短編連作小説『チル』 第二話 カセット・ストリート・ゲームオーバー? #創作大賞24 #ファンタジー部門
あらすじ
LoFi音楽が流れる懐かしい雰囲気の商店街、通称「カセット・ストリート」。レトロゲーム大好きな男子高校生の悠希が、この商店街に迷い込む。そこで同級生の女子・光と出会うが、二人は突如として時間のループに閉じ込められてしまう。街では迷子のネコが話題になっており、悠希たちはこの猫を捕まえない限り、ループから抜け出せないことに気づく。ゲーム好きの悠希は、この状況を現実世界のゲームだと考え、攻略を試みる。
第二話 カセット・ストリート・ゲームオーバー?
◆
「ゲームオーバー」
アーケード機の画面に大きくの文字が表示される。画面全体が赤く染まり、電子音が無情に響く。
白熱灯が年季の入ったゲーム筐体を照らし出し、ブラウン管の光がノスタルジックな影を落とす。スピーカーからは、カセットテープの擦れる音、レコードの針音が混じった、LoFiヒップホップが流れ続けている。
ここは悠希にとって、現実世界のノイズをシャットアウトしてくれる、大切な場所だった。
魔界村。何度プレイしても色褪せない、8ビットのドット絵で描かれたゴシック調の世界。
しかし、今日は、いつものループが狂っていた。
「あれ、悠希くん、今日どうしたの?」
隣に座る少女の声が、白熱灯のノイズに混じって耳に届く。同じクラスの人気者、光。明るい色のセミロングヘア、大きな瞳を強調したメイクは、レトロなゲーム筐体の中では少し浮いて見える。だけど、なぜか彼女は、この空間に馴染んでいた。
いつもなら、放課後はカフェに行ったり、ショッピングモールで時間を潰したりする彼女、なぜか木曜日だけ、「レトロアーケード」に来る。
クラスだと違う世界の二人だったが、ここだとライバルだ。光は負けず嫌いで、どれだけ負けても、悠希に挑んでくる。
「いつもなら、こんなとこでやられないのに」
その言葉は、普段の辛辣さを欠いた。
「うっせーな。ちょっと集中力が……」
言い訳を探すが、言葉は見つからない。
光は、悠希の心のノイズを見透かすように、ニヤリと笑った。
「顔に書いてある」
光は、器用にジョイスティックを操りながら、続けた。
「美由ちゃんが、最近元気がないんだって」
美由。悠希が、密かに想いを寄せる、クラスメイトの名前。光の親友で、おっとりとした子。いつも光の影に隠されているが、悠希はほかのクラスメイトより美由のことを見ている。
「そ、そうなんだ……」
「悠希のこと心配してたよ。何かあったんじゃないかって」
思わず目をそらした。光は、悠希の気持ちに気づいているのだろうか。それとも、ただのからかいのつもりなのだろうか。
光は慣れた手つきで隣に座ると、空いていたコイン投入口に100円玉を放り込んだ。
「え、ちょ、ちょっと待って……」
「何? 勝負から逃げる気?」
半ば強引に始まったファイティングゲーム。しかし、告白の失敗の記憶が、まるでサンプリングされたメロディーのように、頭の中に繰り返し再生されている。いつもなら勝てるはずの相手なのに、今日は全く歯が立たない。
ついに、悠希のキャラクターが力尽きた。画面上に「YOU LOSE」の文字。
「ふふっ、完敗だね」
勝ち誇ったように笑う光。しかし、その笑顔はどこかぎこちなく、まるで彼の様子を伺っているようだ。
「悠希くん、本当に大丈夫?」
「……」
「大丈夫、美由ちゃんがダメでも、世界は終わりじゃないんだから」
光は、いつもの挑発的な笑顔でありながらも、優しい表情を見せた。
◆
「もうこんな時間か……」
光が時計を見ると、針は夜の8時を回っていた。
ここは「カセット・ストリート」。古びたゲームショップやレコード店、雑貨屋が並ぶ悠希と光のお気に入りの場所だ。
薄暗がりの中、ネオンサインが怪しげに光り輝いている。路地裏のスピーカーからは、チープなシンセサイザーとドラムマシンが刻むビートが、現実と非現実の境界線を曖昧にするように流れている。
失恋の痛みは、この音楽の中に溶け込んでいくようだった。
路地の奥に、一匹のネコが佇んでいる。灰色の毛並みに、どこか不思議な雰囲気を漂わせていた。ネコは二人をじっと見つめると、くるりと背を向けて路地の奥へと消えていった。
「ちょっと、待ってよ!ネコさん!」
光は、ふらつきながら立ち上がり、再び走り去ろうとするネコの後を追いかけた。悠希も慌ててその後を追う。路地裏の迷路に迷い込んだように、曲がりくねった道を、二人は猫を追いかけ続けた。
いつの間にか、奇妙な高揚感は消え、不安と焦燥感だけが胸を締め付ける。一体どれだけの時間、走り続けているのだろう。
「……あれ?」
ふと気づくと、見覚えのある景色が広がっていた。レトロゲームのポスターが貼られたゲーセン、80年代のアイドルのブロマイドを並べた怪しげな雑貨店。
「ここって……」
「カセット・ストリートの入り口……」
二人は、いつの間にか、元の場所に戻ってきてしまっていたのだ。
その時、時計台の鐘の音が、遠くから聞こえてきた。
「もう、こんな時間?」
悠希は、反射的に腕時計を見た。しかし、表示された時刻を見て、目を疑った。
先ほどまで、時計台の針は9時を回っていたはずだ。なのに、今は午後6時を少し回ったところを示している。
光も、自分のスマートフォンを取り出し、時刻を確認する。表示された時刻は、悠希の腕時計と同じだった。
「ありえない……時間が戻ってる?」
信じられない現実を前に、二人は言葉を失った。まるで、壊れたカセットテープのよう に、時間が巻き戻ってしまったかのようだ。
「ねぇ、悠希くん……せっかく時間があるから、一緒に街を回らない?」
光が振り返って、にっこにと笑った。
◆
時間が巻き戻ったことへの困惑は、二人の間に漂う奇妙な高揚感に飲み込まれていく。
カセット・ストリートを歩いていると、ふと風変わりな店が目に入った。「8bit fashion」と書かれた看板が、ネオンサインの明滅に照らされている。
「Mr. ケンなら、何か知ってるかも」
悠希は、淡い期待を込めて呟く。Mr. ケンは、陽気で、レトロゲームにやたらと詳しく、まるで80年代からタイムスリップしてきたような風貌の男だった。
店の中は、80年代のファッションアイテムであふれていた。原色のジャケットや、ピンバッジ、ラバーブレスレット。壁には、ゲームのキャラクターや、アイドルのポスターが貼られている。
天井からはミラーボールが吊り下げられていた。奥のカウンターでは、Mr. ケンが、ゲームボーイカラーで熱心にゲーム中。
「やあ、悠希くん、いらっしゃい。おや、お嬢ちゃんは初めてかな?」
Mr. ケンは、二人に気づくと、顔を上げた。いつものように、陽気な笑顔だ。
「あ、あの……」
普段はクラスのアイドル的存在の光も、Mr. ケンの独特な雰囲気に押されて、少しだけたじろいでいるようだ。
「実は、彼女も巻き込まれちゃって……」
悠希は、これまでの出来事を、早口に説明した。
「なるほどね。君たちは、このカセット・ストリートの"ループ"に囚われてしまったんだ」
「ループ……?」
「そう、ループ。まるで、壊れたカセットテープのように、同じ時間を繰り返す現象さ」
「でも、どうして……」
「その原因は、恐らく、あのネコにある」
Mr. ケンは、カウンターに置いてあった、古いカセットテープを手に取った。テープには、「ビート」と書かれたラベルが貼られている。
「ビート……?」
「ああ、そのネコの名前だ。ここを彷徨っている、灰色の毛並みの猫さ。彼を捕まえれば、ループから解放される。でも、簡単じゃないよ。彼は、音楽のビートに乗って、巧みに逃げ回るからね。ビートを捕まえることができれば、ループから抜け出せるはずだ。そういうゲームさ」
「ねぇ、悠希くん。一緒に、ビートを捕まえよう」
光の提案に、悠希は戸惑いながらも頷いた。
◆
Mr. ケンの話を聞いた後、悠希と光は、「8bit fashion」の外に出た。すると……。
「ちょ、ちょっと待って!?」
光の驚きの声が、カセット・ストリートに響く。悠希も、目の前の光景に言葉を失っていた。
さっきまで、雑多な店が並んでいたいびつな形の道が、まるでゲームのように整然とした直線になっていたのだ。しかも、道の両脇にはレンガ模様の壁がそびえ立ち、上には「カセット・ストリート」と書かれた派手な看板。
「なんだこれ!? マリオの世界みたいになってる!」
意外にも光は乗り気だ。普段はクールな彼女が、目を輝かせている。
すると、向こうからあのネコーービートが、しっぽを立てて歩いてくるのが見えた。
「いた! ビート!」
しかし、ビートはすばやく方向転換し、路地裏へと姿を消してしまった。
「待って! くそっ、逃げ足速すぎ!」
ビートが消えた路地裏の奥に、怪しげなアーケードゲーム機がある。その筐体には、「CATCH THE BEAT」というタイトルと、8ビットのドット絵で描かれたネコの姿が。
「もしかして……ゲームっていうのが?」
悠希が恐る恐る100円玉を投入すると、ゲームが起動。画面には、迷路のようなマップと、プレイヤーキャラクターが表示された。画面上部には、「TIME LIMIT: 03:00」の文字が赤く点滅。
「3分以内に、ビートを捕まえろってことか……」
悠希は、慣れた手つきでジョイスティックを握る。しかし……。
「くそっ! なんでこんなに操作性が悪いんだ!?」
普段はゲームの達人である悠希だが、このゲームは一味違った。キャラクターの動きは鈍く、思うように操作できない。
「何やってるのよ、悠希!?」
隣で見ていた光が、思わずツッコミを入れる。制限時間は刻々と減っていく。
「う、うるさい! ちょっと集中力が……」
「集中力も何も、そもそも操作が下手すぎる!」
「なっ!?」
結局、時間内にビートを捕まえることはできず、ゲームオーバーの文字が画面を覆い尽くす。
「あーあ、最初のステージでゲームオーバーとはね。らしくないわね、悠希」
「うっせーな……今日は、ちょっと調子が悪かっただけだし……」
「ま、元気出して。ゲームはリトライすればいいんだから」
「光は……そういうのわかんないよね」
「は?何よそれ」
「だって、光は、いつだって明るくて、ポジティブで……振られることなんて、経験したことなさそうだし」
「何それ、失礼すぎ!私だって、ちゃんと恋をしたことくらいあるわよ!」
光の頬が赤く染まる。
「……そうだな」
美由への告白の失敗、そして、この奇妙なループ。人生というゲームで、バッドエンドに迷い込んでしまったような気分だった。
光の励ましも、NPCが言う気の利いたセリフのようにしか聞こえない。
◆
時計台の鐘が鳴り響くと同時に、世界は巻き戻るように元に戻った。午後9時は再び最初の時間へ。何度目かになる「デジャブ」に、悠希は軽い目眩を覚えた。
「まだ、6時だ」
隣で光が、悠希と違ってなんか嬉しそうに呟いている。
最初の失敗から、二人はMr. ケンの古着屋に戻っていた。Mr. ケンは、「ビートは気まぐれだからね」と笑った。
悠希は、決意を込めて呟く。
「もっと連携を深めないとね」
今は美由のことを考えないようにする。そうしないと、永遠にこの時間から抜け出せない。
二人は、作戦会議と称して、しばらく「8bit fashion」に残ることにした。光は、Mr. ケンが淹れてくれた奇妙な色のハーブティーを恐る恐る口に運びながら、悠希の説明に耳を傾けている。
「あっ!」
突然光が声を発した。悠希が光の視線の先を追うと、店の外を、あのネコーービートが悠然と歩いていくのが見えた。
「今度こそ、逃がさない!」
二人は慌てて店から飛び出す。と、同時に世界が変わり始めた。
レンガ造りの建物が、突如として中世ファンタジー風の石造りの建物に変貌する。薄暗い路地は、複雑に入り組んだダンジョンへと姿を変え、スピーカーからは、勇壮な8ビットRPGのBGMが流れ始めた。
「ドラクエ?いや、ゼルダ!?」
戸惑う二人をよそに、ビートはダンジョンの奥へと姿を消す。
「追いかけるぞ、光!」
ダンジョンに入り、内は複雑に入り組んで、行く手を阻むようにトラップや障害物が配置されている。しかし、歴戦の悠希は顔色を一切変えない。
「光、次は右! トラップがあるから気をつけろ!」
「わかった!」
悠希の指示に従い、光もトラップの回避に成功。息の合った二人は、長年連れ添った冒険者のようだった。
「美由ちゃんも、こんな風に冒険できたら楽しいだろうな……」
悠希がふと呟く。
そして、光の歩きが一瞬止まった。
「どうしたの?光?」
「いや、やっぱ悠希くんってゲームうまいなと考えていただけ」
「そう」
いつの間にか会話がなくなり、二人の間には、ダンジョンのBGMだけが静かに流れている。
長い道のりを経て、二人はついにダンジョンの最深部へとたどり着いた。そこには、光に包まれたビートが静かに佇んでいた。
「ついに、捕まえた!」
悠希は、安堵とともに、ビートを抱きかかえる。
しかし、次の瞬間。
時計台の鐘が再び鳴り響きく。
悠希は、脱力感に襲われる。
そして、光の動揺している顔。
ループは、まだ続いているようだ。
◆
何度目かの午後6時。
悠希と光は、「8bit fashion」のカウンター席に並んで座っていた。しかし、二人の間には、いつの間にか見えない溝ができていた。
街に流れるLoFiも、今日は不協和音に聞こえる。光は、Mr. ケンが淹れてくれたハーブティーに口をつけることもなく、ただカップを見つめていた。
沈黙を破ったのは、光だった。
「ねえ、悠希」
「……なに?」
「美由ちゃんの、どこが好きなの?」
悠希は、光の言葉に、顔を硬くする。
「なんで、そんなこと聞くんだよ」
「だって……あの子のこと、私が一番知ってるから!」
光は、言葉を詰まらせた。悠希がダンジョンで見せた、あの弱々しい表情。そして、無意識に呟いた親友の「美由」の名前。
「……関係ないだろ」
悠希は、そっけなく言い放った。
「……そう」
光は、深く息を吸い込むと、何も言わずに「8bit fashion」を出て行ってしまった。
Mr. ケンは、ただ一人で呟いた。
「……ゲームは、勝つことだけが全てじゃないんだよ、お嬢ちゃん」
Mr.ケンの言葉に、悠希は物思いにふけた。
「……そういえば、ビートの姿が見えないね」
悠希がふと気づく。先ほどまで、店内にいたはずのビートの姿が、見当たらない。
「どこ行ったんだろう……」
「君たちの喧嘩に呆れて、姿を消してしまったじゃないか」
悠希が店内を見回すが、やはりビートの姿がどもにもない。
◆
ビートがいなくなってから、カセット・ストリートは再び奇妙な様相を見せ始める。建物は色あせ、電光掲示板の光は弱まり、人々の話し声もBGMも聞こえなくなった。
その時、どこからともなく、懐かしさを帯びたメロディーが流れ始めた。それは、LoFi ヒップホップのリズムに、どこか物悲しいピアノの旋律が重なった、不思議な音楽だった。
そして、世界がモノクロに染めていく。
「この音楽……」
悠希が顔を上げると、街の中央に設置された巨大なスクリーンに、「ビートに合わせて街を塗り替えろ!」という文字が浮かび上がっていた。
戸惑う悠希の前に、光が現れた。彼女は、先ほどの怒った様子はなく、どこか寂しげな表情を浮かべている。
「……光」
悠希が声をかけようとすると、スクリーンから光が放たれ、二人の体を包み込んだ。
次の瞬間、悠希と光は、見慣れたカセット・ストリートの入り口に立っていた。しかし、街は依然としてモノクロの世界に囚われている。
「最後のゲームだ」
聞き覚えのある声がする。振り返ると、Mr. ケンが、楽しそうな笑みを浮かべて立っていた。
「この街に色を取り戻すゲームだよ」
Mr. ケンは、そう言って、悠希と光に、それぞれスプレー缶を手渡した。
「そのスプレーを使って、街に色を塗っていくんだ。ただし、音楽のリズムに合わせて、二人で息を合わせないと色は定着しない」
悠希は、戸惑いながら、LoFi音楽に耳を傾ける。懐かしく、温かい音楽。しかし、どこか切ない響き。
「……わかった」
光も、静かに頷く。
二人は、LoFi音楽のリズムに合わせて、白黒の街に色を塗っていく。最初はぎこちなかった動きも、徐々に音楽と共鳴。悠希は、無我夢中でスプレーを動かしながら、気づけば光と同じリズムを刻んでいた。
そっか、Mr.ケンが言った、「ビート」を捕えるって、こういうことか。
「光、もっとリズムに乗って!」
「わかった!こう?」
悠希と光の掛け合いが、街に活気を与えていく。
赤、青、黄色、緑……。色鮮やかに彩られていく街並み。モノクロだった世界に、次第に色が戻っていく。
音楽が、存在しないはずのクライマックスに達したとき、悠希は、はっきりと理解した。このループは、光の心の迷いが作り出したものだと。彼女は、悠希と一緒にいたいと、この時間を繰り返していたのだ。
そして、悠希自身の心が、美由への未練に囚われていることも。
「……光」
悠希は、スプレーを地面に置き、光の方に向き直った。
「このループ、お前の気持ちで出来てたんじゃないのか?」
光は、悠希の言葉に驚き、目を大きく見開いた。
「……どうして?」
「……わかったんだ。この音楽、お前の気持ちが込められてるみたいで……いつまでも、前に進まない、そのような音楽なんだ」
「…バカ」
光は、悠希の言葉を遮るように、悲しそうに微笑んだ。
「私ね、レトロゲームなんて、大嫌いだよ。でも、大好きな男の子のせいで、私、好きにちゃったよ」
「うん…でも、ごめんなさい。俺、どうしても諦めきれなくて……」
「そんなの、知ってるよ」
光は、涙をこらえながら、再びスプレーを手に取った。
「さあ、最後までやりましょう。この街に、色を取り戻すために」
二人は、最後の力を振り絞り、街に色を塗っていく。そして、音楽がリリースを迎えた瞬間、カセット・ストリートは、かつてないほど鮮やかに色づいた。
その瞬間、街全体を覆っていたスクリーンに、大きく「Game Clear」の文字が浮かび上がる。
悠希と光は、顔を見合わせて、息を呑んだ。
そして、静寂。
時計台の針は、9時ちょうどを指したまま、ピクリとも動かない。
「……クリア……?」
光が、呟くように言った。しかし、達成感よりも、何か奇妙な違和感を感じていた。
「ビートが……どこ?」
悠希と光は、ビートの姿を探したが、どこにも見当たらない。
その時だった。
時計台の針が、ゆっくりと動き出し、9時1秒を指した。
