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第27回 神奈川大学英語教育研究大会レポート ~活躍する卒業生~

神奈川大学外国語学部英語英文学科です。今回は、2025年12月20日(土)に開催された、第27回神奈川大学英語教育研究大会について、髙橋一幸先生にレポートしていただきました。


大会概要

2025年12月20日(土)に第27回神奈川大学英語教育研究大会を開催しました。参加者は、本学の教職課程学生だけでなく、他大学学生や卒業生や一般参加の小中高大の現職英語教員、英語教育関係出版社の方も含めて135名でした。

中学校授業研究

中学校授業研究では、久保野先生が教育実習訪問指導などを担当された本学外国語学部英語英文学科2011年度卒業生の市川夏樹先生(横浜国立大学教育学部附属横浜中学校教諭)が中2の授業を公開してくれました。市川さんは卒業後有名航空会社のグランドスタッフとして就職されましたが退職し、「君は教師に向いている」という久保野先生の言葉を思い出して、私立高校での勤務を経て、横浜市立中学校臨任教員として勤務し採用試験に合格して教諭となられました。その後、熱意と指導力が高く評価され、髙橋・久保野先生の前職である国立大学附属校の教諭として活躍されています。横浜市の公立中学校では、教科書本文を、①リスニングによる概要理解→②音声と文字の一致→③音読→④穴あき音読→⑤リテリング、の順に教科書を5回繰り返し学修する「5ラウンド制」の授業を行っていたそうですが、勤務校を変わり使用する検定教科書も変わったので、指導手順の決まった5ラウンド制にとらわれず、題材により自ら目標を設定し、目標に応じた指導手順と生徒にとって必然性のある言語活動を工夫するようにしているとのことで、市川さんらしさの出る優れた授業を見せてくれました。生徒を観ながら主体的・自律的に授業を設計することで、彼女の指導力は一段と伸び、教師としてさらに成長していることが伝わってきました。

市川夏樹先生(写真中央)

高等学校授業研究

高等学校授業研究では、髙橋ゼミ生で2017年度本学大学院外国語学研究科修士課程を修了した小枝(旧姓・横澤)聡子先生(神奈川県立希望ヶ丘高等学校教諭)が高2の授業を公開してくれました。All Englishで進める授業でしたが、その発音のすばらしさ流暢な英語運用能力は、現役ゼミ生に大きな刺激を与えてくれたと思います。生徒の憧れの対象になってこそのプロの英語教師です。「発問能力は、教師の指導力の要」と言われますが、授業では、生徒の思考を促し、考えを引き出すreferential questionsが次々と問い掛けられ、それを全ペアで「やり取り」させ、さらに全体の場で発表させ、クラスのみんなで共有する “Think → Pair → Share” の手順で授業を進めます。生徒は即興で自分の考えを一生懸命に英語で述べるのですが、もちろんその発話の正確さ(accuracy)は完全なものではありません。ここで教師が、生徒の意図を理解して即興で正しい英文として言い直し(recast)してクラスの生徒全体で共有します。このrecastはほとんど即興での対応となり、教師の英語運用能力が問われる難しい上級編の指導となります。小枝さんのoral introductionとrecastは実に見事でした。

小枝(旧姓・横澤)聡子先生(写真中央)

二人の先輩たちは、現役学生諸君の目標とすべきロール・モデルとなる「学び続け、生徒と共に成長し続ける教師」です。 

最後の講演には、長く東京都の公立中学校で教鞭をとられ、上智大学や愛知淑徳大学でも英語科教育法等の指導を担当され、自ら現職の英語の先生方を支援する研究会を主宰して学校英語授業の改善に取り組まれている北原延晃先生をお招きしました。先生は、大修館書店より出版されたご著書をもとに「中学生から始める英語フォニックス指導」をテーマに教室での実践の成果に裏打ちされた指導方法をお話しいただきました。小学生のお孫さんに対する英語発音指導の微笑ましい様子もご紹介いただきました。北原先生は葛飾柴又のご出身だそうで「寅さん」のような気さくでユーモアを交えた話しぶりに聴衆も惹き込まれました。

最後に、来年度から教職課程に本登録して教員をめざして本格的に勉強を始めようとしている1年生のAさんと、4月から公立中学校教諭として教壇に立つ4年生のBさんの、先輩の授業を観た感想を1つずつ掲載します。三年間の教職課程の学修を通した学生の成長がよく分かります。

今までは授業を受ける側で、言われた通りにこなすだけだった。どのようにしたら生徒にとって良い授業なのか、どのような形態を取ったら子ども達がもっと考えられるのかなど、ひとつひとつの授業のために試行錯誤をしている教師側の話を聞いて、改めて大変な職業だなと思った。また中学時代、適当に授業をこなしていた自分を反省した。私から見て生徒のことを思ってここまで授業形態やプリントなどを用意しているのに、今日発表を聞いていた会場の先生方から、惜しいポイントなどいくつかの指摘やより良くするための助言が出されたのが驚きだった。自分もそういう部分に気づけるように、これから勉強していきたいと思った。

1年生のAさん

中学校の授業からの気づきは大きく分けて2つある。1つ目は、ICTを導入するタイミングである。まず、情報を集めて話せるようになってから、英文を書かせていた。教科書から使える表現がないか生徒が主体的となって探しながら、さらに英文を深める。最終的にタブレットを使いながら自分の書いた英文を推敲していった。AIやICTが発展している現代、それらを使用するタイミングや使い方を吟味すれば、効果的だと分かった。タブレットに日本語を打ち込めば1秒で英語が出てくる世の中であるけれど、それで生徒の表現力が伸びるのかという話だと思う。2つ目は、「目的を考えて技能を選ぶ」 ことである。今回の授業ではALTの先生が家族と日本に旅行に来るということで、紹介するターゲットは、ALTの先生だけでなく、家族も重要である。したがって、ALTしか聞くことができないスピーキングの発表活動ではなく、ライティングでパンフレットを作成し、家族にも見てもらえるようにした。これは 「目的、場面、状況」 を考えた上での技能の選び方で、リアルさがあり生徒も興味を持って取り組めると思った。
高校の授業では、Phrase of the Dayという帯活動から始まった。もし私が小枝先生の生徒だったら、このような活動はとても興味があり、教科書などでは学べない表現を学べてとても嬉しく思うだろう。授業において、私が感じたことはTeacher talkの正確さ、先生の即興での英語力の凄さである。まず、小枝先生の声の大きさやイントネーション、表情の作り方に圧倒された。先生自らが英語を使うことを楽しんでいるのがとてもカッコよかった。また、発問の仕方についても生徒が答えやすい工夫がされていたと思う。私が卒論で取り上げた 「発問と活動」 にも繋がってくるが、display questionsだけでなく、inferential questionsやreferential questionsがメインとなっており、生徒はあれほど難しいAIの内容の教科書本文題材でさえ 「自分ごと」 として考えていた。また、先生が、自分のした発問に対して答え方の型を提示することで、先生から与えるところと生徒に委ねるところを明確にしていた。もし答え方の提示がなければ、「どう言ったらいいか分からないから諦める」といった生徒も出てくるかもしれない。
中学と高校の授業を見て、私が考えた共通点は、backward designの授業設計と生徒の興味・関心を理解した上での動機づけである。どちらの授業も最終目標を設定し、それを達成するためにはどのような活動を行うべきなのかを先生たちが考え、backwardで授業を作り上げていた。また、その活動や教科書本文を読む上で生徒が自ら 「ALTの先生におすすめの場所を教えたい!」、「ANIとAGIの違いは何だろう?」、「2045年に何が起こるんだろう?」 など、生徒が 「伝えたい」、「知りたい」 と思うような発問や状況を作っていた。私の卒論でも扱ったように教師の発問の仕方は本当に重要であると改めて感じた。

4年生のBさん

記:髙橋一幸


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