小さな星
夜空を見上げてみたら、その澄んだ青黒い美しさに首を下せなくなってしまった。
夜目が利いてくると次から次へと星々がみえてきて、地球が宇宙に存在する限りない星たちの内のひとつなことを思い出した。
たまたま前日に読んでいた漫画で、主人公が旅路の途中で一息つくように草原に座って夜空を眺めていた。
彼の歩んできた長い長い道のりを知る読者は、その表情にいろいろな意味を読み取るのだろう。
そんなことを考えていると、自分のことを物語の主役に捉えているようで、少しはずかしくなった。
そういえば、3時間ほど前に夕ごはんの準備をしていた時、雨が降っていた。
「土砂降りだよ」と、コンロの音で気づかない私に、テレビを観ている恋人が知らせてくれたのだった。
「もっと早く降る予報だったのにね」と返したあと、どんな会話が続いたかは覚えていない。
けれど、その一連の流れを思い出すと、これが生活なのかなと思った。
吹く風はつめたく、長袖一枚の格好を咎めてくる。
雲を流していったこの犯人は、季節や時間の移ろいといった、私たちが同じことを繰り返しているようでその実じっくりと未来に向かっていることを、時たま気づかせる。
そうしたことを思う時、途方もない人知を超えた何かを求めて、また空を見上げたくなる。
もう少し暑い季節になったら、これくらいの時間に散歩でもしましょう。
次に恋人を見送る時に言おうと思って、翌日に私は予定通りにそれを伝えた。
コンビニに、アイスでも買いに行きましょう。
やさしく光る星を追って、果てしない夜を共に。
