自叙架空#162
二千五百年前にバベルの塔を建造したのは自分だ、と言い張る老人がうちの近所に住んでいる
白い顎ひげを地面に着くほど伸ばしたその老人は、うちの町内では『仙人』と呼ばれている変わり者で、百五十年前に受けたサグラダファミリアの建築の依頼は断った、と言っていて、その風貌から私は『仙人』ならどちらのエピソードもあながち嘘ではないのではないかと密かに思っていた
ある日『仙人』が自宅の庭で自身の愛犬の犬小屋を造っているところを見かけたので、私は伝説の建築士の腕を間近で見るチャンスだと思い立ち止まると、『仙人』は犬小屋の屋根に釘を当てて金槌を振り上げ、気合と共に振り降ろしたところまでは良かったのだが、金槌はまるで見当違いの横のポリバケツを叩いてしまい、そこで視線に気づいた『仙人』が「わざとじゃ」と私に向かって言い訳をしたものの、その厳かな口調とは裏腹に『仙人』の両耳は恥ずかしそうに赤く染まっていた
コウ
