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野心と謙虚 | 美

論語と算盤。より良い社会のためにという日本経済のオリジンは、日本らしくて、でも普遍的なものだったと思うけれど、この時代、拳の握りっぷりが強いのが是とされているようで。成長、発展、拡張。野心は必須だ。だが、ストロングスタイルを振りかざすより、既知と未知のボーダーラインをわきまえ、それをすこしでも動かしていくという謙虚さが美しいと思うわけで。ひと呼吸、渋沢栄一氏への敬意と自省をこめて、野心と謙虚。本当の成長を考えたら、日本には思い出せばいいものがたくさんある。

002 人間を人間たらしめているものが、美意識だ。

かつてない混迷や世界の動乱を前に、そもそも他の生き物との違いはどこにあるのかと。二足歩行、言葉や火、これらは当たり前として。そのありかは美意識という感覚ではないか。真善美をひっくるめたようなもの。どう生きるかという人間観の輪郭のようなもの。お天道様が見てる。なかなか今は聞かないけれど、そんな言葉を思いだす。映画のフレーズも思い出す。May the sense of beauty be with you.

003 美は、私たち人類が発明したものじゃない。

「愛は、私たち人類が発明したものじゃない love isn’t something that we invented」インターステラーのワンシーンでアンハサウェイ演じるブラント博士がこう語る。このシーンが好きで、繰り返し観ていた。それで美もそうかもと、誰しも持っている美意識は与えられたギフトかもしれないと、このセリフに当てはめてみた。プラトンだって美はこの世を超越したところにあるという言葉をのこしている。美を価値とするビジネスの未来は、人類はどう歩むかという地図とひとつづきかもしれない。

004 美は抽象度が高い。そこにロマンがある。

Mobility companyという事業定義は、社員の夢を自動車の外へと連れ出したにちがいない。タイムトラベルの研究だって進んでいるかもしれないから。ただ、tangibleである。では、Beauty companyというスコープはどうだろう。その領域は漠としていて。戦争を止めることはできないかもしれないが、希望や勇気を人に届け、より良い方角を示すことはできるように思う。宇宙の大部分が未知であるように、美の可能性は際限なく広がっている。美という抽象性。そこにロマンがある。

005 合掌の対象となってきたものは空気感がちがう。

薬師寺東塔の修理を手がけた宮大工の石井浩司さんという方がNHKのドキュメンタリー番組の中で語っていて、思わずメモをとった。一瞬の言葉なのにじんと響いて。tangibleでありvisibleであることを優先する仕事のなかで、自分はそういう感覚をどれほど長いこと後回しにしてきたか。見えないけれど感じる空気。形あるものだけが答えじゃない。叡智とはインストールしたら入手できるようなものじゃない。傲慢では感じることもできない。全身で時間をかけて消化するものなんだ。

(追記)
そこそこ生きてきて、思うもろもろをそろそろ出しても。そんな気分になって、書きためてきたメモを整理したのが、この短文集です。広告クリエイティブに従事し外資系と日本企業で働いて、ちょうど半々になります。お世話になってきたクライアントも外資だったり、ドメスだったり。この20数年は、全く異なるOSを持つ両者の融合がさまざまな次元で進んでいくのを間近で見てきたことになります。その観察は、自分の中で沈殿させてきた思いをすくいながら文化や歴史や国際関係へと広がっていきました。
おそらく自分が興味をもっているのは「何をよりどころにするか」です。さまざまな立場や考え方、パラダイムがある中で「土台に置く基準は何か」という問いです。個人にとっても企業にとっても社会にとっても。専門家の方には一笑かもしれませんが、ライトで役にたつ哲学みたいなものを思い描きました。
まずは自分がいま見据えている「美」という概念から。つづいて、「知」「企業」「AI」など項目ごとにまとめていく予定です。これからの時代を担うクリエイターやストラテジスト、マーケッターの方、ものづくりの真ん中にいらっしゃる製品企画や品質や生産に携わる方、リサーチャーの方々に読んでいただければうれしいなと思います。何かを変えるきっかけを少しでも届けることができればと願いつつ発信していきます。

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