レンタルスペース運営エッセイ14|② コンセプト・設計-4.ニッチ市場の見つけ方
この連載は、日本の小規模な時間貸しレンタルスペース運営について、現場での気づきや工夫をまとめた実践記録です。
レンタルスペースを始めるとき、多くの人が最初に考えるのは「できるだけ多くの人に使ってもらえる場所にしたい」ということかもしれません。
もちろん、その気持ちはとても自然です。
せっかく空間を用意するなら、会議にも、撮影にも、誕生日会にも、教室にも使ってほしい。予約の入口は多いほうが安心に見えます。
ただ、実際に運営していると、広く受け入れようとするほど、かえって伝わりにくくなることがあります。
「何でもできます」は便利な言葉ですが、利用者から見ると「自分に合っている場所なのか」が少し見えづらくなることもあるのです。
ニッチは狭めることではなく、見つけてもらいやすくすること

ニッチ市場という言葉を聞くと、「お客様を減らすこと」のように感じる方もいるかもしれません。
でも、レンタルスペース運営におけるニッチは、単に対象を狭めることではありません。
むしろ、必要としている人に見つけてもらいやすくするための目印です。
たとえば、同じ部屋でも、
「多目的スペースです」
と書くのと、
「少人数の講座やカウンセリングに加えて、推し活の撮影や本人不在の誕生日会、大きな投影画面を使った仲間同士の鑑賞会にも使いやすい空間です」
と書くのでは、受け取る印象が変わります。
後者は、使う人の場面が浮かびます。
講師の方なら「ここで少人数講座ができそう」と感じるかもしれません。
カウンセラーの方なら「周りを気にせず話せる場所として使えそう」と思うかもしれません。
推し活を楽しみたい方なら「推しのグッズを並べて写真を撮ったり、大きな画面で映像を見たり、仲間と記念日を祝えそう」と想像できます。
ニッチとは、この「自分のための場所かもしれない」と感じてもらう入口づくりだと思います。
大きな市場の中にある、小さな困りごとを見る

ニッチ市場を見つけるときは、特別なアイデアを無理に探す必要はありません。
むしろ、身近な困りごとの中にヒントがあります。
たとえば、レンタルスペースを探す人は、ただ「部屋」を探しているわけではありません。
静かに話せる場所がほしい。
自宅では生活感が出てしまう。
カフェでは周りの目が気になる。
毎月の教室に使える場所を探している。
駐車場がある場所だと助かる。
都心まで出なくても、落ち着いて集まれる場所がほしい。
こうした小さな不便をひとつ拾うだけでも、コンセプトはかなり具体的になります。
埼玉県三芳町でTYフェアリーリングを運営していると、郊外型スペースならではの価値も見えてきます。
駅前の便利さとは違うけれど、落ち着いて過ごせる。
都心の華やかさとは違うけれど、車で来やすく、仲間同士で気兼ねなく集まりやすい。
大人数のイベントよりも、少人数で目的を持って使う時間に向いている。
TYフェアリーリングでも、オープンした頃から“推し活”でのご利用が増えていきました。
最初から大きく「推し活向けスペース」と打ち出していたわけではありません。けれど、実際に使ってくださる方の話を聞くと、レンタルスペースと推し活の相性の良さが見えてきました。
周りを気にせず写真を撮れる。
好きな映像や音楽を仲間と楽しめる。
大きな投影画面で、推しの映像をみんなで見られる。
誕生日や記念日を、自分たちらしい飾り付けで祝える。
カフェや自宅では実現しにくい時間を、気兼ねなく形にできる。
特に、大きな画面に推しの映像が映し出される時間は、日常の視聴とは違う楽しさがあります。同じ映像でも、仲間と一緒に見て、同じタイミングで笑ったり感動したりできる。その共有体験が、推し活利用の大きな魅力になっているのだと思います。
今でも定期的にご利用くださるグループがいらっしゃることを考えると、“推し活”は一時的な流行というより、利用者にとって大切な時間の過ごし方のひとつなのだと感じます。
ここに、ニッチ市場のヒントがあります。
運営者が机の上で考えたコンセプトだけでなく、実際に選んでくださるお客様の使い方の中に、次に伸ばすべき方向が見えてくることがあります。
レンタルスペースは、立地や広さだけで勝負するものではありません。
「どんな人の、どんな時間を支える空間なのか」を言葉にできると、小さなスペースにも選ばれる理由が生まれます。
ニッチを見つけるための3つの問い
これからレンタルスペースを始める方や、今の集客に少し迷いがある方は、次の3つを考えてみると整理しやすくなります。
1つ目は、「誰が使うと一番喜んでくれそうか」です。
年齢や性別だけで考えるより、利用シーンで考えるほうが実務的です。
講師、カウンセラー、ハンドメイド作家、動画撮影者、親子利用、地域の集まり。
さらに、推し活、本人不在の誕生日会、少人数の鑑賞会、記念日の撮影なども、具体的な利用シーンとして考えられます。
たとえば推し活なら、利用者が求めているのは単に部屋ではありません。
周りを気にせず楽しめること。
飾り付けがしやすいこと。
写真を撮ったときに背景が整っていること。
大きな投影画面で、推しの映像を仲間と楽しめること。
安心して盛り上がれること。
ここまで見えてくると、予約ページで見せるべき写真も変わります。
部屋全体の写真だけでなく、投影画面、ソファや椅子の配置、鑑賞しやすい距離感、飾り付けができる余白などを伝えたほうが、利用イメージが具体的になります。
2つ目は、「その人は何に困っているのか」です。
たとえば推し活なら、困りごとはかなり具体的です。
自宅では人数が集まりにくい。
カフェでは周りの目が気になる。
推しのグッズを並べて写真を撮りたい。
大きな投影画面で映像を楽しみたい。
飾り付けや片付けのルールを事前に知っておきたい。
初めてレンタルスペースを借りるので、利用の流れが分かると安心できる。
ここまで見えてくると、予約ページに書くべき内容も変わります。
3つ目は、「自分の空間だからこそ提供できる安心感は何か」です。
高級家具がなくても、清潔感がある。
最新設備が多くなくても、使い方がわかりやすい。
広くなくても、少人数にはちょうどいい。
派手ではなくても、落ち着いて集中できる。
こうした要素は、見落としがちですが、利用者にとっては大切な判断材料になります。
AIと一緒に、見えにくいニッチを言葉にする

ニッチ市場を見つける作業は、自分ひとりで考えると少し難しく感じることがあります。
なぜなら、運営者にとって当たり前になっている魅力ほど、自分では気づきにくいからです。
そんなときは、AIを壁打ち相手にするのも有効です。
たとえば、予約ページの説明文や写真の特徴、設備、立地、利用実績などを整理したうえで、AIに次のように聞いてみます。
「このレンタルスペースは、どんな利用者に向いていそうですか」
「初めて借りる人が不安に感じそうな点はありますか」
「利用シーンを5つに分けるなら、どのように整理できますか」
「この空間の強みを、売り込みすぎず自然な説明文にしてください」
AIの答えがそのまま正解になるわけではありません。
現場の空気や、実際のお客様の反応は、運営者自身が一番よく知っています。
ただ、AIと一緒に言葉を並べてみることで、自分では見逃していた視点が出てくることがあります。
特に、予約ページのタイトル、説明文、利用シーン別の見出し、SNS投稿の切り口を考えるときには、かなり実用的です。
推し活向けに予約ページを整える場合は、AIに次のように相談できます。
「大きな投影画面で推しの映像を楽しめるレンタルスペースとして、推し活利用者に伝わる説明文を作ってください」
ただし、映像コンテンツの利用には、それぞれの配信サービスやコンテンツの利用条件があります。
たとえば、映画やライブ映像などの有料配信をご利用いただく場合は、お客様ご自身のIDでログインしていただく必要があります。
この一文を入れておくと、実務的にも安心です。
推し活は魅力的な市場ですが、映像視聴や音量、飾り付け、原状回復など、事前案内が大事になる分野でもあります。
そんなときは、AIに
「楽しさを損なわず、注意事項をやわらかく伝える文章にしてください」
と相談してみるのもひとつの方法です。
もちろん、最終的な表現は運営者が確認します。
現場で起きやすいこと、守ってほしいこと、利用者に安心してほしいことを踏まえて、AIの案を自分の言葉に整えることが大切です。
利用実績の中に、ニッチ市場の答えがある
レンタルスペース運営では、すべての人に選ばれようとしすぎると、かえって自分の空間らしさが伝わりにくくなることがあります。
反対に、誰にとって心地よい場所なのかを丁寧に考えると、発信の言葉も、写真の撮り方も、設備の整え方も明確になります。
ニッチ市場を見つけることは、自分の可能性を狭めることではありません。
「この人に届いたら嬉しい」と思える相手を見つけ、その人に向けて、わかりやすく、誠実に、安心して使える理由を伝えていくことです。
目立つことだけを追いかけるより、必要な人にきちんと届く。
それは、レンタルスペース運営において、とても強い土台になります。
レンタルスペースは、ただ貸す場所ではなく、誰かの予定や挑戦を支える場所です。
その空間がいちばん力を発揮できる相手を見つけること。
そこから、選ばれる理由は少しずつ育っていきます。
この記事が、レンタルスペース運営を考える方のヒントになりましたら嬉しいです。
現在、AI共創アドバイザー™ として、レンタルスペース運営に役立つ
「レンスペ運営エッセイ/講座化対応テーマ100選」
を整理しながら、note記事・PDF教材・動画講座への展開を進めています。
日々の現場で得た気づきに加え、生成AIを活用した業務効率化、集客改善、発信づくり、講座化の工夫なども、実践に即した形でお届けしていきます。
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