TOPセレクション『Don't think.Feel.』感想 @東京都写真美術館
東京都写真美術館で『TOPセレクション Don't think,feel』を観た。
僕は写真家のくせに写真の展示をあまり観に行かない。正直に言うと写真より絵画を観ることの方が好きだし、観に行きたいと思える展示があまりない。またフラッと観に行っても面白いと思うことがあまりない(写真系の人を敵にしてしまいそうだが…)。
ただし写真どうこうというか、基本ある程度一定の評価や価値が与えられているものをお金を払って観に行く事が多いので、必然的にそういうものは絵画であることが多いという理由もある。
今回久しぶりに写真展に足を運んだ理由は「感触」や「感じること」が展示のテーマだったからだ。これは僕自身が単純に「触覚」に関心があるから。ちなみにこのコレクション展のタイトル、アラフィフ以上のおっさんはすぐにビンと来たと思うが、『燃えよ!ドラゴン』のブルース・リーの有名なセリフ「考えるな、感じろ」から来ている。
絵画は特に印象派以降、二次元芸術だった絵画に絵具のマチエールを敢えて出すことで物質性という新たな要素をもたらした。写真はそういうやり方で物質性を出すことが出来ない代わりに質感も含め現実をコピーする事で物質性と関わる事が出来ると思っている。
質感がわかるほどの写真を観ると脳が過去の触覚経験を呼び起こし触った時と同じ反応を起こす。つまり写真を観ることは鑑賞者に視覚と同時に触覚も刺激させる事が出来るという事だ。
展示は全て触覚的な写真ばかりではなかったが、改めて写真って面白いんだなと再確認する事が出来たたげでも観に行った甲斐があったと思う。また襟を正された気分にもなった。
エドワード・ウェストンは僕が岩のシリーズを撮ったあたりから意識していたが、今回の岩の作品は初めて観た。今まで観たウェストンの中で自分が撮ってた岩のシリーズに一番近いかも。

また細江英公のガウディの建築の壁面の一部を切り取った作品などそのまま抽象画のようでなおかつ形から柔らかなイメージを感じさせるというアプローチも自分がやりたかったことに近いものを感じた。
柴田敏雄はやはりシビれる。僕は基本手に届く範囲のものしか触覚は脳で刺激されないと思っていたが、スローシャッターで撮られたダムから流れ落ちる水は独特の滑らかな質感で表現されていて実際の水とは異なる触覚を喚起させる。

吉野英理香という写真家の作品もどうなっているのかよく分からないけどイメージとして面白いと思える作品だった。

「feel」もテーマなので結構何でもありの展示になっていて家族写真のコーナーもあった。植田正治の作品はビジュアルの印象が強いから見落としがちだけど家族写真でもある事を改めて気付かされた。
深瀬昌久の家族写真、どれも本当に凄い。特に父親と二人で撮った写真は物凄い写真だ。あの二人がいる空間が写真館であることを忘れてしまうようだった。しかし深瀬さんの写真ってどんなジャンルでも写真の本質を見せられてるような気分になる。この家族写真は「かつて、そこに、あった」という写真が持つ記録性の残酷さだろうか。

いまや大御所になった川内倫子だけのコーナーがあった。確かに「feel」というテーマにはピッタリだ。川内の写真を観ると、大きいプリントで観ていることも影響しているかもしれないが、光が質量を持った物質であるという感覚を強く感じる。

その後は路上スナップの名作が続く。個人的には小林のりお氏の作品に惹かれた。時代は違うのだが僕が住んでいる多摩丘陵の工事現場が被写体になっているし、僕自身今だに続いている多摩近辺の工事現場を時々撮影することもあるため既視感や視点の近さを感じたからだ。
小林氏は多摩ニュータウンをニュートポグラフィック的に撮影しているので路上スナップでは無い。また、恐らく8×10で撮影されているのではないかと思うのだがどうだろうか?
8×10のカラー写真を大きく引き伸ばした作品って古い写真なのに、まるでその時代の空間を真空パックしたみたいに今その場所に立っている様な感じになるのだ。小林氏の作品はそれを感じた。
最後の「イメージの奥にひそむもの」は森村泰昌氏の作品が圧巻。チャップリンの『独裁者』のパロディだけど、この作品に限らず森村氏の作品はまさに「神は細部に宿る」の実践。大阪人らしく一見オモロ作品だが氏の作品を観ると、どの作品も画面の端っこに至るまで1ミリも妥協がなく、そこに狂気すら感じる。こんなに面白く、なおかつ写真を現代アートまで引き上げられるって凄い。
全て書ききれなかったが面白い展示だったと思う。何枚か貼っておく。嬉しいことに若い人も沢山来ていた。
写真はまだ何か面白い事をやれるのだろうか?そのためには沢山良いものを観て、写真やアートの事を学ばないとな。

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