短編 | 嫌だなぁと思うと能力が増える
僕は14歳頃から「嫌だなぁと思うと能力が増える」ようになった。
たとえば、外で急に雨が降ってずぶ濡れになった時、本がめちゃくちゃ速く読めるような「速読スキル」が身についた。
他にも鳩のフンが頭の上に落ちてきた時、二桁の掛け算ができる「暗算スキル」が身についた。
おもしろくなって、色々試した所
「嫌だなぁ」って気持ちの大きさが、身につくスキルの便利さに影響を与えているみたい。
だから「嫌だなぁ」って思うことが起こりそうなことを色々してみた。
不良がたくさんいるゲームセンターで絡まれる
→「タイピングスキル」
ユカちゃんに告白して振られる
→「カメラアイスキル」
自転車にぶつかる
→「50mを6.4秒で走るスキル」
などなど。
「嫌だなぁ」ってことが起こりそうなことを試しているうちに気づいたのは、何かや誰かに悪いことをしたら、結構な確率でそれが返ってくるということ。
人の悪口を言ったら、どこかで僕の悪口を言われ(→「今何時かわかるスキル」)、妊婦さんに席を譲らなかったら、疲れてるときに席を取られる(→「しゃっくりが40回で止まるスキル」)、落ちてる財布をネコババしたら、財布を落とす(→「5円を10円に変えるスキル」)などなど。
なんとなく
『悪いことをしたら「嫌だなぁ」って事が起こる』。
そんな気がするようになった。
さらに、不思議と身につける能力がしょぼくなってきた。
今までだとすごい能力が身につくような出来事があっても、身につく能力は「豆を速く数えられるスキル」みたいなちょっとしたもの。最近だと、「靴紐がちゃんと結べる」みたいなのになってきた(苦手だったからありがたいけど)。
多分僕の中で「嫌だなぁ」って思う量が減ってきたんだと思う。
一般的には悪いことが起こっても、
「まぁこれでなにか能力身につくし」とか、
「こういうことがもう起こらないように何かできるかもな」
って考えになって、「嫌だなぁ」って気持ちにならない。
最近では「嫌だなぁ」って思うことが本当になくなってしまった。
新しい能力が身につかなくて惜しいけど、ユカちゃんが「君ってほんとに幸せそうだね」って隣で言ってくれてるから、そういう人生も悪くないのかもしれないって思ってる。
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