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witty_roses910
【詩】たしかめて。静かな夜に
夜風が吹く。
それだけで
きみの名前を
思い出してしまう。
窓の向こうの灯りが
ひとつ、
またひとつ、
きみになっていく。
困るなあ。
世界はこんなに広いのに、
僕の夜だけは
きみで満ちてしまう。
息を止める。
そうすると
胸の奥で
会いたい、
が
小さく鳴る。
星はきれいだ。
泣きたくなるほど
きれいだ。
けれど今夜の空は
ひとりの人を想う心に
勝てない。
遠い。
ほんとうは
とても遠い。
それなのに
振り向けば
そこにいる気がする。
隣の椅子に。
読みかけの本の向こうに。
静かに眠る夜の中に。
言葉にしたら
壊れてしまう。
朝露みたいに。
触れた指先から
消えてしまう。
だから言わない。
言えない。
ただ、
風が吹いて、
胸が少しだけ痛くなって、
きみを想った。
その一瞬だけで
僕は生きていた。
(おしまい)
