僕が好きなのは“そこ”にある哲学や思想の部分だって気づいた話。あるいは擬態の美学
たとえば、一言に「ファッションが好き」といっても、自分はその思想(philosophy・value)や概念(concept)の部分に惹かれるのだなと確信した。
服そのものが好きで、どう服を着飾って、どういう自分を表現したいか、あるいはどういうふうに他人から見られたいか。
そういうことより目に見えない部分、何が人をそうさせるのか、突き動かしていくのか、社会・歴史的に見てその現象はどういう潮流のもとにあるのかなどなど。ちょっと抽象度高めのことが気になるし、好きなんだろうなと。
よく気分転換に本屋に行くのだけれど、そこはあらゆる情報や記号が溢れる世界。いろんなジャンルの本や雑誌がこれまたいろんなカテゴリーに分けられて並べられている。
時間があれば棚の隅から隅までジャンル関係なしに見てしまう性分。元から読みたかったものもあればタイトルや装幀が気になってて手にするものもある。本屋ってさながら情報や記号の百貨店だと思っていて、そこをふらつくだけでも頭がすっきりしたりアイデアが浮かんできたりする。
ファッションやデザイン、アートや文芸に写真など、そういう文化・サブカルチャー的なものは大好物なので、それに関する本や雑誌はけっこう立ち読みする。もっと熟読したくなったら購入する。ファッション誌やライフスタイル誌に載った夏服コーデを見れば「こういう服欲しいな」「こういう格好好きだな」と刺激をもらう。ちょっと消費欲が起こる。
でも、だからといってお手本にあるような服を買いにいくかといえばそんなこともない。それは昔から変わらない。
高校生で服装に興味を持って以来、自分はファッション好きなんだと自認しているつもりでいた。だけど、だからといって自分は自他ともに認めるオシャレなのかといえばまったくそんなことはない。服や靴や鞄たちが何か一流ブランドのものであったり、古着を中心にハズしや抜け感を演出するようなこともない。他人から見ていたって「普通」な感じだと思う。良くいって「ああ、服好きそうだね」くらいか。
それに服が好きだからといって販売員やプランナーやデザイナーのような服飾業界で働こうなんても思ったことはなかった(ちょっとだけライフスタイルショップでアルバイトをしたことはあるが)。
ただ、服飾に関わる人が著者の本、あるブランドを深堀した本、ファッションを哲学したような本については、昔からよく購入したり図書館で借りたりしていた。あるブランドを築いた創設者がどんなことを考えていたのか、どんな生い立ちがあったのか。服そのものはどんな機能を持っているのか、服を着ることにはどんな意味があるのか。
なんだか、それを知ってどうなるの? それって役に立つの? とでもいわれそうなことばかりが気になるのだった。
今日本屋に行って同じようなコーナーをふらついててやっと気づいたのだった。ああ、そうかって。自分はファッション好きだと思っていたけれど、オシャレでも根っからの服好きでもないのは、ファッションデザイナーやブランドを構築する人たちの考えや時代の潮流、歴史的背景のほうに惹かれるからだと。自分が好きだと思っていることは、ファッションに関わる人の思考や思想のほうだ。
実はこれ、他のジャンルにも当てはまることなのだ。映画にしても写真にしてもデザインにしてもなんでも。
グラフィックデザインも好きだし、好きなデザインの傾向や好きなデザイナーさんももちろんいる。けれど、本屋で手にしてしまう本ってだいたいデザイン論みたいな誰か・何かのデザインについて論じているものがほとんど。あるデザインに見え隠れする考え、それをやった人がどういう考えを持って実行したのか、その人自身はどんな背景を持っていたのか。そんなことが客観的に、あるいは対象に同化するかたちで綴られている。そういうものを手にしがち。
要するに、何か自分の好きな分野でもそれをした人、そこに関わった当事者たちのことが気になるのだ。そして、その中に自分も仲間として加わりたいと思っている節がある。極論、彼ら彼女らになりたがっているのかもしれない。それらの作品や格好を真似るよりも、その人たちに擬態するというか、その人たちを模倣するというか。さながらカメレオンのようにして。自分が「そこにいる」にいることの疑似体験、あるいは自分がそこの位置、似たような存在になりたいという願望。そんな自分を感じ取る。
でもさ、じゃあそういう哲学だの思想だのの部分が気になっていろんな本を貪ったり、いろんな知識蓄えたからって、何かがわかるのかといったら全然そんなことはない。そして、自分がかの憧れた人たちのようになっているわけでもない。わからないことが増え続け、かえって自分の無知や頭の堅さが浮き彫りになる。
だからといって、この好奇心がなくなることはないんだけどね。
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