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進めないんじゃない。居心地が良かっただけ。

人生を変えたのは、大げさな出来事だけではありませんでした。
「やらなきゃ。」
そう思っているのに、なかなか進めないことがありました。
スタッフを雇うための準備です。
部屋を空っぽにするための片付けに取り掛かるまで、3か月かかりました。
そして動き始めてからは、たった1か月で空っぽになりました。
そこからレースカーテンを選ぶために、窓の寸法を測る。
たった数分で終わることなのに、いつも後回しにしていました。
「面倒だしなー」
「忙しいしなー」
そんなふうに思っていたんです。
やらない理由を探しながら。
でも、ある時ふと気づきました。

私は進めなかったんじゃない。
居心地が良かっただけだったんです。
昔の私は、「安心」というものをあまり知りませんでした。
離婚や子育て、仕事。
毎日が目の前のことで精一杯で、「次へ進む」より「今日を乗り切る」ことが優先でした。
だから今の生活は、ようやく手に入れた穏やかな毎日です。
好きな仕事をして、
好きなお客様に囲まれて、
家に帰れば落ち着ける場所がある。
そんな毎日が、本当に心地いい。
だからこそ、サロンを変えるのは少し怖かったんです。
でもスタッフを迎えるということは、サロンが変わるということ。
一人で完結していた空間に、新しい風が入ります。
もちろん楽しみです。
でも同じくらい、「今のままでいたい」という気持ちもありました。
そんな自分に気づいた時、少しホッとしました。
怠けていたわけじゃない。
逃げていたわけでもない。
ただ、ようやく手に入れた安心を、大切にしたかっただけなんだと。
そう思えたら、不思議と気持ちが軽くなりました。
未来を変えるって、大きな決断をすることだけじゃない。
今日の私なら、
レースカーテンの寸法を測る。
それだけで十分です。
未来は、そんな小さな一歩の積み重ねでできていきます。
変わることは、今を否定することじゃない。
今の幸せを抱きしめたまま、次の扉を開くこと。
だから今日も、小さな一歩を踏み出そうと思います。
未来の自分を迎えに行くために。

#創作大賞2026 #エッセイ部門

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