侵攻前ゼレンスキー氏はなぜ和平のために行動しなかったのか
2022年2月24日ロシアはウクライナへ侵攻しましたが、それより前、国境近くにロシア軍が終結していました。それについては、ウクライナ側だって知っていたでしょう。
それなのに、なぜゼレンスキー大統領は、プーチン大統領と直接交渉するなり、他国に仲介を頼むなりしなかったのでしょうか。
ロシアの行動は単なる脅しであり、同国軍が実際に侵攻することはないと考えていたのでしょうか。
確かに、多くの識者や専門家たちは、ロシアの侵攻はないと予想していたようです。
しかし、一方、2022年1月27日バイデン米大統領はゼレンスキー氏との電話協議で、「ロシアが来月ウクライナに侵攻する『確かな可能性』があると警告」(注)しましたし、米国家安全保障会議のエミリー・ホーン報道官は、「『彼(バイデン氏)はこのことを公言してきたし、私たちはこのことを何カ月も前から警告してきた』と述べた」(注)。
また、東野篤子筑波大学教授は、『正論』2023年3月号の対談で語っています。
「私はウクライナやバルト諸国やポーランドといった諸国の研究者との付き合いが多く、彼らは『ロシアはやる気だ』と一昨年(2021年)末ぐらいから絶望視していました」(155頁)
バイデン氏が警告を発し、東野氏のような、軍事の専門家ではない一般の学者でさえ、「ロシアはやる気だ」と「絶望視」していたのに、ゼレンスキー政権がロシアの侵攻を予想しえなかったというようなことがありうるでしょうか?
ロシアの侵攻はあるだろうと考えた、けれども、和平のための行動をとらなかったと推測するのが自然でしょう。
なぜゼレンスキー政権は、和平のための行動をとらなかったのでしょうか。
ロシアに勝てると判断したからではないでしょうか。
2014年のマイダン革命とクリミア併合の後、米英軍によってウクライナは軍事強化されましたが(メルケル前独首相の「ミンスク合意はウクライナ軍を強化するための時間稼ぎだった」発言)、米英によって兵器や戦法が近代化されたウクライナ軍は、ロシア軍に勝てると信じたからではないでしょうか。
あるいは、背後に米英を中心とするNATO・EU諸国が付いていて、経済的・軍事的な支援が期待できるし、彼らの対露制裁も遠からず効果が現れるだろうから、侵攻を跳ね返すことができると信じたからではないでしょうか。
ヤフーコメント欄に某氏は書いていました。
「(ゼレンスキー氏の)側近たちによると、ロシアの侵攻があると、ウクライナ内は「数週間では無理でも数ヶ月で勝てる」「英雄になれる」と浮かれていたのだと言う」
この情報は確認できていませんし、その真偽は不明ですが、そして、戦後何れその真相は明らかになるだろうと思いますが、「状況証拠」から言って、ゼレンスキー政権はロシアに勝てると信じていたから、侵攻前和平のために奔走しなかった可能性が高いのではないでしょうか。
たぶんウクライナは勝ちを見込んで、受けて立った訳ですから、この戦争において、同国が一方的な被害者だと考えることはできないだろうと思います。
(注) 「バイデン氏、『ロシアが2月侵攻の可能性』ウクライナ大統領に警告」
