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夜、氷を買いに #1000字日記

連日終わらない残業を、今日は少し早めに上がって上野で買い物をしてから帰った。隣接する部屋に届かない程度の音量で好きな音楽を流して、好物である鯛のかぶと焼きをツマツマと食べながら、創作大賞の構成と計画を練って書き直すなどの作業をしていた。
指を動かしつつウイスキーの氷水割りを呑んでいたら、氷がなくなった。東京拠点の冷蔵庫はワンドアで、製氷できるほどの性能がない。申し訳程度の冷凍エリアは、購入したロック氷を入れたらいっぱいになる。時計を見やり、仕方なく、近所のまいばすけっとに氷を買いに行く。
都内だというのに、私がいる拠点はちょうどコンビニやスーパーから少し隔離された立地にある。なんでだ、と思う。一番近いのがまいばすけっと。実は何の意地だか私はワオンカードを一度も持たずに今まできている。あればよかったと思う回数が増えるのが悔しくて、避けて通っているのがまいばすけっと。よりによってそこが最寄りの買い物場所で、なんならロック氷も一番安い。

きらびやかなイメージがある都心だって、住民にとってはなんでもない日常だというのは、暮らしてみて分かってきた。誰も知り合いではなく、いい意味で無関心なのが私には心地いい。
部屋着から下だけジーンズに履き替えて、上はパーカーを羽織ってごまかし、財布と鍵とスマホと買い物袋だけ持って外に出る。

まいばすけっとまで、ざっくり2つの角を曲がる。
一つ目の角で、若い男女が楽しげに静かに話をしていた。別れ際の会話の時間が惜しくてギリギリまで話している雰囲気。好感を持つ。
二つ目の角で、年配の方が買い物袋を提げて目の前をゆっくり歩くのを見送った。手を貸すほど困っている様子ではないけど、どうか帰宅まで無事でと願う。近くにある駅とバス停からの帰宅客たちともすれ違う。
店に入ると、この時間なのに、いや、この時間だからか、お惣菜コーナー前には吟味する客が数人いる。私も軽く目をやる。何があるか、品ぞろえチェックはしておくものだから。
スーパーのセオリーどおり、冷蔵冷凍ショーケース沿いにぐるっと外周をあるき、目的のロック氷を手にしてからレジに行く。まいばすけっとはPay系をほぼ使えない。これもあまり利用しない理由の一つだったのを思い出した。小銭も足りなくて千円札は崩したくなかったのでSuicaで支払う。交通系は交通系以外であまり使いたいくないんだけどな。

まいばすけっとを出ると、制服姿の女子高生が目の前を通り過ぎた。リュックに可愛いぬいぐるみのマスコットが揺れている。この時間まで塾かな。
帰路、若い大学生らしき男性集団とすれ違う。酔って調子に乗ってる風ではなくいい意味で賑やかで、楽しく良い人生を歩んでいってくれよと思う。
最後の曲がり角で、若い男女がまだ別れを惜しむように会話を続けていた。通りすがりには内容が聞き取れないくらいの、良識的な静かで楽しげな会話。恋人のようであり、学生同士のようであり、幼馴染のようでもある。ずっと話していて飽きない相手は貴重だ。好感を持つ。
このあたりは大学がいくつかある。
長く暮らす人、一時的に暮らす人、生活する人、仕事で来る人、ここで育つ人、学ぶ人。
それぞれの目線で見るこの街は、それぞれ全然違うのだろう。

帰宅して、氷をグラスに追加する。今日明日は十分足りる。
常温の水とウイスキーは潤沢にある。
冷蔵庫横のマグネット時計に目を向ける。氷を買いに行くか、と時計を見やってから、グラスを満たして一息つくまで、15分も経っていなかった。信州ではこうはいかない。でも信州では水も氷も深夜に尽きることはない。
今日は寝るまで、創作大賞の作品を練る。

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