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応募者の履歴書が届かない件(完結)

朝5時に起床して、いつも通りの血圧測定。

・・・おやっ?

最近薬を飲み始めてからは安定してたのに、
今朝はけっこう高いじゃないか。

やっぱり、ストレスに感じてるのだろうか?
そう、今日は例の『履歴書が届かない子』の、
採用面接の日だ・・・

【履歴書が届かず】

【とにかく、届かず】

【やっと来て、ようやく面接】

ひょっとしたら、来ないんじゃないか?
そうも思ってたこの子は、
決まった時間にやって来た。
でも、視線が泳いでる。
第一印象としては、
メールでやり取りしてたイメージ通り。

『会ってみたら、奇跡の人材』

その可能性も消えたようだ。

始まった面接。
大学出てからの職歴がないこの子。
とりあえず、何をしてたか聞いてみる。

「アルバイトとかしてたんですか?」

『いえ、何も・・・』

「大学出てから、結構たってますけど。
 その間はどうされてました?」

『色んな会社に応募してました。
 でも、どこにも受からなくて』

就職活動の間にバイトくらいできるだろう。
そう思いながらも、質問を続ける。

「履歴書お願いしてた時、
 『体調が悪い』って言われてたけど。
 もう大丈夫なんですか?」

『持病の頭痛がひどかったんですけど。
 今は大丈夫です・・・』

職歴がないので、質問のネタもすぐ尽きた。
面接が始まって10分もたっていないのに、
場はすでに嫌な沈黙になりかけていて、
上の人達がこの子に興味がないことは、
ヒシヒシと伝わってくる。

ここで面接を打ち切っても、
上の人達も止めないだろう。
『採用』の線は、はっきり言って既にない。

だけどもう1つ、聞いておきたくなった。

「では、もし『採用』になったら、
 いつから仕事に入れますか?」

『えーと、その時は・・・
 7月くらいになると思います』

(・・・なんで、そうなるのかなぁ)

「7月だと、まだ1ヶ月以上あるけど。
 そんなに間があくのは、何かあるんですか?」

『あ、はい。採用していただいた際には、
 やっぱり万全の状態で挑みたいですし、
 心の準備の時間も欲しいので・・・』

「・・・分かりました。
 では、今日の面接はこのへんで。
 合否の方は、後ほど連絡しますので」

     ・
     ・
     ・

『結果は後ほど』
そう言ったものの、結果はもちろん不採用。
応募から1ヶ月以上かかったこの案件も、
これでようやく終了だ。

今までに書いてきた通り、
はっきり言って、彼にはイライラしました。
履歴書が、3週間以上来ないのも。
いちいち、先延ばしにしようとするのも。
何だか不自然なメールの文章も、
その都度、勘弁してくれと思いました。

ただいつも、こういう子を見た時に、
『でもなぁ』って思うんです。
昔の自分と、かぶるんですよね。

自分も学校卒業後、採用試験落ちまくったし。
何もしてない失業期間があったし。
まともな会話にならなかった面接だって、
数えきれないほどありました。

『採用する方の立場になったからって、
 お前なんぞが、何を偉そうに』

心の中で、そうツッコんでくる自分がいるんです。

だから、最後の質問。

『いつから仕事に入れますか?』

アレはこの子への、最後のチャンスのつもりでした。

この子はきっと、今まで何もしていない。
バイトであれ何であれ、やろうと思えば、
何もできないなんてことはない。

やってないから、自信がない。
自信がないから、先延ばしにしたくなる。
『心の準備』なんて、どれだけ時間をかけたって、
不安が大きくなるだけなのに。

『明日からでも来れます!』
『雇ってもらえるなら、何でもします!』

その言葉さえ出てくれば、
ぶっちゃけウチの会社なら、
ワンチャン採用はあったのだ。

こういう子って、
できることが増えてきて自信がつけば、
雇ってくれた会社に恩を感じて、
長く真面目に働いてくれたりするって、
自分は思うんですけどね。

そのスタート地点に、
できれば早くついて欲しい。
だけど、この子はもう『不採用』だ。

『・・・今後も〇〇様のご活躍を、
 心よりお祈り申し上げます。』

定型文で作る『不採用』のメールは簡単だ。
テンプレートを呼び出せば、文字通り、秒で終わる。
でも、この無機質な文面に
『まずは、何でもいいからやってみよう』と、
お節介な私見を書き添えてみようか。
そう思うと、マウスを握る手が止まった。

いや、会社のメールアドレスでやることじゃないか。
思い直して、定型文のまま送信した。

それからわずか、数分後。
返信のメールが届いた。

「えっ、もう返信きたの?
 ヤバイ、なんか恨み言とかじゃないよな」

少しビビってから見たメールは、
今日の面接へのお礼文でした。

『面接の時間をいただきありがとうございました。
 御社の業務内容を聞かせていただき、
 ますます御社で働きたくなりました。
 本日は誠にありがとうございました』

業務内容の話なんて、してないぞ。
そう思いながら、静かにメールを閉じました。

こっちの不採用メールと、
すれ違いになったんだろうな。
今頃、不採用メールを読んでるはずだ。
どう思っているんだろう。
残念は、残念なんだろうか?

この後、不採用に対する返信は来ませんでした。
今度こそ、この子とはこれっきりだろう。

すれ違いできたお礼文を見ていると、
面接終わった後、見送った時に、

あそこは『明日からでも働けます!』
そう言わないと、何も始まらないよ。

そう、言ってあげても良かったかなって、
今ではちょっと、後悔しています。

【応募者の履歴書が届かない件】 完

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くりす 日々の色々を面白おかしく書く事で、日常を楽しく色付けできればと思ってます。書く事はもとより好きなので「毎日更新」頑張ります。よろしければ応援お願いします!