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第2章 魔法王国フォーレスト 第17節 王女の部屋

案内されたのは、城の奥まった一室だった。

石壁に淡い魔導紋が刻まれている。

飾りは少ない。灯りも必要な分だけ。

豪奢ではない。だが、無駄もない。

扉が閉まる。

回廊の気配が、わずかに遠のいた。

「座って」

短い声。

クレフは窓辺に立ち、

セリザは静かに椅子へ腰を下ろした。

しばらく、誰も話さない。

城は動いているはずだ。

だが、この部屋には音が届かない。

「怒らないのか」

クレフが言った。

クリスは机に手を置いたまま答える。

「怒っても順番は変わらないわ」

視線は扉の方へ向いたまま。

「母上が優先した。それだけ」

それは感情ではなく、構造だった。

セリザが問う。

「ゾマーの使者、ですね」

クリスは頷く。

「ええ。“非公式”でね」

軽く言うが、目は静かだ。

「廊下で兵が騒いでいたわ。口外厳禁だって」

クレフが言う。

「盗み聞きか」

クリスは眉を上げる。

「人聞きの悪いわね。聞こえただけよ」

肩をすくめる。

「来ることも、母上が応じることも知ってる。でも――」

一拍。

「中身までは知らない」

沈黙。

扉は閉ざされたままだ。

セリザが静かに言う。

「優先した、ということは――軽い話ではない」

クリスは否定しない。

「ええ」

指先が机の縁を、一定の間隔で叩く。

小さな音。

そのリズムだけが、部屋に残る。

「順番が来るまでは、私達は外」

クレフは扉を見る。

近い。

だが、届かない。

フォーレストは閉じていない。

ただ、開く順を違えない。

「……待つしかないな」

クリスは小さく笑う。

「そうね」

だが、その目は笑っていない。

「順番が来るのを、いい子にして?」

一瞬だけ、空気が揺れる。

クリスは机から手を離した。

そして、ゆっくり立ち上がる。

「――でも」

視線が、扉ではなく窓へ向く。

「待つだけっていうのは、性に合わないのよね」

沈黙。

セリザの視線が上がる。

クレフは何も言わない。

ただ、クリスの次の言葉を待った。

城の奥では、まだ話し合いが続いている。

そして、この部屋でも――

何かが動き始めようとしていた。

――第18節へ続く。

※王女は、ただ待つだけだと思いますか?

続きが気になったら、スキで教えていただけると嬉しいです。

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