見出し画像

石破さんに心折られるファッション広告ディレクター(前半)

最近、新しい部下に心折られることが多い。
(仮に石破さんとする)

「石破さん、このレポートは13時までにまとめてください、分からないことがあったら何でも言ってくださいね」僕はそう言い残して別の部下とのランチミーティングへと急ぐ。

さてさて14時を過ぎたが一向にレポートが上がってこない。

「石破さん、レポートの件ですが」

ああ孝輔さんちょうど聞こうと思ってたんです、レポート作成に必要な元データの1つが文字化けしていまして。

「あ…ええと、納期の13時をだいぶ過ぎてますよ石破さん。いつ、そのことに気づかれました?」

つとめて穏やかに彼に伝える。
文字化けを修復する方法について僕に質問することができなかったのかもしれない。

僕は石破さんから上がってくるレポート内容をチェックして、その内容に応じて取るべき対策を各方面に指示するための時間を30分とっているのに。
頼んだレポートが出来ていないどころか、そもそも着手もしていないというのか…

時間が、刻一刻と失われていく。僕の指示を待っているエディトリアルチームと広告チームにグループメンションを送る。

「お疲れ様です、孝輔です。春の新生活キャンペーンのレポート、諸事情で遅れています。広告ターゲットの修正と日予算の調整を14時半にお願いする予定でしたが、16時頃になると思います。できるだけ早く送りますので、今しばらくお待ちください。申し訳ありません。」同様に、エディトリアルチームにもキャッチコピーと広告イメージの修正指示が遅れることを詫びる。

そもそもノー残業を前提にスケジュールを組んでいるのに、彼らを残業させると彼らのタイムラインを狂わせてしまうし、人件費の無用な増大に対する会社からの締めつけも、とても厳しい。スタッフのモチベーションも下がる。エディトリアルの敏腕Rさんが僕のデスクに近づいてきた。振り向かなくてもわかる。愛用する香水が彼女のオーラのような空気を連れてくるから。
「なぁに、Rさん」振り向いて僕は言った。

あのぅ…孝輔さん、
ご指示が遅れているようなのですが、わたし保育園のお迎えがあるので、このあとの仕事をサポートできなくて。では。お先に失礼します。
と言い残し、エレベーターホールへと足早に消えていく。
彼女はなにも悪くない。ただ、彼女の穴を埋めるタスクを誰かに頼まなければならない。僕はため息をつきたくなるのをグッと堪えてスラックを開く。在宅勤務のTさんにメンションを送る。「Tさんお疲れ。いま時間ある?」瞬時に、画面の下に「Tさんが入力中です…」の文字が浮かぶ。僕は祈るような気持ちで返信を待つ。「孝輔さんお疲れー。わたし元ファイルいじれないけど文字修正とかならギリいけるかもー。」

「ありがと、助かる。16時までには指示出し送るから。恐らくそんな大きな修正には、ならないと思う。バックグラウンドカラーをワントーン落とすとか、キャッチコピーの文言を少しだけ変えてもらうとか」

「りょうかい、だったら30分ぐらいでリバイス送るねー。ファイル形式は.pngだったよね?」ありがとう。そう、この前送ってくれた画像ファイルと形式一緒。めっちゃ助かる、ありがとう。

「いっこ貸しですよー孝輔さん」そう言って彼女はまたオフラインに沈んでいった。チームランチ補助の上限はとっくにオーバーしている。今日の埋め合わせのチームランチは自腹になるな…

(前半ここまで)

いいなと思ったら応援しよう!