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泣いていた息子が、なぜか自分から椅子に座った

4月最後の日。
小雨が降る中、徒歩5分の歯科へ
子どもたちと歩いていった。


3ヶ月に一度の定期検診。

娘はもう慣れたもので、シーラントの処置も平気だ。
30分ほど、椅子の上でじっとしていた。

息子はまだ少し怖いらしい。
毎回、「いやだ!」と言って椅子に座るのも嫌がる。

今回も娘が先にやっている間、ずっとソワソワしていた。

「つぎ〇〇(息子)ちゃんやる?」
「もう終わる?」と何度も聞いてくる。

不安がそのまま言葉に出ていて、
私の手もぎゅっと握っていた。


パイプ椅子に座ったり降りたりして、落ち着かない。


娘が終わり、いざ自分の番になると、
「いやぁー!こわいー!」と逃げようとする。

最初は、
「怖いよね、嫌だよね。
だけどムシバキンマンやっつけるからするよ」
と声をかけたけど、うまくいかない。

だから、少しだけ現実を伝える。

「座らないなら、座らせるね。
嫌がっても、やるからね」

そう言うと、スンっと静まり返って
なぜか自分から、椅子によじ登った。

その背中が、なんだか見知らぬ子みたいだった。


そこからは、「ぐちゅぐちゅぺっしたい」
歯科衛生士のお姉さんに頼んで、うがいをしていた。

さっきのイヤイヤが嘘みたいに、
自分の意思を伝えている。

さっきまで逃げようとしていたのに、
もう別人みたいだった。


そして最後まで口を開けて、先生に褒められていた。

「2歳でこれだけできるなら、
保育園の歯科検診で、お手本になれますよ」と言っていた。

──────────

帰り際、椅子から降りながら、
息子がぽつりと、歯科衛生士さんに言った。

「おねえさん、かっこいいね」

受付の人にも、同じように言っていた。


帰り道、小雨の中を3人並んで歩く。
ふと息子の顔を見て、「成長したな」と思った。

子どもの成長は、いつも分かりやすいわけじゃない。
でも気づいたときには、進んでいる。

怖いままでも、やれるようになっていた。
それも、想像以上に。

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