悩むのは、本気だからだ。
「メンタルが強いですね。」
アスリートをしていると、そんな言葉をかけていただくことがあります。
もちろん嬉しい言葉です。
でも、その度に少しだけ違和感を覚える自分がいます。
僕は決してメンタルが強い人間ではありません。
今でも大事な試合の前は緊張します。
久しぶりの試合や、絶対に負けられない試合では自然とプレッシャーも感じます。
ただ、試合が始まればその瞬間にできることをやるしかありません。
だからこそ、僕が大切にしているのは試合当日ではなく、それまでの準備です。
どれだけ準備ができたか。
どんな気持ちで当日を迎えられるか。
そこは自分でコントロールできる部分だと思っています。
でも、そんな考え方ができるようになったのはたくさん悩んできたからだと思っています。
僕が一番メンタル的に苦しかったのは、大学4年生の一年間でした。
キャプテンという立場で迎えた最後のシーズン。
春先に怪我をしてしまい、思うようにチームへコミットできませんでした。
焦る気持ちから予定より早く復帰しましたが、痛みは残りパフォーマンスも上がらない。
キャプテンとしてチームを引っ張りたい。
でもプレーヤーとして結果も出せない。
自分がどうチームを引っ張ればいいのかも分からなくなっていました。
プレーヤーとしての自分にも、キャプテンとしての自分にも、まったく自信が持てませんでした。
結果も思うようにはついてこず、あの一年間は心も身体も本当に苦しい一年でした。
でも、それより前にも忘れられない経験があります。
高校2年生の頃です。
当時、僕はスタンドオフをしていました。
桐蔭学園のスタンドは、スキルだけではなく、ラグビーへの理解や判断力まで徹底的に求められるポジションです。
それまでフィジカルや感覚でプレーすることが多かった僕にとって、その時は本当に苦しいものでした。
毎日のように壁にぶつかる。
ミスをすれば周りの反応が怖い。
「どうして自分だけできないんだろう。」
そんなことばかり考えていました。
正直、毎日逃げたいと思ってました。
結局チームも9年ぶりに県予選を突破することができず、自分の中では何もかもがうまくいかない一年でした。
今振り返れば、プロになる前から何度も自信を失ってきたんだなと思います。
だから、「プロアスリートだからメンタルが強い」というわけではありません。
不安にもなります。
自信もなくします。
逃げたくなることだってあります。
それでも、少しずつ前へ進めるようになったのは、あの頃の経験があったからです。
当時は乗り越えられたなんて思えませんでした。
でも振り返ると、その経験が今の自分を支えてくれています。
悩んだ経験があるから、人の気持ちを想像できる。
苦しかった経験があるから、踏ん張れる。
失敗した経験があるから、準備の大切さを知っている。
だから今、僕は思います。
メンタルが強い人とは、不安がない人ではない。
何が起きても冷静に受け止め、その状況に合わせて前へ進める人なのだと思います。
そして、もし昔の自分に声をかけられるならこう伝えたいです。
「悩むのは、本気だからだ。」
本気で向き合っているからこそ、苦しい。
本気で勝ちたいからこそ、不安になる。
本気で良くしたいと考えるから、悩む。
だから、悩む自分を責めなくていい。
その経験は、必ずこの先の自分を支えてくれる。
そしてもう一つ伝えたいことがあります。
悩んだ時は、一人で抱え込まないでほしい。
家族でも、仲間でも、友人でもいい。
誰かに話すだけで、心は少し軽くなります。
僕も一人ではここまで来られませんでした。
だから今、悩んでいる人に伝えたい。
悩むことは、弱さではない。
本気で生きている証だ。
その悩みは、きっといつか自分だけの武器になる。と僕は信じています。
