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「お母さん役」を演じるうちに、母の私になっていく

あの日、母になった私へ。そんな気持ちで手紙を書き始めたのに、すぐ筆が止まった。子どもを産んで4年半。もし、授かった瞬間から母なのであれば、もう5年が経っている。それでも、私は母になれたかというと自信をもって頷けない。

「わたしはいつ、お母さんになれるのだろう?」

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出産後間もなく、自分の全部が母になるのがこわくなった。

ほにゃほにゃの新生児期。ミルクの量は足りてる?母乳飲んでくれるけど、お腹空いてない?よく寝てくれるけど大丈夫?吐き戻した!苦しそう、心配だ。お洋服はあったかいかな。動きやすい?肌はちくちくしない?ウンチも出たね、水っぽいとは聞いてたけどこんな感じなのかなあ。あ、そろそろまたミルクの時間か。

そうやって、いつなんどきも、寝不足でも、ほかにやりたいことがあっても。子どもを気にかけ生活を繰り返すうちに、自分自身が消えてしまいそう。そんなふうに思うようになった。

スマホをひらけば、子どもとの時間は今だけ!それが幸せ!お母さんになれて嬉しい!という投稿ばかり目に飛び込んできてね。そうは思えないことが悲しくて、自分が自分をゆるせなかった。

今思うと、こころの矯正をしようと一生懸命だったんだね。

そうやって頑張るうちに、自分を守ろうとするようになった。早めに仕事復帰をしたり、手に職をつけようと勉強したり、育休中の夫もいるしと遠出をしてみたりした。

そういうことができたこと自体は、すごくありがたくて、楽しかったし、何より救われた。今につながっていることも、たくさんある。

それなのに、やりたいことをやっているはずなのに、どこか苦しかった。

それはきっと、自分を守るための行動は、純粋に自分がやりたかったことではなかったからかもしれない。誰かから見える自分が、いいお母さんでなければ、と気をつかっていた。

頭のなかに浮かぶ「理想的な」お母さんには、なれないかもしれない。そうなることが、こわいとすら感じていた。あの頃の私に、今伝えたい。

頑張り方、変えてみない?

お母さんになることを頑張るんじゃなくて、自分の中にお母さん役をインストールする、そんなふうに。私らしい母を目指すのとも少しちがう。あくまで主役はあなた(私)で、たまにお母さん役で人生を生きてみる。そんな感じでやってみない?

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もしも、お母さん役をするなら。あなたは誰と、どこで、どんなふうに暮らして、働いて、子どもとの時間を過ごしたい?どんな、お母さんでいたいだろう?得意なことは?どちらかというとやりたくないことも、あるはずだ。

演劇はやったことがないけれど、自分のキャラクターに合う役の方が、無理なく、演じられそう。初めての、わからないことをするのは、大変でむずかしくて当然だ。

授乳をしたり、寝かしつけをしたり、発疹がでたときに慌てたりしたのは、その全部が初めてのことだったからだ。だから戸惑ったんだ、当たり前だよ。

反対に、すんなりできたこともあったな。めんどくさいイメージのある離乳食作りに、前のめりだった。離乳食づくりは、料理することの延長上にあったからだと思う。料理は私にとって、やることが当たり前の、ストレス少なくできる家事だ。てきとうにする感覚もある。

離乳食のレシピ本を早々に買ってイメトレしながら、食器もワクワクしながら選んで。アレルギーに気をつけるのは少し大変だったけど、おかゆだけ、トマトだけ、鯛だけ……と、ひとつずつ食べる喜びを伝えられるのは楽しくて、嬉しかった。

絵本もたくさん読んだなあ。読書が好きな子になるといいなって思っていたけど、私自身が本によって生活が潤う暮らしをしてきたから、そんなことをシェアしたかったのかもしれない。

図書館にもよく通っているうち、親子ですっかりヘビーユーザーだ。図書館で過ごす時間は、ほかのことをするときより肩の力も抜けていた。

図書館だけじゃない、まちのあちこちに息子を連れて出かけることのハードルは低かった。きっと、息子が生まれる前から、私自身たくさんの場所で可愛がってもらってきたから。

地域のなかに知ってる顔がある心強さが、おでかけの足取りを軽くした。

迷惑かけたらどうしようとは思わず、これからは親子ともどもお世話になりますって気持ちで。優しい人ばかり。今では息子の名前も、呼んでもらえることが多い。息子からも、まちの人の名前を聞くようになった。

ある地域イベントの帰り道、3歳になった息子が突然ぽつりと言った。

「ママって、いろんな人を知ってるよね」

あの時はビックリして「そう、だね」としか答えられなかったけれど。息子の味方にもなってくれるたくさんの大人がいることは伝えたいと過ごしてきた。親として、母として唯一ぐらいのできることだと思っていた。 

だから、その一言に、すごく嬉しくホッとしたんだよね。私だからできている子育てが、ちゃんとあった、って。

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お母さんになるのには、時間がかかる。もしかすると、一生をかけても思い描いたお母さんにはなれないかもしれない。

子どもはぐんぐん成長し、変わり続ける。それも、ものすごいスピードで。役のアップデートをしていかないと、追い付けない。

正直、とても大変です!!笑

それでもどうか、お母さん役をできるだけ楽しみながら、大変なことも味わい尽くして付き合ってみたいと、5年が経ってようやく思えるようになったよ。お母さんを演じられるようになったことで、私の人生は味わい深いものになったから。

それに、お母さん役を演じ続けていると、時おり、私と、お母さん役の自分がぴったり重なる瞬間がやってくる。

早朝にみる夫と息子の寝顔
瞬く間の成長がみえる眩しい時間
願いごとが叶った時のキラキラの表情
ごはんやおやつを食べながら団らんするときの笑い声

そういう宝物のような瞬間が訪れると、胸がぎゅっとなって、嬉しくて幸せなのに泣きそうになる。

お母さんになったから出会えた、いい景色と感情をお守りに、いろんなことがある日々を生きてみてね。

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今日は、息子、五歳の七五三。家族と一緒に、私は母として、息子の健やかな成長を祝える今が、こころから嬉しい。

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