カメレオンに「何のために生きるか」訊いてみたら
「動物には死の概念がないから、死への恐怖もなくて羨ましい」と言う人がいます。
しかし、本当にそうなのでしょうか。
もし死の恐ろしさを意識していないのであれば、そもそも天敵を恐れる必要はないはずです。
天敵を恐れるという行為の本質は、襲われれば命を失う危険があると理解していることに他なりません。
そこには、根源的な「死への恐怖」が存在しているはずです。

その証拠に、あらゆる動物が天敵から身を守るために知恵を絞り、身体を進化させてきました。
例えばカメレオンは、天敵の少ない樹上を生活圏に選び、周囲の環境に合わせた擬態や体色の変化、あるいは威嚇といった手段を駆使して生存を図っています。
カメレオンのなかに、孵化してからわずか半年しか生きられない種類がいるのをご存知でしょうか。
それは「ラボードカメレオン」です。
ラボードカメレオンは、陸上脊椎動物のなかで最も短命と言われています。
この生き物を知ったのは、NHK総合の自然番組『ダーウィンが来た!』『ダーウィンが来た!』でした。
ラボードカメレオンはアフリカのマダガスカル島に生息しており、マダガスカルは90種以上のカメレオンが暮らす「カメレオン王国」でもあります。
ラボードカメレオンを見ると、すべての生物がなんのために生きているのかがわかる気がします。
で、なんのために生きているかと言うと、自分たちの種を絶滅させないためです。
そう考えた理由を説明しましょう。
ラボードカメレオンが短命である大きな理由のひとつに、マダガスカルの気候が挙げられます。
マダガスカルの気候は、年間を通して乾季(4月~10月)と雨季(11月~3月)に分かれます。
ラボードカメレオンが生きていられるのは、主に雨季の期間だけ。そのため、実質半年ほどしか生きられないのです。
なぜ乾季に生きられないのかというと、この時期は降水量が少なく、多くの植物が水分の蒸散を減らすために葉を落とすため、カメレオンの餌が全くなくなってしまうからです。
ラボードカメレオンが他のカメレオンと異なる点は、この乾季の乗り切り方です。
他のカメレオンは、クマが冬眠で餌のない冬を乗り切るように、乾季の過酷な時期を夏眠して過ごします。

それに対しラボードカメレオンは、夏眠をする代わりに、雨季が終わると死んでしまう(半年しか生きられない体の構造になっている)ため、湿った場所に深く穴を掘って卵を産み、種を存続させます。

この生存戦略において、ラボードカメレオンは他のカメレオンより賢いと言えます。
なぜなら、夏眠は失敗するリスクが高いからです。
たとえば、乾季が予想より長引けばエネルギーが持ちませんし、夏眠中に天敵に襲われるリスクもあるからです。
しかしラボードカメレオンが選んだ戦略には、克服しなければならない大きな問題があります。
半年しか生きられないとなると、オスもメスも、子供を産める大人に急いで成長しなければならないという問題です。
ラボードカメレオンはどれくらいの期間で大人になれるかというと、わずか3か月。
ラボードカメレオンが速く大人になれる秘密は、卵からかえった直後から爆食いすることにあります。

他の動物と違い、ラボードカメレオンの赤ちゃんには、餌を運んでくれたり、獲物のとり方を教えてくれたりする親がいないのですから、すぐに自立して生きられるのはすごいことです。
大人になると、子孫を残すために、オスもメスも必死です。
何しろ、3か月後には死んでしまうため、繁殖期は短く、しかも一生に一度きりだからです。
オスは、メスの奪い合いのために体がボロボロになるほど激しく闘い、メスは確実に強い子孫を残せるよう、健康で生命力の強いオスを厳しく選びます。
メスは、相応しくないオスから言い寄られても、体の色を黒く変化させて強い拒絶反応を示し、それでも近づくオスにはかみついて追い払います。

繁殖期が終わると、まるで役目を終えたかのように、オスから順に死んでいきます。
一方メスには、卵を安全な場所に産むという使命があります。
そのためにメスは、餌をたくさん食べて卵に栄養を送り、産卵期になると地上に降ります。
そして、卵を産むのに最適な場所に、自分の体長の三倍もある深い穴を短時間で掘り、そこに卵を産み落とします。
メスはすべてを使い切ったかのように、木の上に戻った後、数日後に命を終えます。
まるで子孫を残すためだけに生きているようです。
短い命だからこそ、生きる目的が単純化されるのです。
この短い命すらも、過酷な環境で種を存続させるための戦略であるならば、生物にとって最も重要な使命は「命をつないでいくこと」にあると言えます。

そして、こうした戦略を可能にするのも、生物が自らの限界(死)を本能的に認識しているからこそでしょう。
残念ながら私は60歳に近い独身であり、子孫を残すことはできません。
その代わりに、未来のために、環境問題や格差、政治問題などの解決策を「ユートピア手法」を用いて提案したいと考えています。

この仕事にやりがいを感じるのは、それこそが、私の命のつなぎ方であると受け止めているからです。
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