異世界の景色が見える散歩
散歩も気分転換になるので、うつ病の改善には効果的と言われています。
私も散歩で癒やされ、お陰様で、体調が改善されました。
私は、母が倒れる前から散歩が趣味でした。
母が元気であった頃の散歩時間は、1時間程度。
好きなラジオ番組を聴きながら散歩をするのがいい気分転換になっていたので、愛聴するラジオ番組の放送時間に合わせて散歩にでかけていました。
散歩とラジオ番組の相性がいいのは、ラジオを聴くのに集中できるからです。
家でラジオ番組を聞くと、仕事をしながら聴こうとする欲張った考えが働くので、ただ聞き流すだけに終わり、十分に楽しむことができませんでした。
一人で散歩をすることも、ストレス解消になっていました。
その日の気分で、いくつかある好きなコースを自由に選べ、気ままに、途中で違う道を歩いてみることもできるからです。
たまに途中のスーパーで安いパンと飲み物を買って、公園のベンチなどで飲食するのも、ささやかな喜びになっていました。
うつ病には朝散歩がいいと言われますが、夏場に行う早朝ウオーキングはとくに気分が良かったです。
夏場の朝散歩は、だいたい4時30分~5時30分に行っていました。
そんなに早い時間にやるのは、真夏で快適に散歩ができるのは、早朝ぐらいだからです。
またその時間帯は、車も人も数が少なく、安全です。
空気が澄んでいて、朝日もきれいで、最高の気分になれました。
しかし母が入院すると、一人で散歩ができなくなりました。
認知症の父を家に一人残して散歩をするわけにはいかないからです。
そういう事情から、母が入院してからの散歩は、父の散歩につきあうスタイルになりました。
父の散歩は、15分程度。近所をゆっくり回る程度の散歩なので、少し物足りないですが、それでも癒しになりました。
癒しになったのは、休憩を兼ねて立ち寄る近所の公園で、子供たちが無邪気に遊んでいるのを見て、辛さを少し忘れることができたからです。
といっても、初めからそういう気持ちになれたわけではありません。
母の余命を聞いて気持ちが一番沈んでいた頃は、散歩をして近所の家々を見ると、どの家庭も幸せそうに見え、我が家だけが不幸であるような疎外感を感じてしまいました。
ところが半月ぐらいたつと、気持ちに変化が起こったのです。
深い悲しみを抱えていることで、風景が平常時と違って見え、うまく表現ができないのですが、異世界にいるような感じになったのです。
異世界とは、この世とあの世の中間の世界といったらいいでしょうか。
母の死を近くに感じているせいでしょう。見るものすべてが、神聖な雰囲気に包まれていて、宗教の雑誌に出てくる絵のような感じであったからです。
その風景を最初は怖く感じましたが、そのうち、この雰囲気はわりと好きかもと思うようになりました。
この特殊な感覚も、日常生活が奪われ、非日常的な世界のなかにいる今しか体験できないでしょう。
それなら、この不思議な風景を存分に味わっておこう。そう思えたことで、父との散歩は楽しみに変わり、うつ病改善に役立つ治療薬になったのではないかと思います。
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