12/25の日記 【無題のクリスマス】
//今朝、目を覚まし、スーツに着替え、食卓につく。白米、味噌汁、少し甘い玉子焼き。味噌汁の具にはもやしとわかめと豆腐が入っている。そんな、いつも通りの朝ごはん。
エプロン姿で目の前に座ったのは付き合って半年ほどになる彼女だ。
12月に入ってから同棲をし始めた。正直、自分は同棲に賛成ではなかった。しかし、ただただ彼女からの圧に負けた形で同棲が始まってしまった。
同棲を始める前までは、
「他人と一緒に生活をするなんて息苦しいだけじゃないか」
「自分だけの城だから、心地良いんじゃないか」
なんて思っていたが、生活をしていると案外この生活も悪くない。
思っていたよりも早い段階で、この状況に順応している自分がいた。
//「ねぇ、今日はクリスマスだよ?」
黙々と朝ごはんを食べていたら、彼女が唐突に話しかけてきた。
「今日、クリスマスだよね?ずっと前から、一緒に過ごそうねって話してたじゃん。なのに、どうして休まなかったの?」
「昨日はまぁしょうがないかなって思って何も言わなかったけどさ、イブだし。」
「でも、今日ぐらいは休めなかったの?約束、忘れちゃった?」
約束……。していたような気がしないでもない。けど、当日に急に仕事を休むなんて出来ないし、諦めてもらうしかないだろう。これでも、一緒に同棲をしていて、その柱に自分はなっているわけだし。彼女を大切にしていないわけじゃない。
『大丈夫、覚えてるよ。でも、ごめん。最近同棲を始めたばっかりだし、今後のためにもお金は貯めておきたいじゃん?キミのためにも。』
『同棲、始めて良かったって思ってるよ。キミが勧めてくれなかったら、体験することも無かったと思うし。』
『ありがとう。』
『だから、本当にごめん。今日は申し訳ないけど、仕事に行ってくるね。』
『しっかり仕事頑張って、帰ってくるからさ。』
そう言うと、彼女は理解してくれたようだった。すこしだけ落ち込んだ様子だったけど。申し訳ないな。仕事帰りにコンビニでケーキでも買おうかな。喜ぶかな?
……。そういえば、仕事場の近くにコンビニってあったっけ?家の近所にコンビニってあったっけ?というか、いつもどうやって仕事場に行ってたっけ?あれ?そもそも自分の仕事って何?なんで今自分はスーツを着てるの?
急に頭の中に多くの疑問が浮かんできた。今まで目の前にあった もや が晴れていくみたいに 何故 が自分の脳内に溢れてきた。その 何故 に脳のリソースを割かれて硬直している自分を見て、先ほどまで目の前に座っていた女性が何かを持ってきた。
それは1錠の薬だった。
//「大丈夫?どうかした?なんか、様子変だよ?」
「もしかして、またいつもの病気かな???」
「じゃあ、これ、飲んで。」
「よかったら、飲ませてあげようか?彼女だもんね。」
薬を飲まされながら女性の話を聞いていた。
彼女?あぁ、彼女か。そういえば彼女だったような気がする。この 何故 が脳内に圧迫する感じ。これは病気らしい。そういえばこれもそうだった気がする。たしかに病気以外ありえないしな。
どうも彼女の話から察するに、僕たちは半年前から付き合いだしたらしい。で、ついこの間、12月から同棲を始めたと。確かにそうだったような。昨日のことのように思いだせるような気がする。
ふとカレンダーに目をやると、今日は12月25日を指していた。
「今日、クリスマスだよ?」
「一緒に過ごすよね……?」
彼女が耳元でささやく。まぁクリスマスだし、彼女だし、そうに決まってるだろう。ふと自分の服に目をやると、自分はスーツを着ていた。
「間違えて、スーツ着ちゃって~。」
「今日はお仕事お休みって言ってたじゃん!」
「ね?ね?今日は家でゆっくりしよ?ほら!この前あげた部屋着に着替えて来て!あそこの棚に入ってるから!」
自分が他人と同棲してる なんて全く信じられないが、彼女といると妙に心地が良い。そういえば、彼女から同棲を勧めてきていたような気がする。今思えば、彼女に勧められてよかったな。
スーツをカゴに入れて、彼女がくれた部屋偽を着て、居間に戻った。
