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第5話|中国就活記録〜元三菱商事の恩人との出会い〜

語学留学を終えた俺は、中国での就職を目指していた。異国の地で、自分の努力が試される。そう思っていた。

「過去を乗り越えて、新しい人生を歩みたい」

だけど、現実はそう簡単にはいかなかった。

履歴書という紙だけで判断された悔しさ
就職活動を始めてすぐに思い知ったのは、学歴の壁だった。
中国でも「大卒以上」が求められるのが当たり前。
何社も応募したが、履歴書を見ただけで面接すら受けさせてもらえなかった。

「すみません、今回は条件に合いません」
「大卒以上が基本なので…」

名前も顔も知られず、ただ「中卒だから」という理由だけで、門前払いされる悔しさ。
努力して学んだ中国語も、現地での生活経験も、全部見てもらえない。

“またか”と思いながらも、諦めるわけにはいかなかった。

でも出会いは、突然だった
そんなとき、ある小さな日系企業の面接を紹介された。そこにいたのが、俺の人生を変えることになるひとりの男だった。

彼は、元三菱商事。
大企業でバリバリ働いていたが、合理性を追求するあまり、会社の文化に違和感を抱き、現地法人へ転職してきたらしい。

履歴書を見て、彼は眉一つ動かさなかった。

「学歴?そんなことは正直どうでもよいです」
「君、仕事やる気ありますか?」

その瞬間、胸の奥が熱くなった。

“合理主義”の徹底ぶり
その人は、とにかく合理的だった。

残業は悪。
「残業をして電気やクーラーの無駄遣いは、利益を削るだけ」と本気で言っていた。
「太ってるのは歩くセクハラ」なんて、冗談か本気かわからないことも平気で言う。

でも、言ってることはいつも“筋が通っていた”。

仕事の優先順位、時間の使い方、報告・連絡・相談の意味。すべてが明確で、ビジネスの基礎として説得力があった。

社会に出て初めて「仕事ってこうやるんだ」と実感した。

本気で育ててくれた人
入社してからは、毎日が学びの日々だった。
営業も通訳も資料づくりも、すべて任された。
ミスをすれば叱られたし、甘えは一切通用しなかった。

だけどその人は、俺を見捨てなかった。

「君ならできる」
「ガンガンやってみなさい。失敗しても良い」
そう言って、いつも背中を押してくれた。

彼は一度も、俺に「学歴」のことを言わなかった。
むしろ、「そんなもん、気にするだけ無駄」とまで言ってくれた。

恩人と呼べる人に出会えたということ。この人に出会えてよかったと、心から思っている。

当時はわからなかったけど、
厳しさの裏にある“本気の期待”と“育てる覚悟”を、今なら理解できる。

彼から学んだ仕事の考え方、人との接し方、合理性と熱意の両立。すべてが、今の自分の根っこになっている。

最後に
あの頃の俺は、中卒で、面接すら受けさせてもらえなかった存在だった。でも、自分の今を信じて、行動し続けた結果、恩人と呼べる上司に出会えた。

「学歴なんて、俺は一言も聞いてない」
そう言ってくれた彼の言葉は、今もずっと心に残っている。

誰かが本気で信じてくれたから、今の俺がいる。
それが、人生で一番ありがたかった出会いだった。

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