてくれたら嬉しい。


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