なぜかつまらないハムレット?
目下、SPAC(静岡舞台芸術センター)の俳優のみなさんと稽古中の「ハムレット」。
言わずと知れた、シェイクスピアの名作です。
去る9月27日、SPAC俳優の榊原有美さんと、配信プラットフォーム「シラスチャンネル」で稽古の模様などについて徒然にトークをさせていただきました。
夜が深まるにつれトークは盛り上がり、気がついたら三時間近いおしゃべりに。
せっかくなので多くの方に見ていただきたいと思い、こちらの記事末尾でもyoutube動画を公開することにしました。メンバーシップの皆様は無料でご覧いただけます。
(私のマイクの着け位置が悪くてちょっと私の声が小さめです)
どうぞ最後までお読みいただけたら嬉しいです。
なぜかつまらないハムレット?
皆様の中で、ハムレットを生の舞台でご覧になった方はどれぐらいおられるでしょうか?
私は、宝塚版以外では、いつかロンドンのナショナルシアターあたりで見た有名な俳優のハムレットだけかもしれません。
最近気がついたのですが、ハムレットをやるんですと言って、演劇好きの人と話していると、しばらく話した後でほとんどの人がこんな感じのことを言ったのです。「ハムレットって、面白いんですかね…いままで何回か観たんですけど…もにょもにょ…」
あまりに皆がもにょもにょ言うのでちょっと興味深くなってきました。
稽古場でも俳優さんとの雑談で、「ハムレット」って舞台化してるのを観るよりも文字で読む方がさらに面白い気がする、という意見が出たり。これは、演出が悪いとか役者が良くないという意味ではなく、生身の人間が短時間で演じると哲学的な難解な内容がすぐに伝わらなかったりして観客がカタルシスに達しにくい、もしかしたら文字で立ち止まりながら読むほうが理解しやすい戯曲なのだということかもしれません。
友人の間では、「ぶっちゃけ、観てもストーリーがなんかよく分からなくって…だから?って感じで…」と言う人も結構いました。
でもシェイクスピア研究者の間では「ハムレット」は金字塔です。ハムレットが一番好きだと言う専門家も多い様子。
私もハムレットを今回取り上げたことでよく読み込んでみて初めて、自己への内省、人間とは何かという問い、生死についての問い、時代の過渡期における葛藤など、複数の哲学的なテーマが何重にも層をなしているとてもぶ厚い作品だということがわかってきました。
でもこうやって読み込む前の私はというと、わかりにくいと言っていた友人たちと感想は近かったのです。
話は単純なのに、わかりやすい順番のストーリーテリングになっていないから、層をなす哲学的テーマを味わうより前に、「あれ?この人って今はどうなってるんだっけ?」と情報を追うのに必死になって、結局はテーマにたどり着く余力なく終わるという感じでした。
戯曲を通読しても、他のシェイクスピア作品よりずっと、非合理的な作劇とかキャラ設定がされていて、頭が無理やり辻褄を合わせるのに疲れて最後まで読み通すのに苦労してしまいます。
そういうふうになっている理由の一つには、この「ハムレット」という物語はシェイクスピアのオリジナルではなく当時にヒットした大衆的なメロドラマをシェイクスピアがリライトしたから、シェイクスピアが一から書いた作品のようなスマートな構成になっていないという説があります。
もう一つ、上演時のわかりにくさについて言えば、戯曲がそのまま演じると5時間もかかる長さのため、通常は半分以下にカットをすることが多く、ダイジェスト版なのでわかりにくいということもありそうです。(なんと今回のSPAC版は1時間45分程度にする予定です。話がわかるようカットできるのか?ドキドキ)
今回、私が演出するにあたっては、時系列を整理し、一つの話題について複数の場面にまたがって語られているのを一つの場面に統合してとにかくストーリーテリングをわかりやすくしようとしています。
また、美しいのだけれども耳で聞いてぱっと意味がわからない詩文(特にキリスト教的な概念の含まれるところ)を、上田オリジナルの現代口語に書き換えた場面を作って、直感的に現代人が意味を体感できるようにし、元の格調高い河合祥一郎訳と共存するようにしています。
この記事では、ハムレットの奥深さに私が少しでも近づくのに役立った豆知識と、あらすじを私流にわかりやすくご紹介し、最後に「特別対談企画 SPAC版ハムレットについて稽古の様子など徒然語り」の動画リンクを掲載したいと思います。
まずはあらすじのほうから。
