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キジも鳴かずば撃たれまい

川のほとりの小さな村に弥平とお千代という貧しい親子がいました。

ある日お千代は重い病で寝込んでしまいました。弥平は看病をするも医者に診てもらう事も出来ません。
何か食べたいものはないか?と聞く弥平にお千代はたった一度だけ食べた事のある 「あずきまんま」が食べたい。と言いました。
ですが弥平の家には小豆も米もありません。

弥平は悪い事だと思いましたが地主の蔵から一握りのあずきと米を盗み、お千代にあずきまんまを食べさせました。
徐々に元気になったお千代は手毬で遊べるほどになりました。

弥平が畑仕事に出かけて留守の間、お千代は手毬をつきながら「あずきまんま食べた」と嬉しかった事を歌にして歌っているのを村人に聞かれてしまいました。

貧しい弥平の家にあずきなんてあるはずがない。きっと地主様の所から盗んだに違いないと村人は地主に告げ口をしに行きました。

地主は弥平が嫌いでした。
年貢もきちんと払えない。貧乏なのに自分の働ける分しか働かず
もっとしっかり稼ごうという心意気も感じなかったからです。

早速地主はお役人を呼び、弥平を捕まえてもらいました。
目の前でお役人に連れていかれるおとっつぁんを見てお千代は泣き叫びました。

泣いて泣いて声も枯れ果てたのか何日か経った頃ぱたりと泣き声は聞こえなくなりました。

それからお千代は誰の手伝いも施しも受けず一人で暮らしました。

たった一握りのあずきと米を盗んだばっかりに捕まってしまった弥平とあずきまんまが食べられた嬉しさを歌ったばかりに一人になってしまったお千代を見て、村人はだんだんと二人が可哀そうになりました。

それから何年か経った頃、猟師がキジの鳴き声を聞きキジを撃ちました。
キジが落ちた所へ行くと、そこには両手でキジを抱いたお千代がいました。 そして寂しそうに「キジよ。お前も鳴かずば撃たれまいに。」と言いました。
数年誰もお千代の声を聴いた者はいません。
猟師は「お千代、お前声が出せたのか」と大変驚きました。

この話は直ぐに村中に伝わり、偶然村を通ったお侍さんの耳にも伝わりました。
「ほう。何年も声を出さずに一人で生きてきた娘か。」
お侍さんはお千代を珍しく思い、お城に連れて帰る事にしました。
お城に連れていかれたお千代は女中として働くことになりましたが 何も文句を言わず、ただ黙々と仕事をこなしていくので城中でも噂になりました。

そしてとうとうお殿様までその噂を聞き、お千代は政の聞き手役になりました。
お千代はお殿様に何を言われても声を出さず、ただ話を聞くだけで 誰かに秘密を話す事も無かったので お殿様はお千代の事を大変気に入りました。

ある日お殿様はお千代に今までの褒美に何か欲しいものは無いか?と尋ねました。

お千代は「おっとうと会いとうございます。おっとうと一緒に暮らしとうございます。」と 泣きながら言うので お殿様は部下を集め流罪になったはずの弥平を探させました。

そして間もなくお千代は弥平と再会し 二人仲良く暮らしました。




あとがき

このお話は、以前「キジも鳴かずば~」をアレンジして。とリクエストされ、考えたお話です。
ですが私のイラストの絵柄と違う路線なので、どうしようか迷っている間に何か月も過ぎてしまいました。
頭の中ではいつもと違うタッチで描いても良いかな?と思ったり…。

とりあえず、元のお話が暗い印象でトラウマになっている方もいるようなので、本来のエンディングに付け足して「お千代は黙々と仕事をこなし、ついにはお殿様に褒められた」所までいきました。

気に入って頂けると嬉しいです。

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