【小説】天仕の少女と魔人の少年の物語 前編 第十二話 質問
第十二話 質問
「話はこれくらいだが、何か質問は?」
「・・・貴方の歳はいくつ?」
「こんななりだが、19だ。魔力量が多いせいか身体の成長が遅くて。今回は叔父上の力をいただいて少し成長がうながされたのだ。まだ実年齢には満たない見た目だがな。そなたは?」
「16よ。」
思ったより年上だった。会った時は私の弟と同じ14歳くらいに見えたのに。
「他には?」
「私を生かしておく理由は、私の一部を取り込むことによって、貴方の病を治すことができるから?」
「そうだ。だから、定期的にそなたの血を摂取することを見返りとして要求した。今のところ、そなたの血や魔力を摂取すると、病の発症がない。また、発症していたとしても自傷衝動を抑えることができることは検証済みだ。」
「こんな面倒なことしなくても、私を処分してしまえばいいのでは?そして、その肉なり血なりを保存しておいて、定期的に摂取すればいい。」
「・・・そなたは。」
彼は、私の方を見ると、何か言いかけて口ごもった。その後、思い直したように言葉を続けた。
「たとえ、そなたを処分した後に捕食したとしても、病が治るかどうかは分からない。それにその方法では、すべて食べつくしてしまったら、また病が出るだろう。私は、可能性をつぶしてしまうよりは、病を治す手段を得ることを優先するだけだ。」
「私が家族の元に帰ったら、同じことになるのではないかしら?」
「前にも言った通り、帰り道を見つけるのはとても困難だ。きっと、帰り道を見つけるより先に、病を治す手段が得られるだろう。」
「他に質問がないのなら、私からそなたに質問をしてもいいか?」
私がコクリと頷くと、彼は口を開いた。
「なぜ、そなたはここに来た?」
「それは、帰り道を探すため・・。」
「そうではない。聞き方が悪かったな。そなたが最初この地で怪我を負って墜落した時、そなたは襲撃を受けたと言っていた。天仕は、この魔人の住む地には本来近づかない。そなたは、なぜこのユグレイティの地にくることになったのか?それが聞きたい。」
「私は・・。」
これは話してしまってもいいものだろうか?でも、彼も自分のことは全て話してくれた。
私が辺りを見回しているのに気づいたのか、彼は私に向かって顔を近づけた。
「他の者に聞かれることを心配しているのか?不寝番はおらぬし、何よりこの部屋には結界が張ってある。音は外には漏れぬ。」
「・・私には、人間の血が混ざっているの。」
「同じ人型の種族だし、それぞれが住む地に行けないわけでもないのだから、血が混ざることもあろう?」
「天仕は血統を重んじるの。だから、純血統種以外の者は、迫害の対象になる。同じ天仕の住む地に住んでいるけれど、中心地からは外れているし、事あるごとに純血統種から嫌がらせを受けるの。私には、弟が一人いるのだけれど、弟が側にいる時は、私を守ってくれた。弟よりは私の方が嫌がらせを受ける率は高かった。たぶん、私が女だから侮られていたのかも。」
「・・・。」
「あの日、私は、人間の住む地に行って、狩りをする予定だった。回復薬の素材が欲しかったの。弟は別の用事があって一緒ではなかった。そして、途中で天仕の集団の襲撃を受けた。逃げ回ったのだけど、相手の人数が多くて、攻撃を避けられなかった。そして、ユグレイティの地に落下したというわけ。」
「その天仕が純血統種だったと。」
「顔を隠していたから、はっきりとは言えないけど。」
「はっ、ばかばかしい。血統など何の力もないではないか。」
彼が鼻で笑う。力が全てのこの地では、血統など関係はないのだろう。でも、力のない者は私たちと同じように虐げられているのではないかと思わなくもないけど。
「そのようなところに帰る必要はあるのか?」
彼の問いに私の身体は強張った。
「家族は良くしてくれるもの。」
そう答えつつも、私は向こうにいた時、なぜ、父母は私を助けてくれないのかと思っていた。いつも心配はしてくれる。でもそれだけなのだ。弟は私を守ろうとしてくれていたのに。結局、私は襲撃されてここに来る羽目になってしまった。
視界がじわっとにじんだ。
「そなたがここにいたいなら、いてくれてもかまわないが。」
私が彼の顔を見ると、彼も私の方をじっと見つめる。
「・・本気?」
「私はそなたが側にいてくれれば、少なくとも病の発症がなくなる。自害することなく、魔王の責務を全うできるだろう。私の目的は果たせる。」
「・・・。」
「そなたにとっては、私の庇護下という安全な居場所が手に入る。もし、何か欲するものがあれば、定期的にもらう血の見返りと称して、渡してもいい。不都合があるとすれば、家族に会えないことと、天仕であることを明かせないことくらいか?」
彼の話を聞いていると、私がここにいる方がいいような気がしてくるから不思議だ。
「家族以外に大切な者がいたりするのか?友とか、思い人とか。」
そんな人がいたら、私はここまで彼の言葉に揺り動かされていなかっただろう。
「いないわ。私には家族だけ。」
「なら、少し考えてみてはどうだ?帰り道はすぐには見つからないだろうから。」
彼はそう言って、私の頭を撫でてくれた。
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