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一体感を語る組織ほど「特権意識」と「秘密主義」が支配する

組織の調子が良い時は面白いほど情報が出てくる。
数字も共有され、方針も共有され、課題も共有される。

ところが調子が悪くなってくると変化が起きる。

情報が減る。
いや、正確には減らない。

どうでもいい情報だけが増える。
本当に知りたいことだけが見えなくなる。

会議は減らない、資料も減らない、報告も減らない。

それなのに、何が起きているのかは分からなくなる。

そんな状態になりながら、なぜか組織は一体感を語り始める。

チームワークを大切にする、風通しを良くする、みんなで同じ方向を向く。そんな言葉が会議や社内発信で繰り返される。

このように、一体感を語る組織ほど、

「特権意識」と「秘密主義」が支配するようになる。


特権と秘密のようなものが生まれる理由

そもそも不思議なのは、彼らが抱えているものの多くは、実は特権でもなければ秘密ですらないことだ。

経営戦略でもない。
重要な機密情報でもない。
競争優位を左右するような情報でもない。

そもそも、そんな重要な考えや情報を持ってすらいない。

彼らが抱えているものは、普通に組織を見ていれば察しがつくことや、
少し考えれば分かることばかりである。

それでも彼らは、それを秘密として扱いたがる。

その方が簡単だからだ。

成果を出すのは難しい。
市場で勝つのも難しい。
組織を成長させるのも難しい。

しかし、情報へのアクセスを制限することは簡単である。

「知っている側」と「知らない側」を作れば、それだけで優位な立場を演出できる。

能力がなくてもできる。
実績がなくてもできる。
必要なのは情報を囲うことだけだ。

こんなにコストパフォーマンスの良い権力演出はなかなかない。

さらに彼らは、良い情報も悪い情報も自分たち経由で流したがる。

数字が良ければ自分たちの手柄として語れる。
数字が悪ければ表現を調整できる。

問題があれば隠せる。
問題が隠せなくなれば説明を調整できる。

要するに現実を管理したいのである。

もっとも、管理しているつもりなのは本人たちだけだ。
周囲から見れば、何を隠しているのかはだいたい分かる。

もっといえば、隠そうとしていることまで含めて見えている。

だが本人たちは気付かない。
まだバレていないと思っている。

そして同じような人間同士で集まり始める。

互いに事情通の顔をする。
意味深な表情で会議室に入る。
何か重大な話をしている雰囲気を出す。

だが実際には、0点のテストをランドセルに隠しているのと大差ない。

違いがあるとすれば、子供ではなく親の立場というだけだ。

こうして組織には特権意識が生まれる。

秘密を持つことが価値になる。
情報を囲うことが仕事になる。
説明しないことが賢さになる。

その結果、組織はますます現実から遠ざかる。

特権と秘密だらけの選民思想が語る一体感

一体感という言葉ほど便利なものはない。
みんなで頑張ろう、同じ方向を向こう、チームワークを大切にしよう。

実に聞こえが良い。

だが不思議なことに、一体感を語る組織ほど「みんな」を信用していない。

情報は共有しない。
意思決定も共有しない。
議論の経緯も共有しない。

一部の人間だけが知り、一部の人間だけが決め、一部の人間だけが理解していることになっている。

それでいて一体感だけは求める。

なかなかにおかしな話である。

本来、一体感とは現実を共有することで生まれる。

良い話も悪い話も共有する。
成功も失敗も共有する。
課題も責任も共有する。

だから同じ方向を向ける。

ところが彼らが求めているのは別のものだ。

現実を共有したいのではない、結論だけ共有したいのである。
考えて欲しいのではない、従って欲しいのである。
理解して欲しいのではない、納得したことにして欲しいのである。

だから組織の調子が悪くなるほど、一体感という言葉は増えていく。

現実が見えなくなる。
説明が減る。
情報が閉じる。

その代わりにスローガンが増える。

現実を共有できなくなった組織ほど、言葉だけを共有したがる。

まるで現実の代用品である。

そして選民思想が始まる。

自分たちは事情を知っている。
自分たちは選ばれた側である。
自分たちは一般社員とは違う。

そんな意識を持ちながら、一方で組織全体には一体感を求める。
矛盾しているようだが、本人たちにとっては矛盾ではない。

彼らが求めているのは仲間ではないからだ。

羊である。

自分たちの話を信じる羊。
疑問を持たない羊。
空気を読む羊。
都合の悪いことを見ない羊。

そういう羊が増えるほど、自分たちの立場は安定する。

だから社員の鏡が生まれる。
カルチャーを体現している人が生まれる。
組織を理解している人が生まれる。

もちろん能力の話でもなければ、成果の話でもない。
組織の本質的な問題に触れない人間が評価されているだけである。

それは模範社員ではなく、都合の良い社員である。

この時点で組織の目的は変わっている。

顧客のために存在していたはずが、組織を守るために存在するようになる。事業のためにあったはずの組織が、立場を守るために動くようになる。

だから特権が必要になる。
だから秘密が必要になる。
だから一体感が必要になる。

未来のためではない。

今座っている椅子を守るためである。

実態のない特権と秘密に溺れて向かう先

実態のない特権は、さらに特権を必要とする。
実態のない秘密は、さらに秘密を必要とする。

なぜなら、そのままでは特別感を維持できないからだ。

昨日まで共有されていた情報が共有されなくなる。
昨日まで参加していた人間が外される。
昨日まで普通だったことが、急に特別扱いされる。

こうして特権と秘密は少しずつ増殖していく。

もっとも、その頃には本来の目的など忘れ去られている。

顧客に価値を届けることでもない。
市場で勝つことでもない。
事業を成長させることでもない。

誰が内側なのか、誰が外側なのか。
誰が知っているのか、誰が知らないのか。

そんなことばかりに意識が向くようになる。

市場との競争に負けた組織は、組織の中で勝つことを覚える。
顧客に選ばれることを諦めた組織は、仲間内で選ばれることに夢中になる。

その結果、内部でやっていたことを外部にもやり始める。

都合の良い情報だけを出す。
不都合な現実は見せない。
耳障りの良い話を繰り返す。
問題よりもストーリーを優先する。

最初は組織を守るためだったのかもしれない。
だが気付けば、現実そのものを扱えなくなっている。

現実を見るより、現実を演出する方が得意になってしまうのである。
だから、未来の話ばかり増える。

三年後、五年後、十年後。
業界の未来、壮大なビジョン、社会への貢献。

聞いているだけなら実に立派だ。
だが足元を見ると、今日起きている問題すら整理できていない。

顧客が何に不満を持っているのか分からない。
なぜ成果が出ないのか説明できない。
組織のどこに課題があるのか把握できていない。

遠くを見ているのではない。
近くが見えなくなっているだけである。

そして組織はさらに弱くなる。
本来なら小さな違和感の段階で修正できたはずの問題が放置される。

小さな失敗は認められない。
小さな課題は共有されない。
小さな警告は嫌われる。

結果として問題だけが蓄積する。

こうなると普通の改善では動かない。

劇薬が必要になる。
だが、その頃には手遅れである。

なぜなら劇薬が必要な状態を作った人間たちしか残っていないからだ。

疑問を持つ人間は面倒な存在として扱われた。
問題を指摘する人間は空気が読めないと言われた。
現実を見る人間は組織に合わないと言われた。

そして残ったのは、同じ話を信じる人間たちだけである。

同じ穴の狢たちが集まり、同じ言葉を繰り返し、同じ失敗を正当化する。

それでも彼らは一体感を語る。
特権を語る、秘密を語る、未来を語る。

だが、その頃には誰も現実を語らない。

実態のない特権と秘密に溺れて向かう先とは、衰退である。

ハリボテの特権と秘密に隠れたつもりなのか

特権を作ったつもりなのだろう。
秘密を抱えたつもりなのだろう。
選ばれた側になったつもりなのだろう。

だが残念ながら、その多くはハリボテである。
隠しているつもりなのは本人たちだけだ。

都合の悪い情報を閉じる。
説明を避ける。
一部だけで物事を決める。
意味深な顔で会議室に消える。

本人たちは上手くやっているつもりなのかもしれない。
だが、周囲から見れば何をしているのかはだいたい分かる。

何を隠したいのかも分かる。
何から逃げたいのかも分かる。
そして何より、自信を失っていることも分かる。

本当に自信がある人間は隠れない。
本当に実力がある組織は閉じない。

特権や秘密が増え続けるのは、自分たちの正しさを信じられなくなった証拠である。

それでも彼らは続ける。
なぜなら周囲を盲目の羊だと思っているからだ。

適当に情報を流せば信じる。
適当にスローガンを掲げれば従う。
適当に一体感を語れば納得する。

そう考えている。

ずいぶんと舐めた話である。
世の中は、思考停止した盲目の羊ばかりではない。

考える人間もいる。
見ている人間もいる。
数字を見る人間もいる。
違和感を覚える人間もいる。

だからバレる。
とっくにバレている。

それでもバレていないと思い込んでいるだけだ。

もし本当に自分たちに都合よく従う存在だけが欲しいのなら、最初から子犬だけ集めておけばよかったのである。

自分たちで大きな犬を集めておいて、いざ足元が怪しくなった途端に、飼い犬に手を噛まれるのを恐れ始める。

そして、情報を隠し、特権を作り、秘密を抱え、一体感を語り始める。

そんな見え透いた振る舞いで誤魔化せるほど、人は馬鹿ではない。

少なくとも全員がそうではない。
それでも構わないというなら好きにすればいい。

ハリボテの特権を守りながら、

ハリボテの秘密を抱えながら、

ハリボテの一体感を語りながら、

その茶番を信じる人間だけで続けてくれ。


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