M&Aで子会社のGoogle Workspaceを統合した話
2月に下書きしたものを見つけたので公開しておきます。
完全に忘れてた。。。
はじめに
M&Aで子会社を迎え入れた際、PMI対応としてIT基盤の統合は避けて通れない課題の一つです。今回、Google Workspaceのドメイン移行(Domain Transfer)を実施し、100名弱の子会社ワークスペースを親会社に統合したので、その経験を共有します。
参考:Google Workspace Domain Transferとは
なぜワークスペースを統合する必要があったのか
子会社が独自のGoogle Workspaceを持っている状態では、いくつかの課題がありました。
コラボレーションの壁
親会社と子会社でドメインが異なると、カレンダーの共有やGoogle Driveでのファイル共有に制限がかかります。日常的に協働する必要があるのに、外部ユーザー扱いになってしまうのは不便です。
セキュリティ管理の複雑さ
セキュリティポリシーやセキュリティベースラインを統一したくても、ワークスペースが別だと設定を二重管理する必要があります。グループ全体で同じセキュリティレベルを保つためには、統合が必要でした。
なぜGoogle PSOを使ったのか
Google Workspaceのドメイン移行には、いくつかの選択肢があります。メールやドライブだけの移行なら、サードパーティツールを使う方法もあります。
しかし今回は、社内に移行作業を担当できるリソースが不足していたこと、失敗が許されない重要な作業であることから、Google PSO(Professional Services Organization)チームにサポートを依頼することにしました。
参考:Domain Transferのシステム要件
APIのrate limitに引っかからない
その他の選択肢としてGoogle Workspace MigrateやCloudMなどのサードパーティ製品もありますが、突き詰めるとAPIを使ったファイルの作成→コンテンツのコピーです。
そのため、どうしてもGoogle APIのrate limitによって1日に移行出来るコンテンツの総量が決まってしまいます。
ダウンタイムがほとんどない
移行元のドメインを引き続き使う場合は一度移行元のワークスペースから削除→移行先のワークスペースに登録を行う必要があるため、どうしてもGmailが受け取れない時間帯が数時間〜数日発生してしまいます。
Google Workspace Domain Transferであれば数分で統合されます。
まぁ実際はGoogleドライブなど一部アクセスできなくなったりしましたが、基本Googleが統合後の状況チェックを行うのと、それでも数時間で解消されたのでほぼないと言って良さそうです。
移行元のGoogleドライブのドキュメントのURLがそのまま使える
ここが一番のポイントですね。
簡単に言うとcopyではなくmoveしているイメージです。公式サービスならではの最大メリットと言えるのではないかなと。
今回実施したワークスペースは小規模かつデータ量も少なかったので最悪他の選択肢を使っても良かったですが、今後同規模もしくはそれ以上のデータ量を持つワークスペースを取り込むことも予想されるわけで。
その場合過去のドキュメントのURLの貼り直しなど現場への影響がかなり高くなることが予想されるので、多少高額でも余裕でペイできるメリットだと思います。
PSO活用について
PSOチームとは
PSOチームはGoogleの専門サービスチームで、こうした複雑な移行作業をサポートしてくれます。チームは世界でインドにしかないらしく、全員インド在住のエンジニアで、コミュニケーションはすべて英語でした。
英語でのやりとり
正直なところ、これが最初のハードルでした。キックオフミーティングやドメイン認証の証明の際はオンラインミーティングで、リアルタイムの翻訳が必要でした。
弊社の場合は移行元の子会社にインド出身のエンジニアが所属していたのもあり、急遽同席してもらって翻訳してもらいました。危なかった。。。
ただ、その後のやりとりはメールベースになったので、Geminiで要約や翻訳をしながら進めることができました。このおかげで、英語でのコミュニケーションもスムーズに進められました。
準備フェーズで必要だったこと
ドメイン認証
移行作業を始める前に、移行元と移行先の両方のドメインを所有していることをGoogleに証明する必要がありました。
具体的には:
・DNSのTXTレコードを追加
・移行元・移行先それぞれのワークスペースで特権管理者権限を持っていることを画面共有で提示
この画面共有でのアカウント確認は、セキュリティ上重要なステップでした。
参考:TXTレコードでドメインを確認する
その他の準備
事前準備としては、特別なことはしませんでした。ユーザーリストの整理やデータの棚卸しなども不要で、PSOチームが主導で進めてくれました。
参考:Domain Transferのプロセスフレームワーク
とはいえ細かい設定についてはこちらで調整しなければいけません。
移行先でサードパーティのアプリケーションへのアクセス権限を絞っていたりする場合は、事前に同様の設定を入れておかないといきなりアクセス拒否されます。
移行後の監査が終わるまでユーザーを削除できないので、退職者が出た時は無効化する必要があります。
更にライセンスも数だけでなくプランも合わせる必要があるので、移行元がBusinessプランで移行先がEnterpriseプランの場合、移行前にEnterpriseプランに上げる必要があります。
ただアップグレードするだけならトライアルライセンスでなんとかなるんですが、ドメインも移行する必要があるので移行元に残すためのドメイン(プレスホルダードメイン)を作成し、プライマリドメインに変更しないといけません。
が、このプライマリドメインの変更がトライアルライセンスでは出来ないので、別途Googleの営業担当に有料プランに変更しても移行期間中の費用は免除してもらえるよう調整する必要があります。
移行作業当日
移行作業自体は驚くほどスムーズでした。実際の作業時間は約15分。
ユーザーへの影響もほとんどなく、ダウンタイムも発生しませんでした。多くのユーザーは移行があったことにも気づかなかったのではないかと思います。
ただ、実際のところ数名Googleドライブが数時間見られなかったりしていたようなので、事前のアナウンスは必要ですね。
移行が完了すると、すぐにカレンダーやドライブの共有が親会社メンバーとできるようになりました。
参考:Domain Transferの仕組み
移行後に直面した課題:SAML連携
移行自体は順調でしたが、移行直後に対応が必要になったのがSAML連携でした。
移行元の子会社ワークスペースでは、ユーザーが直接Google Workspaceにサインインしていました。一方、移行先の親会社ワークスペースでは、IdP(Identity Provider)を使ったSAML連携を利用していました。
プロビジョニングのジレンマ
理想としては移行前にSAML設定を準備しておきたかったのですが、プロビジョニング機能が有効になっていたため、事前に設定するとアカウントが自動作成されてしまうという問題がありました。
そのため、移行後に慌ててSAML連携を設定する必要がありました。ただ、ブラウザのキャッシュなどの影響もあり、すべてのユーザーに即座に影響があったわけではなく、段階的に対応することができました。
参考:SSOの設定
結果と学び
【成功したこと】
ダウンタイムなしで移行完了できた
カレンダー・ドライブの共有が即座に可能になった
セキュリティベースラインの統一が実現できた
【次回やるなら気をつけること】
SAML連携とプロビジョニングの兼ね合いは事前に検討しておく
移行後の認証フローについて、ユーザーへの事前周知をより丁寧に行う
PSOチームとのコミュニケーションでは、社内で英語のわかるメンバーを最初からアサインしたり翻訳ツールを活用する前提で進める
注意点:GCPプロジェクトは移行されない
重要な注意事項として、Domain TransferはGoogle Workspaceのアカウントやデータを移行するものであり、GCPプロジェクトは対象外です。
子会社がGCPを利用している場合、プロジェクトの移行や統合は別途検討が必要です。この点は事前に確認しておくことをお勧めします。
参考:
・Domain Transferでサポートされているもの
・GCPプロジェクトの組織間移行
まとめ
Google WorkspaceのDomain Transferは、適切なサポートを得られれば、思っているよりもスムーズに実施できます。
特に、失敗が許されない重要な移行作業の場合は、Google PSOチームの活用が有効な選択肢です。英語でのコミュニケーションというハードルはありますが、社内リソースを活用すれば十分対応可能でした。
M&A後のIT統合を検討されている方の参考になれば幸いです。
という感じで、Google Workspace Domain Transferを体験したことをClaudeにまとめてもらいました。GeminiよりはAI臭さがないのと、noteで投稿するためにコピペできる形にしてって言ったらMarkdown形式で出してくれたのでちょっと気に入っています。
また、2月から状況がもう少し鮮明になった部分もあったので加筆もしています。
先月どうもPSOチームが縮小したのかGoogleから一度サービスの提供が出来ないと言われたので、知名度を上げねば!この貴重なサービスが消える!ということで公開することにしました。
M&Aは弊社に限らず活発になってきていますし、スタートアップのゴールとしてだけではなくそれなりの規模の会社がまとまるなんてことも日常的になりそうなので、是非もっと色んな人に利用してほしいサービスだなと思います!!
他にも細々した部分で調整や作業があるので、もし興味がある人はお声がけくださいー。
このサービスに限って言うとぶっちゃけGoogle Japan内でもノウハウがほぼないらしいので、言ったもの勝ちということで私が日本で一番Google Workspace Domain Transferに詳しいとしておきますw
