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47歳、 真夏の大冒険

娘の大冒険が止まらない。

高校に入ってから、二重まぶたにするとかで、洗面所には絆創膏の切れ端が大量にストックされた。ある日、そっと寝顔を覗くと、それらをまぶたに貼り付け、エクソシストみたいに白目を剥いて眠っていた。ブランケットをお腹に掛け、そっと扉を閉めた。

二年になるとカラコンを入れ始め、プリクラの写真はほぼほぼ宇宙人になった。いつからだったか、私のスマホの裏面には、浴衣姿でキラキラと微笑む4匹の宇宙人が挟まっている。すでに、侵略されてしまったようだ。

焼き鳥屋でバイトも始め、酒屋さんみたいな紺色のエプロンと、白いハチマキタオルを持って帰るようになった。二階の物干しハンガーで、毎晩異彩を放っている。

そして先日、ついに耳たぶに小さな穴を空けて帰ってきた。
「それ、学校どうするん?」
「大丈夫、ちゃんとあんねん」
翌朝、「トーピ」 という新たな言葉に出会うことを、その時の私は知る由もなかった。

夏休みに向け、今度、髪を赤く染めるらしい。案外似合うかもしれない。楽しみだ。

そんなこんなで、これでもかとJK生活を謳歌している娘。まあ、元気で楽しくやれてるなら、それはそれで良いのだが、そうとも言ってられない事態がとうとうやって来た。

母親なら分かる。毎日顔を合わせる中で、隠し通すのも難しいだろう。時には相談に乗ってほしいこともあるだろう。自宅まで送ってもらうなんてことがあれば、偶然出くわすこともあるだろう。でも、せめて母親まででいいんじゃないの?

「彼氏できた!」

それ父親に言うか! しかも、「二重跳びできた!」みたいなノリで。ううっ……思い出すと泣きそうだ。

想像していたのと違った。全然違った。

私はほぼ土日しか家にいないぞ! 
バレずにやり過ごすこともできなくはないぞ!
そもそも、そんなこと父親には言いたくないんじゃないの!

娘のスマホに着信音が響く。
娘「ちょ、ちょっと二階行くから待って……」
コソコソしながら、逃げるように階段を駆け上がる娘。
父「……」
母「実はね……」
話を聞き、動揺を隠しきれない父。
父「ちょ、ちょっとタバコ買ってくる……」
母「え? まだあるじゃない……あっ」
重い腰を上げ、ゆっくりと玄関の扉を開ける父。
明かりの灯った二階の部屋を、しみじみと眺める。
街灯の光を微かに浴びて、コンビニへ向かうその背中。
夜風が、クスノキを静かに揺らしていた。

みたいな感じだと思ってたのにー!

今さら気付いた。どうやら、スピッツは正しかったようだ。想像した以上に、騒がしい未来が待っていた。

娘の大冒険はまだまだ続くだろう。 いや、続けてもらって構わない。それが大人になるということだ。ただ一つ、言いたくないことは、無理して言わなくていいんだよ。あとは、思うまま自由に生きてくれ。


と、前置きが長くなってしまったが、本題はここからだ。

前回、コントを書いてみた、という内容のテキストを投稿した。思いのほか楽しく書けたため、もう少し書いてみたいという気持ちが芽生えた。どうせ書くなら、創作大賞にも応募したい。そのためには、最低15,000字をクリアしなければならない。1本3,500字として最低5本。タイムリミットは3週間。

最高気温が35℃に達した6月末、次は私の大冒険が始まった。

ネット空間という大海原に地図を広げ、名だたるコント師たちのネタを並べては、パターンを落とし込む。そこに羅針盤を置き、進むべき方角を探る。『さらば青春の光』や『サンドウィッチマン』のように、トリッキーな設定やぶっとんだ登場人物から展開させるスタイルか? 『東京03』や『ダウ90000』のように、日常の延長線上で巻き起こるトラブルや事件から発展させるスタイルか?

羅針盤は指し示す。後者でいこうと決めた。コントとも演劇とも言えるスタイル。ちょっと哀愁も入れたい。やはり、自分が書きたいものを書かねば。

勇者としての風格など微塵もない。これといった武器もない。呪文も使えない。共に闘う仲間もいない。麦わら帽子も持っていない。47歳、たった一人の真夏の大冒険。

いくつになっても、一歩踏み出せば、どこへだって行ける。たとえそこに、綺麗なオチはなくても。

スベってコケて、何度もひざを擦りむいたが、なんとか5話目を書き終え、昨日Talesにアップした。とあるショッピングセンターを舞台に、あらゆる場所で繰り広げられる、日常という名の悲喜劇。


「ただいまー!」

娘がリビングのドアを開ける。髪の色は、想像した以上に赤かった。

第3回灯火杯にエントリーします。
よろしくお願いします。

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