【旅行記】第一章 終わらない旅路編③-ヨーロッパ周遊ひとり旅
2時間ほど飛行機に乗って、仁川国際空港に着陸した。実のところ、韓国に降り立つのはこれが初めてだった。福岡に住んでいた頃、せっかく近いから行きたいと思ってはいたものの、結局行けずじまいだった。
数時間の滞在で、かつinternational transferの制限区域内だけの滞在だから、できることは限られている。でも何か韓国料理を食べようと思って、次のフライトのゲートに最も近い場所にあった韓国料理屋に入った。
メニューを見ると、beef and tofu soupのような名前のチゲらしきものがあった。この後に8時間半のフライトが控えているのに、辛いものを食べて、お腹を壊したりでもしたらどうするんだ、という声が聞こえてくるようだ。辛いものを食べなかったら、韓国料理を食べれないじゃないか。私は、レジにいた女性に、「このbeef and tofu soupをください」と言った。
彼女は私にレシートを差し出した。「あなたの番号は2072よ。そこの電光掲示板に番号が出るから、出たら受け取りに来て。」
窓際の席は、滑走路を一望できた。私は、端の方の窓際の4人席に腰掛けて、電光掲示板を見つめていた。周りでは、ちらほらと旅行客が食事をしていた。これから海外に飛び立つであろう韓国人が多かったように思う。私の右斜め前では、50代後半ぐらいの男性4人が、ビールを片手に宴会を開いていた。
2072番が呼ばれた。受け取りに行くと、おばあちゃんがキッチンに立っていて、私のレシートを見せると、無表情でチゲを指差した。韓国語で何か話しかけられたが、あいにくさっぱりわからなかった。韓国語が伝わらないとわかると、おばあちゃんは早々に背を向け、次の料理に取り掛かった。私は、金属でできたシルバーの什器を一通りトレーにのせて、窓際の席へ戻った。

チゲは、髪の毛が逆立つ程には辛かった。唐辛子マークは1つしかついていなかったのに。ただ、辛いだけではなくて、旨みもしっかりあった。一方、副菜のキムチはそこまで辛くなく、食べやすかった。右上のものは豚肉の味噌辛炒めに近いものだったが、冷めていてそこまでおいしくはなかった。
初めての本場の韓国料理を食べ終わる頃には、ちょうど次の便の搭乗が始まっていた。仁川発、マナス行きのティー・ウェイ航空のフライトである。
急いで搭乗ゲートまで向かう。マナスはキルギスにある空港で、決して大きな空港ではないから、韓国人かキルギス人がその大半だろうと思っていたが、実際は中東の戦争で迂回せざるを得なかった各国の旅行客でごった返していた。数カ所で日本語を聞いた。卒業旅行に来ている日本の学生のようだった。
私は進行方向の左側、通路側の席だった。私の右隣には二人、友人同士の外国人が座っていた。その片方は韓国語を器用に操っていた。彼らの話し声は大きく、また後方から子どもの泣き声もしたが、boseのヘッドホンをつけてノイズキャンセルをすると、雑音が数キロ先のこもった音のように聞こえた。私は、そっと目を閉じた。
こうして、次なる国、キルギスへと飛び立った。
