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「明日、心臓を止めます。―ASD×ADHD×ロイス・ディーツ症候群、42歳の記録―」

AuDHD(ASD×ADHDを併せ持つ状態)のくらっくらが、心臓を止める手術の前夜、友人へのメッセージを書いた。「アクセル全開で爆走したい魂」と「いつ破裂するか分からない大動脈」——絶望的なミスマッチを抱えたまま、東大病院の病室から友人に送ったメッセージ

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ご無沙汰しております


——以下、知り合いに送った原文のまま——


お久しぶりでございます。息災でいらっしゃいますでしょうか。

こちらといえば、今のところ元気に過ごしております。

しかし人生という名の迷路には、時に出口と見せかけて「落とし穴」が口を開けて待っていることがあるものですね。


第一の宣告|「AuDHD(ASD×ADHD)」という、なんとも賑やかな診断


先日、己の妙ちくりんな性格や特性について長年の謎を解明すべく、専門医療なる賢者の館へ足を運びました。

「なぜこれほど落ち着きがなく、思考が飛びまわり続けたかと思えば、特定のモノに異様な執着を見せるのか?」と。

そこで判明したのは――

「AuDHD(オーディーエイチディー)、ASD(こだわりが強く出る自閉症スペクトラム)混じりのADHD(多動・注意散漫)」

という、なんとも賑やかな診断結果でした。

いやはや、この特性を理解できておらず、これまで多くの人に迷惑をかけ続けてきました。

今まで御迷惑をおかけしてしまい申し訳ありません。

そして、そんな珍妙な人間に愛想をつかさず御相手してくださり、本当にありがとうございました。

四十路を過ぎてようやく手にした「己の取扱説明書」。

ASDが強く出るときの対処法を知り、ADHDに振り回されるときの受け止め方も、ようやく理解できてきたのであります。

これを知ったとき、晴れやかな気分でこう決意しました。

「よろしい。ならばこれからの人生、自分の興味関心に全力で飛び込み、ハラハラ&ドキドキが止まらない、熱狂に次ぐ熱狂の"薔薇色・心拍数アゲアゲ人生"を爆走してやろうではないか!」

ADHDの特性全開な生き方

まず手始めに、スカイダイビングで雲を突き抜けてみようか。
あるいは、奇跡的にまだ私のことを好きでいてくれている愛娘とモルディブへ飛び、パラセーリングで浮世の風に吹かれてみようか。

(どうやら空を飛びたい性分らしいのです。昔から言いますね。「馬鹿と煙は高いところが好き」と。)

しかし――

そんな血気盛んな妄想は、一瞬にして露と消えました。現実というものは、なかなか非情で、しかも妙に皮肉が効いているものです。


第二の宣告|「ロイス・ディーツ症候群」という必殺技名のような難病

診断から間を置かずして、第二の、より過酷な宣告が下りました。

その宣告に至るまでの経緯が、これまた妙ちくりんでして。

肩の亜脱臼を診てもらった医師が、ぽつりとこう言いました。

「マルファン症候群の可能性があります。」

マルファン症候群とは?

背が高く痩せ型の人に多いとされ、かのアブラハム・リンカーンや米津玄師もそうだと言われている難病で、身体が脆く、将来的には水晶体脱臼を起こす可能性があるとされています。

そして、米津玄師に至っては、私と同じで、ASDも持ち合わせているそうで、ここまで共通点が揃ってきますと、「実は私、米津玄師です」と名乗ったとしても過言ではない気がしてきました!!

そこからは、病院4軒たらい回し小旅行を経て――

ついに辿り着きました。

東京大学医学部附属病院に。

初回の診察で、すぐにマルファン症候群の診断をされたが、先生の勧めにより、遺伝子検査を行うことに。

で、遺伝子検査の結果、(きっと高級接待とは無縁であろう、実にクールな雰囲気の)先生から告げられた類まれな病名がこちら。

ロイス・ディーツ症候群(Loeys-Dietz syndrome)

ヒーロー映画で大声で叫ぶ必殺技のような風体をしておりますが、希少な指定難病であります。

特性として、マルファン症候群と同じく身体が脆く、関節が外れやすい。そして心臓に血液を運ぶ中枢である大動脈が(マルファン症候群より早く)破れてしまう病気でした。

大動脈が限界を超えると――大動脈解離が起こるそうです。
大動脈解離が起きるとどうなるか。
超わかりやすくお伝えすると、ほぼ即死とのこと(悲)。

しかし幸いなことに、ロイス・ディーツ症候群はマルファン症候群と似てはいるものの、少し症状が違い、水晶体偏位(レンズのずれ)は起こらないとされています。

よかった!!

目があれば、生きがいである映画鑑賞は続けられます(うれしい!)。

とはいえ、米津玄師を名乗るのはやはり無理がありそうです。

そして、脳みその中から歌が流れ始めました。

駄目 駄目 駄目 ♪

2025年に席巻したあの曲


「そうか、駄目か!」

さすがにそれは図々しすぎると理解できたので、胸の奥にそっとしまっておくことにしました。
(話の流れがうまくできている気がしてたまりません♬)


それにしても、どうりで40歳あたりから全身麻酔が必要な手術を毎年のように受ける羽目になっていたのか、やっと理解ができました。

人体というものは、何億もの細胞やミクロの戦士たちが日々懸命に働いてくれている奇跡の集合体なのだと、大いに感動しました。
とりあえず、五体満足に生んでくれた親に感謝!!

しかし――

その感動の直後に、致命的な困りごとが露呈されました。


絶望的なミスマッチ

私のADHDなる魂は、まるで岡本太郎のように叫びます。

「心拍数をアゲろ!熱狂こそ人生だ!」

しかしロイス・ディーツなる血管は、静かに、しかし確実に脅してくるのです。

「血圧や心拍数が上がれば、心臓が爆発するぞ」と。

「アクセル全開で爆走したい魂」と「いつ破裂するか分からない紙風船のような肉体」。

この絶望的なミスマッチ!!

人生は色々都合の悪いことばかり起こりますね。

ですが――

「生きてるだけで丸儲け」だと思うので、私の考えた名言を世に残そうと思います。
とりあえず、国民的お笑いスターを目指そうかしら。


第三の宣告|明日、心臓が止まります

現在、東京大学医学部附属病院にて入院中であります。

昨日は90分にわたり、「手術の全貌と、それに伴う万が一の悲惨なリスク」について、懇切丁寧な説明を受けました。

デービッド手術(自己弁温存大動脈基部人工血管置換術)

1980年代に考案されたこの術式は、胸を開き、肋骨を切り裂き、膨らんだ大動脈基部を人工血管で置き換えながら、自分自身の弁を残すというものであります。

術中にほんの一粒の埃が血管に混じろうものなら、脳性麻痺や言語障害をはじめ、歩くことも喋ることも難しくなる可能性があるとのこと。

……正直なところ、90分の説明中、部屋の時計や機械音が気になってしまい、話に集中するどころではありませんでした。しかも眠くて眠くて。

己の命がかかっているというのに、この注意散漫ぶりには我ながら驚くばかりです。

で、何だかんだありまして――

2026年3月9日(月)、心臓を数時間ばかり停止させ、大動脈を補強してまいります。

術後数日は、合計11本の管を身体に埋め込まれ、ICUにて隔離となるそうです。

本心を申し上げれば、術後、管だらけで瀕死の体となった姿を「おやおや、実に憐れな姿だねぇ」と、たっぷりのお情けで見舞いに来ていただきたいところです。3月12日(木)にはICUを出られそうですので……などとは、さすがに口が裂けても言えません。

もしも!貴君に仏様のような慈悲の心がありましたなら、その醜態を拝みに来ていただいてもかまいません。

ちなみに差し入れはPayPayのみ受け付けておりま――

冗談です。

因みに、カロリー制限で飲食物はNGとのこと。。。


明日以降も生きていれば

3月は入院、4月からは数ヶ月リハビリをしながら、川崎の自宅で「借りてきた猫」よりも大人しく療養する予定です。

そして、ここからが真の本題となります。

多分、一生に一度きりのお願いとなります。


一生に一度きりのお願い

これまで、このような珍妙な男にかまってくださったこと、深く感謝しております。

もし無事に「人生のコンティニュー」に成功しましたなら、9歳になった娘を連れて、お世話になった方々を訪ね歩きたいと考えています。

私という男がいかにユニークな行動を繰り返し、いかに貴君に迷惑の雨を降らせてきたのか。
身体のリハビリがてら、娘と指定していただいた場所に出向きますので、その輝かしい被害体験を、ぜひ娘に聞かせてやっていただけませんでしょうか。

父がどんな人に支えられ、迷惑をかけてきたのか、娘に伝えてほしいのです。

もちろん「そんな義理はない」と思われましたら、このまま記憶の彼方へ葬っていただいても構いません。

ですがもし「致し方ない、娘さんの顔を立てて、最後にもう一度だけ付き合ってやろう」と思っていただけましたなら、返信をいただけますと泣いて喜び、病室を涙で水没させる所存です。

ちなみに同室の方はカナヅチだそうです。
とかく西へ行きましても東へ行きましても、土地土地のお兄さんお姐さん、さらには同室の方にまでごやっかいをかけがちな若造であります…。


来週もこの世の空気を吸っておりましたら、また馬鹿話をさせてください。

ここまで読んでくださっていたなら、本当に感謝しかありません。

では、

ごきげんよう。でございました♪


東大病院の談話室より



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