売れない芸人こそ選挙に行け
選挙に行かない芸人が多いが、芸人こそ選挙に行くべきだ。
せっかく全国民に与えられた権利なんだから行使しろとか、収入が少ないと社会保障制度に実質おんぶにだっこなんだからそれくらい行っとけとか、これからの芸人は政治もちょっとは分かってないとダメとか、そういうことを言いたいんじゃない。
売れてない芸人こそが最も「選挙の本質」を知っているからだ。
こんな経験はないだろうか。
ふだんは動員数がせいぜい20の、お客さん投票型のバトルライブ。でも今日はお客さんも多くてよくウケた。手ごたえを感じて結果を見ると、また3位や4位みたいなしょっぱい数字。1位は誰だったんだ……え、〇〇!?まだ養成所出たてのコンビじゃなかったっけ?そんなウケてた?あー……友達14人も呼んでたのか。そりゃ勝つわ。
そしてそのコンビは見事、より上の舞台に上がる。そこは動員数も多く、100人とか200人とか。そうなると歯が立たない。100人を笑わせられる実力の芸人の前に、10人そこらの組織票では太刀打ちできなくて、また下のライブに戻ってくる。そしてまた客席に見慣れないお客さんがいて、またそのコンビが勝ちあがる……
ほぼ確実に、ほぼ全芸人がこの経験をしているはずだ。これ自体は悪いことではない。ライブの動員は正義だし、あらゆる手を尽くしてでも自分のステージを上げようとするハングリー精神もまた正義だ。だが、周りの芸人は悔しい思いをする。あなたもしたはずだ。ではなぜ選挙にいかないのか?この経験をしていれば投票がいかに大切か分かるはずなのに。分からない?なら説明してあげよう。
「投票の母数が少なければ少ないほど、組織票を持ったおもんない奴に有利に作用する」
さっきの例が示しているのはこの残酷な「選挙の本質」である。このことを一番知っているのがあなたたち/わたしたち芸人だ。
お目当ての芸人はいないけどいったんライブの会場に来て、席に座ったと思ったら、ライブを見ずに帰る。お客さんが毎回こんな感じだったら腹が立つだろう。こんなお客さんが”たくさん”いるのが今の日本の現状だ。選挙にいかないあなたはそういうことをしているのだ。
だからライブを見に来たお客さんと同じように、選挙でも投票をすればいい。チケットをもらったライブがある。別にお目当ての芸人がいるわけじゃないけど、どんな人がいるかネットで調べてみよう。こいつら面白そうじゃん。私の好きな〇〇と仲いいっぽい。こいつらは見た目が苦手。おもしろくなさそう。でもとりあえず行ってみるか!それでいいのだ。
政治ってそんな軽いものじゃないって?じゃあなぜ多くの政党がこぞってタレント議員を擁立しようとするのだろう?多くの国民がお笑いライブと同じノリで投票しているからだ。見た目がいいから。喋り方が好きだから。だからあなたも同じノリで投票に行くべきだし、お笑いライブでの「そういう投票」に腹が立つなら、なおさら行くべきなのだ。
「投票の母数が少なければ少ないほど、組織票を持ったおもんない奴に有利に作用する」
これを肌に突き刺さるほど知っている芸人が、選挙に行かない意味が分からない。
確定申告もそうだが、常々芸人仲間に言っているのは、「老人がよくわからないままできていること」を若者であるあなたが尻込みする必要はない、ということだ。選挙に行くというのはなにも過度に政治的なアクティビティではない。自分のおじいちゃんおばあちゃんや両親も、そこまで政治のことをよくわかっていないけどなんとなく投票に行って、なぜか外食するんだ。そもそも政治から極端に遠ざかろうとする芸人が多いのだけど、じつはその態度こそ、めまいのするほど「政治的」であることに気づいていない。
