重層的支援を止めてはいけない-「親なきあと相談室」が教えてくれる、これからの地域福祉のかたち‐
最近、重層的支援体制整備事業をめぐる動向が気になっています。
かつて、2025年4月、全国社会福祉協議会の政策委員会と地域福祉推進委員会は、重層的支援体制整備事業の交付金基準額引き下げや、多機関協働事業の外部委託を認めない方針に対し、「極めて遺憾」とする要望書を厚生労働大臣に提出しました。
全国社会福祉協議会は、複雑化・複合化する地域課題に対応するためには、多様な主体との連携や地域特性に応じた運営が不可欠であると訴えていました。
https://fukushishimbun.com/jinzai/40080
現場ではすでに、
行政職員の人材不足
地域包括支援センターの業務過多
ケアマネジャー不足
社会福祉協議会の負担増
などが続いています。
そのような中で、「重層的支援」という言葉は知られていても、実際にエンジンがかかり始めた地域はまだ決して多くありません。
しかし私は、だからこそ今こそ重層的支援が必要なのではないかと思うのです。
福祉の課題は、もう縦割りでは解決できない
重層的支援体制整備事業は、
高齢
障害
子ども
生活困窮
といった分野別の制度では対応しきれない課題に対し、
属性を問わない相談支援
参加支援
地域づくり支援
を一体的に行う仕組みです。
実際の現場では、
80代の親と50代の子どもの8050問題
ヤングケアラー
孤立した高齢者
障害のある子どもを抱える高齢の親
精神疾患と経済的困窮が重なった世帯
など、一つの制度だけでは対応できない相談が増え続けています。
https://www.cfa.go.jp/sites/default/files/node/basic_page/field_ref_resources/f68d1d4a-a32b-45b1-92a8-57379386e89f/558b56e8/20230822_policies_kosodateshien_jyuusoutekishien_01.pdf
私自身も重層的支援体制整備事業について学び、
講義やシンポジウムで取り上げてきましたが、
多機関が役割分担しながら支援することで
初めて解決の糸口が見えてくる事例は少なくありません。
「親なきあと相談室」が示していること
そんな中、福祉新聞の記事でとても印象的だったのが、大分県社会福祉事業団が運営する「親なきあと相談室」の取り組みです。
障害のある子どもを持つ親の多くが、
「自分が亡くなったら、この子はどうなるのだろう」
という不安を抱えています。
福祉新聞の記事によれば、日本財団の調査では、
親亡きあとに不安を感じる家族は86%に上る一方で、
何も準備していない家族も43%にのぼるそうです。
[fukushishimbun.com]
相談内容は、
住まい
財産管理
成年後見
将来の生活設計
医療
福祉サービス
家族関係
など多岐にわたり、
それぞれが複雑に絡み合っています。 [oitaswo.jp]
ここで印象的なのは、
相談室が単に制度の説明をする場所ではないことです。
まずは家族の不安を受け止める。
そして必要に応じて、
司法書士
社会保険労務士
福祉専門職
などへつなぐ。
つまり、「相談の入口」と「多機関連携のハブ」の役割を
果たしているのです。
福祉だけでは支えきれない時代へ
近年の地域課題を見ていると、福祉職だけで解決できる問題は
減っているように感じます。
例えば、
親亡きあとの財産管理
成年後見制度
相続
遺言
家族信託
消費者被害
権利擁護
などは、法的な知識が不可欠です。
また、
虐待対応
離婚問題
債務整理
居住支援
では弁護士との連携が重要になります。
医療的な課題が大きければ医師や訪問看護師。
就労支援なら企業やハローワーク。
社会参加なら地域住民やボランティア。
つまり、これからの地域福祉は、
「福祉が頑張る」のではなく、地域全体で支える仕組みをつくること
が重要になってくるのだと思います。
関係性こそ最大の社会資源
私は最近、
「関係性は最大の予防策」
ということをよく考えています。
孤立している人ほど、
相談先を知らない
制度を知らない
助けを求められない
ことが多い。
そして問題が深刻化して初めて発見されることもあります。
「親なきあと相談室」に寄せられた声の中には、
「誰にも話せず追い詰められていた」
というものがあったそうです。
支援は必ずしも制度から始まるのではありません。
まずは不安を話せる相手がいること。
そして必要な専門職につながれること。
その小さな関係性の積み重ねが、重層的支援の出発点なのかもしれません。
おわりに
重層的支援体制整備事業をめぐっては、交付金の見直しなど厳しい話題も続いています。
しかし現場では今まさに、
高齢
障害
子育て
生活困窮
孤立
が複雑に絡み合う課題が増えています。
だからこそ必要なのは縮小ではなく、
「どうしたら多機関がつながれるのか」
「どうしたら地域の中で支え合えるのか」
を考え続けることではないでしょうか。
福祉だけで抱え込まない。
行政だけに任せない。
そして専門職だけに背負わせない。
「親なきあと相談室」が示しているのは、
制度を超えて人と人、人と専門職、
人と地域をつなぐ仕組みの大切さなのだと思います。
私たち一人ひとりも、そのネットワークの一員になれるのかもしれません。
「あなたの地域には、不安を話せる場所がありますか?」
素敵な取り組みがありましたら、教えてくださいね。
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