【特別編】森のクリスマス会─街からの訪問者たち
森で開かれる小さなクリスマス会に、
お嬢様と双子が迷い込み、森と街の世界がはじめて交差する回です。
森の空気がすぅっと澄み、
いつもより光が静かに揺れる—冬至の夕方。
空気中にはほんのり金色の粒が漂う。
風に乗ってちらちら光るその景色に、
森の住人たちは慣れていても、
街の人には、特別な夜のサインに見えた。
カレンは三度見した。
「……まぁ……なにかしら、この光……?」
テキパキが息をのむ。
「街では見たことありませんね」
シレットは静かに分析する。
「霧じゃない……光の粒……?」
彼女たちが歩いていた“いつもの帰り道”が、
その夜だけ、森の方角にふわりと明るく続いていた。
「……少し、寄ってみましょうか」
◆
ちょうどその頃、湖のほとりではメイとモコが飾りの準備をしていた。
松ぼっくりのリースに、灯りの入った小瓶。
アツコは飾り付けのために小さな布オーナメントを作り、マダム・ザマスはなぜか家計簿の締めをしながら「光熱費の計算も大事ザマス…」とブツブツ言っている。
いつもの、穏やかで小さな森の冬の支度。
その時、湖へ続く道の向こうに、人影が三つ見えた。
「……誰か来る」
ハヤトが顔を上げる。
やがて姿を現したのは、街から来た三人だった。
カレンは目を見開いた。
「……まぁ……ここが、森……?」

テキパキは息をのむ。
「空気がおいしいですね!」
シレットは雪を一粒すくって眺める。
「街と違う……湿度の感じです」
森の空気は、三人を静かに歓迎する。
最初に声をかけたのはハヤトだった。
「街から来た人だ!珍しい!」
メイもポテチを片手に手を振る。
「クリスマス会、準備中だよ〜。よければ参加してく?」
モコはぱたぱたと駆け寄り、カレンの袖口をそっと掴む。
「お客さんだモコ。ココアいるモコ?」
その瞬間、カレンの表情が自然とほどけた。
「……みなさん……お優しいのね……」
◆
森のクリスマス会は、静かで、あたたかくて、
街の豪華な宴よりもずっと心にしみた。
・アツコの布製オーナメント
・メイのゆるすぎる飾りつけ
・モコ特製のココア
・マダム・ザマスの“家計にやさしい”キャロットケーキ
・ハヤトが木のランタンに明かりを灯す
カレンは驚くことだらけだったが、
胸の奥をちくりと刺す懐かしさを感じていた。
「こんなに笑ったの……いつ以来かしら」
テキパキは胸を張る。
「お嬢様、それはこの場所が居心地いいからに決まっています!」
シレットはそっと付け加える。
「……たまに来る場所があるのは、大事です」
◆
“冬至の夜”。
湖面の光は相変わらず静かに揺れている。
カレンはその光景を見て、
胸に手を当てながら小さくつぶやいた。
「……こんな世界があったなんて……」
メイが笑って言う。
「また来ればいいじゃん。森は逃げないよ」
「……そうですわね」
そう言ってカレンは微笑んだ。優雅で、誇り高く、けれどどこか緩んだ笑みだった。
湖面はいつまでもきらきらと輝いていた。
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