あなたがもしオランダで学びたくなったら|佐藤麻衣子
佐藤麻衣子
さとう・まいこ 京都市在住。プログラムコーディネーター/ミュージアムエデュケーター。2025年アムステルダム芸術大学ラインワルトアカデミー ミュージアム&ヘリテージスタディーズ修了
第2回目の連載は、「オランダの博物館から何が見えるか?」と題し、ミュージアムの用語や機能、オランダのミュージアムの特徴、日本との違いについて書きました。
3回目からは、オランダでの大学院の勉強について触れていきます。今回は、大学院への準備や学校の様子、オランダで学ぶことについての考察を紹介します。
大学院に行くきっかけ
1年間の文化庁海外研修制度のあとは、オランダに引き続き滞在し、大学院への進学を目指しました。理由は、オランダのミュージアムを見れば見るほど、自分の知識不足を感じたからです。ミュージアムで扱われているトピックは、気候変動や歴史認識の見直し、ジェンダー不平等などであり、現代社会で起こっている問題と切り離せません。大きな学びがあると同時に、自分の知識不足や、いかに日本で平和ボケしていたのかに気付かされました。これが、ミュージアムについて学べる大学院に進むモチベーションになりました。

アムステルダムの中心地にある学校
わたしが通っていた学校は、ラインワルトアカデミーといいます。アムステルダム中心部の東側にあり、第二次世界大戦までユダヤ人が多く住んでいたエリアです。周辺にはシナゴーグ、昔のシナゴーグをミュージアムに改装したジューイッシュミュージアム、第二次世界大戦中の抵抗運動(レジスタンス)を紹介する抵抗運動博物館、ホロコーストミュージアム、国立ホロコースト記念碑などがあります。学校の前には、ライデン大学の植物園の分館があり、動物園Artis Zooも徒歩圏内です。
街中とはいえ、賑やかすぎず、歴史や文化施設に囲まれていて、心地のよいエリアでした。立地のおかげで、午前中はミュージアム訪問、午後は学校で授業というスケジュールもあったくらいです。

オランダの学校制度
他の学校は受験しておらず、ラインワルト・アカデミーが1択でした。実践的な側面とアカデミックな側面の両方からミュージアム&ヘリテージ・スタディーズを学べる学校は、オランダ国内ではここだけだったためです。
オランダの高等教育機関には、大きく分けて WOとHBOの二種類があります。WOは研究を中心とした大学教育を行い、日本の大学院に近いアカデミックな性格を持っています。一方、HBOは理論と実践を組み合わせた教育を行う応用科学大学(University of Applied Sciences)で、日本の専門職大学院に近いイメージです。どちらの教育機関でも修士号を取得できます。
ラインワルト・アカデミーはHBOに分類されており、現場で働くプロフェッショナルの話を直接聞けることや、授業の一環としてミュージアムを訪問する機会が多いことに魅力を感じました。

オープンデーへの参加
国立ホロコースト記念碑を訪れた際、目の前に学校があることに気づきました。かねてからミュージアム・スタディーズを勉強してみたいと思っていたため、偶然の出会いでした。調べてみると、実践を重視する学校の方針に魅力を感じたため、まずはオープンデーに足を運んでみることにしました。
責任者の先生から、学校の紹介やミュージアム&ヘリテージ・スタディーズについての説明があり、卒業生の経験を聞く時間がありました。面白かったのは、最後に簡単な夕食が提供されたこと。夕方から始まったので、終わる時間は夕食どき。学食でスープやパンを食べながら、先生や他の参加者とコミュニケーションを取る時間になりました。アットホームな学校の雰囲気や、古い建物に施されている現代的な内装デザインも気に入り、「ここで勉強したい!」と決意しました。

入学準備
ここから先は
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?
