【過去話まとめ3】ちょっと笑える3選
『今日の気分で選ぶ3話』をお届けします。
ちょっと笑える3選
今日ご紹介するのは、
軽く読みたい日に向いている3話です。
特別な出来事は起きないけれど、
クスッと笑えるような小さな話を選びました。

□ 1. メイのとある休日

朝の森は静かだった。
鳥の声で目が覚めたメイは、布団の中でスマホを手に取った。
「……ちょっとだけ、見よ……」
画面を開いて、数分だけスクロールするはずだった。
「このレシピおいしそう」
「うわ、猫……かわいい……」
「へぇ、この人の暮らし素敵……」
気づけば太陽が少し傾いていた。
「あれ? え、待って……昼過ぎ……?」
慌てて布団から出る。
けれど森の冷たい空気に触れた途端、
メイはまた布団の中に吸い寄せられた。
「まいっか。ちょっと温まってからにしよ」
すると、携帯がピコンと鳴る。
「新着動画があります」
──そこはメイ。
誘惑には弱かった。
◆
気づけば夕方。
空は淡い紫色に染まっていて、
鳥たちが帰り道を急いでいる。
メイは呆然と空を見上げた。
「……なんもしてないのに、今日終わった?」
少し考えて、メイは小さく笑った。
「逆にすごくない? ここまで何もしないの」
お湯を沸かし、温かいカップを両手で包みながら、メイは小さくつぶやいた。
「……まぁ、こんな日もあるよね。
明日からがんばる分、今日はチャージ日だったってことで」
森の夜風がするりと頬を撫でた。
責めるでもなく、急かすでもなく。
ただ、今日のメイをそのまま許してくれているようだった。
#メイ森
□ 2. メイの部屋だけ大惨事

メイの部屋には、冬の静けさよりも
“ガサガサ…ガサッ”
という音のほうがよく似合う。
それもそのはず。ソファに重なる服の山、読みかけの雑誌、積み重なった未開封コスメ。
歩くたびに、小さな音楽みたいに散らかりが反応する。
そして──気づく。
「……えっ!!もう年末じゃん!!?」
カレンダーを見た瞬間、メイは叫び声とともにひっくり返った。
服の山が雪崩のように崩れ、通り道を塞ぐ。
「やばいやばいやばい!!
こんな状態で年越せないよ~~!!」
引き出しを勢いよく開けると、去年の手袋が“片方だけ”出てきた。
「えぇぇ!なんで片方しかないの〜!?」
その声を聞きつけたモコが、窓から顔をのぞかせる。
「メイ〜、どうしたモコ……?」
「モコ〜〜!!助けてぇぇ!!」
二人で片付けを始めるが、メイが動くたびに別の山が崩れ、モコが掃くそばから“新しいガサガサ音”が発生し続ける。
「メイ、これは……片付いてるモコ?」
「わかんないよー!!でもやるしかないよー!!」
メイは腕まくりをして、深呼吸をひとつ。
「よし!あと15分だけ全力でやる!
ほんとにやる!早くしないと年が明けちゃう〜!!」
窓の外では、静かに雪が降りはじめていた。
メイの大晦日は、今日もぎりぎりまで走っていく。
#モコ森
□ 3. 家計の鬼教官、マダム・ザマス

新年の森は、いつもより少し静かだった。
それでも、いつも通り優しくて
どこか騒がしい住人たちの中に、
この時期になると必ず現れる人物がいる。
“家計の鬼教官”マダム・ザマス。
その日、森の外れにあるマダム・ザマスの自宅兼サロンには、ぽつぽつと住人たちが集まっていた。
理由は、ただひとつ。
新年最初の『家計講座』が開かれるからだ。
「今年こそ、ちゃんとやろう」
「話だけでも、聞いておきたい」
そんな小さな決意を胸に、
それぞれが自分の足で、扉をくぐる。
マダムは一人ひとりを見渡し、
拒むことなく迎え入れた。
「寒い中ご苦労さま。まずは中へ。
冷えた体では話も頭に入らないざます」
マダムはそう言って、
湯気の立つスープを一人ひとりに手渡した。
メイはカップを両手で包み、ほっと息をつく。
「さて、新年ざますけど」
その一言で、ぴしり、と場の空気が締まった。
マダムは眼鏡越しにゆっくりと視線を巡らせる。
「まずはメイ。
部屋は、片付いたんざますか?」
「えっ、あ、えっと……」
一瞬、背中に冷たいものが走る。
「は、はい! 最近はちゃんと綺麗にしてます!」
( 昨日やっといてよかった〜……!)
マダムはしばらく無言でメイを見つめ、
やがて小さく息をついた。
「……まぁ、よろしいざます」
「続けて聞くざますが。あなた、家計簿アプリをまた変えたらしいざますね?」
「はい! 新年なので、気持ちも新たに!」
「いい心がけざます。ちなみに、いくつ目?」
「えっと……10個目です!」
一瞬の沈黙のあと。
「多すぎザマス!!!
それ、恋人を変えるより早いザマス!!」
マダムの声が部屋に高らかに響き渡った。
室内に、くすりとした笑いが起こる。
メイは肩をすくめながら言う。
「いやその……アイコンが可愛くて……」
「アイコンの可愛さで選んでどうするザマス!
浪費は未来の涙ザマス!!!」
その余韻が消えきらないうちに、
マダムは声のトーンをふっと落とした。
「でも……、今年も無事に迎えられたざますね。みんな元気でいてくれたこと、それが一番の収穫ざます」
森の空気が少しだけ、温かくなった。
「メイ、アプリが悪いわけではないざます。
でも、変え続けていたら“癖”は育たない」
「家計簿はゴミ出しに近いざます。
毎日ではない。でも、溜まり方には必ず癖が出るざます」
「油断すると増える、忙しいと放置する。
変え続けていたら、それも見えないままざます」
メイはスープを飲み干しながら、こくりとうなずいた。数字の話なのに、なぜか“生活”の話をされている気がする。
マダムは最後に、静かに言った。
「ここは、数字を叱る場所ではなく、
暮らしを立て直す場所ざます」
新年の森に響いたのは、説教のような暮らしの話。
こうして──
マダム・ザマスの初講義は、一年を動かし始めた。
▶︎マダムザマスの教室はこちら

#マダム・ザマス
今週の『森の散歩道』はいかがでしたか?
メイが好き。モコの話をもっと見たい。
そんな感想もお待ちしています☺️
🍃
『森の散歩道』では、
過去の物語を3話ずつご紹介しています。
気になる住人を見つけたら、
そこから寄り道してみてください🐾
それではまた。
来週の3話でお会いしましょう。
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