十二月の新国立劇場シェイクスピア悲劇『ロミオとジュリエット』観劇記 〜外国語学部英語英文学科 郷ゼミナール〜
神奈川大学外国語学部英語英文学科です。 イギリス演劇がご専門の郷先生のゼミナール生である阿部凛さんの観劇記、「十二月の新国立劇場シェイクスピア悲劇『ロミオとジュリエット』観劇記 〜外国語学部英語英文学科 郷ゼミナール〜」が『PLUSi』Vol. 21(2025年3月14日)(pp.46-47)に掲載されました。学生の視点から郷ゼミナールの魅力について紹介しています!
わたしたちは外国語学部英語英文学科郷健治教授のゼミナールで十六世紀末のイギリスの劇作家ウィリアム・シェイクスピアの作品を学んでいる。二年次の大学の授業でも郷先生の元で『から騒ぎ(Much Ado About Nothing)』という作品に触れていたのだが、今年(2024年)は郷先生のゼミナール(通称「郷ゼミ」)の元で楽しみにしていた作品『ロミオとジュリエット(Romeo and Juliet)』を一年かけて学ぶことができた。そして十二月に初台の新国立劇場にてシェイクスピアの悲劇『ロミオとジュリエット』の新国立劇場演劇研修所第18期生公演を郷ゼミ3年生14人で観劇した。

自分自身、郷先生の引率でシェイクスピアの劇作品を観劇したのはこれで三回目である。一回目は八月にあったイギリスでの海外文化研修(SEA2)プログラムで、ロンドンの本場グローブ劇場で観劇した『から騒ぎ』。二回目は十一月に郷ゼミの課外活動として明治大学駿河台キャンパスアカデミーホールで観劇した第21回明治大学シェイクスピアプロジェクト公演作の『お気に召すまま』。そして、三回目が今回の『ロミオとジュリエット』である。この3つの作品はどれもシェイクスピアの作品であるが、『から騒ぎ』と『お気に召すまま』は「喜劇」であり、『ロミオとジュリエット』は「悲劇」というジャンルに分けられる。「悲劇」というものは最後には「死」に結びつくのだが、今回観劇した『ロミオとジュリエット』は今まで観たシェイクスピア劇とは大いに違い、衝撃を受けた。どんなものだったのかを説明する。

今回は悲劇である『ロミオとジュリエット』の観劇だったが、前回観劇した喜劇である『お気に召すまま』とは対照的になっていて、喜劇と悲劇の違いが明白だった。『お気に召すまま』では舞台の装飾や衣装、小物などたくさんのものを使い、物語の雰囲気、場面展開がどんな人でもわかりやすいようになっていた。しかし、今回の新国立劇場小劇場での『ロミオとジュリエット』では、服装はみな似たようなものでデザインが少しだけ違っている程度で、それ以外は舞台装飾は照明、クリスマスツリーに飾ってあるようなライトだけ。初めは小劇場の真ん中の空っぽのステージだけでどう表現していくのか気になったのだが、むしろ “無駄がない状況” で役者の演技がより際立ったと思った。そして、メインだと思っていた “ロミオとジュリエットの恋の始まり” はいつ来るのかと思っていたら、初めの場面では授業で習ったことのなかった台詞、演出があり、それこそバイオレンスに表現されていたため、自分が知ってきた『ロミオとジュリエット』ではないと感じた。また、“恋に落ちた2人の心が踊る出会いの場面” も、キスシーン、ベッドシーンなども最小限で、その代わりに、敵同士の激しい争いを強調していた。そのような演出のおかげで、どんなに家族が憎い敵であっても、それでも相手を無我夢中で求め、愛し合っている若者の気持ちを強く感じた。私が知っている “愛” とは違う次元の激しい “愛” を見つけてしまったと思った。

また、今まで観たことのなかった、二つの場面を同時に演じるというやり方。ここでは初夜を迎えたロミオとジュリエット、そして、キャピュレットの人たちの会話であったのだが、ひとつひとつ演出をするより、同時に演出した方がより一層物語に夢中になれることからとても賢い方法だと思った。個人的に一番好きな場面は、舞踏会の場面がディスコ風に表現されていて、役者たちの踊り方がひとりひとり個性があり、ライトを使って時が止まったかのように表していたのを観た時で、鳥肌が立つくらいよかった。そして、いちばん驚いたのが、ジュリエットの父親キャピュレット役を演じた男性で、敵に対して暴力的でもあるが、娘を想う優しい父親、しかし反抗されると力で相手をねじ伏せる。敵のモンタギューへの憎しみなど、どれも “素” なのではないかと疑うほど役に入っていて、役への愛を感じた。最後に全体的に言えることは、自分が知っている『ロミオとジュリエット』とは違うバイオレンスさ、過激さがあって、舞台上で小道具さえもほぼ使わないことによって役者ひとりひとりの演技が際立ち、どの場面も飽きずに無我夢中で観ることができた。結末がわかっていても尚、自然と涙が出て感動もした。そして、最後の場面で役者たちの「ありがとうございました!」を聞くまで、息を吸うのを忘れるくらい夢中になっていた。

喜劇、喜劇、悲劇の順番で今回『ロミオとジュリエット』が観劇できたのは貴重な経験だった。また、ゼミの授業では、毎週の授業に先立ち、指定されたシェイクスピア作品の範囲を英語と日本語で読んで予習し、考察をまとめる。それを郷先生にみてもらい、授業で詳しく作品に触れさせてくれたおかげで、『ロミオとジュリエット』は “恋に落ちた若者” だけの物語ではなく、恋愛だけではない意味のある深い物語であり、人々に愛されてきた理由などもよくわかった。そして、今回『ロミオとジュリエット』を演じた若者たちに対して、同じくらいの歳の人たちがここまで演技だけで迫力のある演出ができたこと、そのために沢山稽古してきて “劇以上のもの” を完成させているということに感動した。私は郷ゼミに入ってから感動させられるばかりであったが、今回もこの劇を完成させた彼ら新国立劇場演劇研修所の第18期生たちには圧倒された。
阿部 凛(記)
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郷先生の「Professor's Showcase」の記事、「SEA(Study English Abroad)2:イギリス文化研修体験談(2024年度)」もあわせてご覧ください!
